日時・場所 |
平成19年9月22日(土)PM1:00〜 滋賀県 近江八幡市 八幡堀界隈(伝建地区) |
参加者 |
石塚、伊藤、今中、大戸、小川、鎌田、小山、戸松、仲西、友田、松島、吉谷、茂福(計13名) |
テーマ |
まちなみの保全形成(維持、改善)と景観法の活用について |
視察場所
(話題提供者) |
近江八幡市 八幡堀界隈(伝建地区)
近江八幡市都市産業部都市整備課風景づくりリーダー 深尾甚一郎様
八千代エンジニヤリング大阪支店社会計画部技術第1課 石塚裕子様 |
記録者 |
茂福隆幸(寝屋川市) |
説明内容 |
@ 地区の概要
◇ 近江八幡市
- 滋賀県の中央部、琵琶湖の東岸の湖東平野に位置
- 面積76.97u 人口6万9千人
- 特産物
- 水郷地帯に群生するヨシを利用したヨシ産業
- 琵琶湖の粘土を利用した八幡瓦、近江米、近江牛
- 約40年前から風景への取組を始め、本物へのこだわりが受け入れられ、現在では約300万人の観光客が訪れる。
- 八幡堀は代表的な観光名所で、年間30本以上の時代劇のロケが行われている。
A 歴史、風土
◇ 近江八幡市
- 大化の改新後、条里制の施行により各地に郷ができる。
- 豊臣秀吉の甥の秀次が八幡山城を築き、城下町を建設
- 昭和29年 近江八幡市市制施行
◇ 八幡堀界隈(伝建地区)
- 秀次が八幡堀を運河として利用し、琵琶湖を往来する荷船をすべて八幡の町に寄港させた。
- 楽市楽座を取り入れ、商人の町として栄える。
B まちの特徴
◇ 近江八幡市の風景づくり(40年前から始まる)
- S44 高度成長期後にどぶ川のようになり埋め立ての計画 ⇒陳情
- S47 八幡堀復元署名 コンセプト 「伝統文化の継承」「景観」
- S48 八幡堀埋め立て始まる ・ S50 自治会などのブランティアによる堀の清掃作業
- S50 堀の全面浚渫決定 ・ S57 国土庁「水緑都市モデル事業」に採択
- S60 1期工事完成
◇ 現在の風景づくり施策、事業
- H15 景観条例の策定に着手(文化政策課)
景観にかんするアンケート ⇒91%が景観規制を望む
- H16 市重要政策として文化政策を位置付け 景観法制定
- H17 風景作り推進室の設置 市、風景づくり条例制定(6箇所の風景ゾーン)
「水郷風景計画」策定⇒景観法に基づく景観計画全国第1号
「近江八幡の水郷」 ⇒文化財保護法に基づく重要文化的景観全国第1号
- H18 「水郷地区景観農振計画」 ⇒景観法に基づく景観農業振興地域整備計画全国第1号
- H19 「伝統的風景計画」の策定
◇ これからの展開
- 市域全域への風景計画の策定
- 屋外広告物規制の事務移譲(県から市)
- 重要文化的景観の新たな指定
- 都市計画と風景の調整(高度地区、用途地域、都計道路の変更)
- 協力金制度の整備 ⇒ヨシ群集の維持管理、水質保全等
◇ ウィリアム・メレル・ヴォーリズ
- 布教家、事業家、建築家、英語の教師でもあり、メンソレータムを日本に輸入した人物。「近江八幡は世界の中心」との思いでこの町を愛した。
- ヴォーリズが設計したのが明治時代の洋風建築であるヴォーリズ建築で、全国で約1600に及ぶ。
- 近江八幡市にもまちの所々に見られ、旧八幡郵便局や池田町洋風住宅街などがある。
◇ 近江商人
- 近江商人発祥の一つで八幡商人と呼ばれ、歴史は一番古い。
- 近江八幡を拠点(本店)とし、日本全国各地から現在のベトナムやタイなど海外でも活躍した。
- 兼業を行わず商売だけを行い、信用を第一と考え、地域貢献に心がけた。
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商人達が住んだ地域は、格子戸や見越しの松、うだつなどが並び「重要伝統的建築物群保存地区」として町並みが保存されており、国の重要文化財「旧西川家住宅」「旧伴家住宅」がある。
◇ 沖島
- 琵琶湖に浮かぶ最大の島で約150世帯が住んでいる。
- 源氏の落人が住んだと言われ、大半は漁業を営んでいる。
- 小学校、郵便局、寺、神社、民宿(1件)があり、住民は素朴で暖かい生活をおくっている。
C まちづくりの活動(コミュニティ)
- S50 よみがえる八幡の会発足
- S51 水郷地帯の保全運動 ⇒葦の保全
- S51 町並み保全(商家の町並み)運動、調査始まる
- S60 八幡堀を守る会発足
- 近隣景観形成協定地区(県風景条例に基づく)が市内で16地区締結
- 学校で景観の取組の勉強を行っている。 ・ マスコミの発信により、全国レベルになった。
D キーパーソン
- 前の市長(任期は2期) 文化の時代であり、業務に関してすべて文化の視点から考えた。
景観は伝統文化の継承であるとの考えから事業を推奨した。
E 官民との係り
- 市民のほうが意識が高い。
- 市は個人に対しハード面での補助はない。
- 修理等は行政が主体となって行う。
F その他
◇風景づくりの考え方
- 八幡商人の精神風土(文化) に学ぶ
- 八幡川は八幡のシンボルであり、 400年の歴史的な生きた教科書
- 伝統文化の継承
- 観光を目標とせず、地域文化 の承継により本物を残す。 ⇒ 住み心地をよくする。
- 偽物は長持ちしない。
- 観光地ではないので、みやげ物が少ない。⇒呼び込みがない。
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問題 ・課題 |
- 景観形成における強制力がない。(合意形成の努力不足)
- 既存の商店街の賑わいのある形をどのように作り上げていくか。
- 前市長の英断によるものが大きいので、代替わり等による考え方の継承
- 外部から来た人との共存 ・伝統的産業(ヨシ産業、瓦産業)の伝承と人材育成 ・次世代に引き継いでいくための工夫
- 掘りの水質改善
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提言 |
- 歴史に応じた名盤等を設けてはどうか。
- 風景(景観)の維持だけでなく、今後参入してくるビジネスに対する規制を強化する必要がある。
- まちづくりの目的、あり方を最終目的に置くのではなく、そこから普及するものが将来に残るまちづくりである。
- 沖島の保全
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