都市計画道路泉州山手線沿線開発――「せんごくの杜」を事例として

貝塚市都市政策部

1.せんごくの杜開発の概要

せんごくの杜と称している地区は、JR阪和線の和泉橋本駅の東方、1.5kmに位置しています。関西国際空港から、クルマで30分の好立地で、標高約50mの内陸丘陵部に位置し、地震による津波の心配もない地区です。

かつて、国立千石荘病院等の施設があった地区(約48ha)で、1939年に傷痍軍人の大阪療養所として開設したところ、1940年、大阪市の結核療養所として開設したところなどがあり、それらが、国立療養所になりました(図-1位置図)。


図1 位置図

図2 地区計画図
 
 大阪市がすべての土地を所有していましたが、2011年に貝塚市が大阪市から購入しました。

2013年、利活用構想を策定し、4つのゾーンをそれぞれの特色を活かして活用することとしました。さらに、2016年に地区計画を都市計画決定し、4つのエリアの土地利用方針を定めました(図-2地区計画図)。


写真-1施設遠景

写真-3ドローンによる現場上空からの写真


写真-3-2ドローン飛行状況

18haに及ぶ広大な里山保全エリアを抱いた地区のため、開発手法は、土地区画整理を選ばず、各エリア毎に市街化調整区域の地区計画により開発することとしました。

2016年、就労支援施設として、レストラン森の小径、ハーモニーファーム野のはな(乗馬施設)が最初にオープン(写真-1施設遠景)。

2017年、清風明育社と専門職大学設立に関する覚書締結(写真-2イメージパース)。


写真2 イメージパース
2017年、自衛隊の部外工事により、防災広場(後方支援基地)が整備され、2018年、防災広場の平時利用として、ドローンフィールドがオープン。さらに、芝生化して、クリケットフィールドをオープン(写真-3ドローンによる現場上空からの写真)。

1.産業・流通エリアへの企業誘致

 2014年から、企業誘致の準備を始めました。しかし、当地区の幹線道路が、大阪府道和泉橋本停車場線(2車線、幅員約11m)だけで、都市計画道路泉州山手線の計画はありましたが、投資効果が低いため、計画が凍結されていました。

せんごくの杜開発を成功させるためには、泉州山手線の整備が必須と考え、沿線市町(3市1町)と、泉州山手線の事業化について検討を始めることになりました。翌年2015年からは、整備促進協議会が設立され、大阪府と実務的な協議も始まりました。

そのころ2016年に、銀行の企業誘致部隊の協力を得て、企業誘致の現地視察会を実施しました。津波の影響を受けない「内陸丘陵部の用地」を求める企業ニーズには合致しますが、幹線道路が必須条件であることを思い知らされることになります。

参加企業(20社)に話を聞いたところ、その大部分が、幹線道路の整備を条件としていました。

2.泉州山手線の事業化の決定

 2017年、泉州山手線の事業化の前提として、コンパクト化した都市計画への変更を実施するとともに、大阪府とは、海側を並行して走る都市計画道路の廃止や沿道開発の約束をしました(図-3泉州山手線都市計画図)。

合わせて、貝塚市は、泉州山手線の事業がスムーズに進むよう、沿線の地籍調査を事前に実施することになりました(図-4地積踏査図)。


図-3泉州山手線都市計画図

図-4地積踏査図

3.道路整備と沿道開発は切っても切れない関係

 2018年、いよいよ秋に、企業誘致の公募をすることになり、準備が始まりました。一方、泉州山手線は、2工区で事業評価されることになり、公募時に、泉州山手線(貝塚工区)の事業決定が、企業誘致成功の条件となります。


写真4 イメージパース
結果、企業誘致には3グループの応募があり、審査により、薬品、日用品の物流企業が、最優秀者として選ばれ、9haを1社で利用することになりました(写真-4イメージパース)。
 
契約金額23億5千万円。都市基盤整備に15億円。建物に100億円。設備に100億円。操業後の税収は2億7千万円/年。雇用400名(企画提案書による)と抜群の経済効果をもたらします。
 地区計画の詳細計画と開発許可に1年。都市基盤施設の整備に1年半。建築工事に1年半を費やし、2023年操業予定です。
 一方、泉州山手線は、本年度2021年から用地買収に入り、できる限り早期に暫定供用されることが期待されています。
 さらに、貝塚市では、本開発の隣接地となる和泉橋本地区の土地区画整理事業の準備を本年度から始めることになりました。
 
4.あとがき
 本稿は、幹線道路整備(泉州山手線)と沿道開発(せんごくの杜)が、関係者の尽力により、見事にタイミングを合わせることができ、事業をスムーズに進めることができ、経済効果が発揮できた事例を報告しました。 幹線道路の整備は、その沿道開発により、血管に血液が流れ、栄養分が身体中に運ばれ、身体の元気になるように、道路整備効果が表れます。当面、泉州山手線の貝塚工区の整備が進められますが、今回の整備区間約9.5km(磯之上山直線(岸和田市)~大阪外環状線(熊取町))が整備されて始めて、ネットワークが完成し、フルに効果が発揮されることになります。今後とも沿道開発とタイミングを合わして、円滑に整備されることを期待しています。 


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