まちと中心機能分科会公開セミナー
J.(ジェーン)ジェコブス的中心市街地のまちづくり
(地域デザイン研究会「まちと中心機能」分科会 議事録)
日 時 平成12年10月5日(木)午後6時30分から
場 所 大阪府職員会館第1会議室
メンバー
今岡、岡村、金田、鎌田、河合、小山、佐々木、芝内、冨田、友田、中尾、中出、ハッチャ、前田、松島、山根、梶(記録)
1. 話題提供
テーマ:J.(ジェーン)ジェコブス的中心市街地のまちづくり
話題提供者:潟Wーユー計画研究所 後藤祐介 氏
テーマ解説:J.ジェコブス的とは、マイナーな、小型な、人間サイクルに合わせたという意。
(1) J.ジェコブス「アメリカ大都市の死と生」における主張
- 1969年発刊 J.ジェコブス 著/黒川紀章
- 日本語版への序「この難題(今日の都市問題―安全性の低下、生産力の低下など都市の衰退)の一端は住宅、交通、公園、公共建築物、道路網などの計画や建築関係諸法によって間接的に都市形成にあずかってその責を負うべき専門家たちの都市に対する理解の貧弱さにあるのです。」
- 歩道の用途―安全性、子供が安全に遊ぶ←大人が見守る―歩車分離は間違い
- 人間の本質を見失しなった計画論→都市の多様性への条件―混用地域の必要性、小規模ブロックの必要性、古い建物の必要性、集中の必要性
以下、その例示
@近隣公園
囲いの中で遊ぶ→周りからの見張りがある―配置論が間違っている→近隣住区論の反省。
Aニュータウン
経済論理先行→短期間で完成したために文化・歴史などの重みがない。
低層・低密な戸建て住宅地→現在高齢化←低密の弊害(集中の必要性)
Bスーパーブロック
小ブロックでは街角での出会いがある→子供などの安全性
C用途純化
まちは適度にいろいろなもの、人が混ざっていることが必要
D摩天楼
建築家が美的につくったまち→住民から離れたまち
E梅田の事例
前ビル⇔茶屋町―混用性により魅力あり
(2)「まち住区」と市街地再構成論
- ニュータウンはもう作ることはない→既成市街地の再生
- 近隣住区→まち住区
- 「まち住区」と市街地再構成論 水谷エイスケ氏(後藤氏のまちづくりの先生)
- まちは歴史、文化、経済を考える
例、京都西陣地区
西陣織―地場産業を中心としたまちづくり
まち住区―地域の中に産業、住民、職人、夜働く人、寝る人など、多種多様な人が住んでいる
- メガロポリスという考え方=働く場と住む場を分ける、全体で1つのまち(都市)
→分断されたらお互いに成立しなくなる(例、低密なNT)- 小規模自立的なまち(都市)をつくる→鉄道に依存した都市からの解放
- 参考事例―神戸市にも「まち住区」の理念があったが、実際には追いつかないのが 実態(例、長田のまちづくり―ケミカルシューズを活かしたまちづくり→混用、小ブロック、古い・新しいを活かしたまちづくり)
- 実際には、新長田スーパーブロックでの再開発→地場産業の衰退
(3)J.ジェコブス的中心市街地まちづくりの事例検証
@ 南京町(神戸市)
- J.ジェコブス的まちづくり論の事例として最もわかりやすい
- 区画整理事業をしても2.5m、3.5mの道路が残っている
- 非補助の区画整理事業のためできたことか?
- 路地の良さを残す(メイン通りは8m)
- 新・旧、商・住、外・日を小ブロックに→非常に集客力が高い
- 再開発と区画整理の違い
再開発→不要な保留床をつくって売る
区画整理→道ができるだけ―家(建物)は何年もかかる→時間の蓄積をかけてまちをつくることができるA岡本地区(神戸市)
- 住民参加型まちづくり
- 目的―商店街の再生
- 商業診断→もっと発展するにはどうすれば?
- 店毎に繁盛しても限界→地域としての取り組みの必要性
- 他地域間との競争に勝つためには←中心市街地の宿命
- まちの特徴―大学都市(甲南大学、他)
- テーマ―郊外住宅地、六甲山(借景)
- 地区計画―あまり高い建物を建てない。
ゲームセンター、ホテル等規制
セットバック
細街路の拡幅(側溝整備)- だんじり―自然石を利用した石畳(レンガは割れる)
(4)これからの中心市街地のまちづくり
- これからのまちの活性化→小さいことの積み重ね―一気に良くなるのではなく、何年も積み重ねていくことが肝要
- 「小規模分散自立生活圏の多重ネットワーク社会」
神戸市―コンパクトシティ
兵庫県―人間サイズのまちづくり- 震災から学んだまちづくりの方向→巨大都市はやめる
- 大きければいいということでは行けない
- 成熟社会―成長しない社会
- これまでは成長前提のまちづくり
- 少子高齢化、成長は止まって成熟→価値観の転換
- 結論―30年前に書かれた本「J.ジェコブス的まちづくり」をもう一度考え直すべき
2. 意見交換
Q:大規模(更地)開発―経済性優先
そこが「出発点」だから別の(今日の話しとは)考え方があるのでは?
分譲方式→公共が持って借地方式への転換などについて検討中
J.ジェコブス的まちづくりは既成市街地での考え方
個人の建て替えによってまちが良く強くなるしくみをつくることが肝要→岡本方式を建築基準法、都市計画法に盛り込むなど、制度改善の必要ありA:更地―短期間でやる必要があるか→暫定期間利用→芝生植えて固定資産税をとらない土地をキープすることも必要では→5年でつくらず20年かけて(プランナーでも20年は無理)→いっぺんに「ほんまもん」はつくらない
イギリスのNTセンターの真中にオープンスペース→リザーブ用地の必要性
新しいまち→時間の経過を考えたまちQ:長く続けるということのコツは?
A:大企業(コンサル)は100〜50万円/年では付き合えない。まちづくりをしながら自分の仕事をつくっていく、こういうペースでは大企業はしんどい。コンサルタントもマイナーにならなければならない。
Q:区画整理事業について、ドイツでは5〜10年かけてゆっくりと考えていく。地権者以外にも付近の住民らと緑の再生などについても議論される。しかし日本では住民が待たない。都市計画と誘導の計画性についてどのように考えていくべきか。
A:都市計画は都市基盤→ある程度のスピードでつくるべきか
上物→急いでつくる必要なし
土地利用→個々の土地利用はゆっくりと、ルールのみつくっておく
区画整理をゆっくりやるということではなく、暫定的土地利用を考えるということ。ルールのみつくり基本は個々に任せる。しかし、ルールは用途地域のみでは問題あり。混在の味も出しながら、つくってはいけないものだけを決めておく。Q:自立生活圏→モザイク的な住区がまちの中にできてくる。将来のまちづくりにおいて本当にいいのか?
A:モザイクでもいい。
まち住区―マイナー→行政が入ってこなくていい
メジャー→行政の都市計画
メジャーをしっかりとすることが必要。
(事例)須磨地区―市の説明会での話し。都市計画道路は要らないと住民から意見が出たが、これをきちんと説明できない行政は情けない。A:大きなゾーニングは用途地域でつくり、その中で地区計画でモザイクをつくることはいいのではないか。
Q:既成市街地でのまちづくりについて。堺市がまちづくり支援事業、結果的には箱物づくりの支援。まちづくり=コミュニティづくり、自分のまちを誇りに思うまちづくり。 既成の住宅地の活性化について話しをするとき、その大きさときっかけづくりはどのようにすべきか?
A:@郊外の住宅地の環境を保全する場合→環境整序型(例、芦屋市)
- 内容―駅前パチンコ店、ワンルームマンション等の既成
- 小学校区単位ぐらいが適当では
A 密集市街地型(例、神戸市真野地区、38ha10年間で50億の投資)
- 自力で立ち上げる力なし
- 行政の手を入れないと動かない
(事例)尼崎市
- 山手→金をかけずに環境整序
- 下町→朽ちるまで待つ―モデル的に希望を持たせるものをやって、時間をかけてやっていく
- 1地区100〜200億円かけずに50億円で何個かやる
以上