レジメ = 久 隆浩

1999.1.30     [資料]
元気の出るシンポジウム
「固定観念をぶっ飛ばせ」
〜官民一体のまちづくりを模索する〜

1.現在の街、都市計画、合意形成のプロセスなどについてどう思うか?
 ・満足しているか?どこが気に入らないか?

 住民主体のまちづくりを実現化するためには、小手先の変革ではなく、社会全体の変革が求められるが、現状はまだまだと言わざるをえない。計画論としては「初動期のまちづくり」と「事業まちづくり」を明確に仕分けし、住民主体のまちづくりは主に「初動期まちづくり」に重点を置いておこなうべきである。しかし、こうした整理の必要性を認識している専門家は少なく、また、初動期の段階における行政のまちづくり支援体制も不十分である。さらに、住民のまちづくり意識やまちづくりに取り組む姿勢も従来のかたちを払拭できていない。

2.今まで実親してきたこと・その目標?

 各地でさまざまなかたちの住民主体のまちづくり・計画づくりを実現するために支援をおこなっている。住民主体の計画づくりで実現化したのは「豊中駅前まちづくり構想」「おかまちまちづくり構想」「八尾市文化振興ビジョン」「とよなか2020市民会議(総合計画市民会議)提言書」などである。これらの計画は扱う対象は異なるものの、その表現方法や策定過程には多くの共通項がある。多様な意見・価値覿を持った市民であるが、時間をかけて議論をくりかえし、自ら調整を図ることでそれなりの計画にまとまっていくことが実感できる。今後はこれを具体化すべく、施策に反映させていくことが課題である。

3.街づくりには、
 (1)公園や震災復興など、身の回りの生活環境をどうしていこうかという「地区レベルの街づくり」と、
 (2)幹線道路など、広域的・根幹的な都市の基盤をどうしていくかという「都市レベルの街づくり」というように、概ね、分けて考えられるが、
 先ず、「地区レベルの街づくり」について、
 ・計画の主体? ・事業実施は?
 ・実践面から見て、住民ができないこともあると思うが、それは何か?
  どう解決したら良いか?

 計画の主体はあくまでも住民であるべき。そしてその計画づくりを行政・専門家が支援をしていく。その際、専門家は住民の意見を聞くだけでなく、専門家としての立場からさちんと発言をすることが求められる。また、住民が描かねばならないのは「生活のマスタープラン」、つまり、みずからの将来の生活スタイルや生活像であり、これが明らかとなれば必然的にまちの将来像も明らかとなってくる。

 実践は、最初から立場を出すのではなく、できるものができることをやっていくことが原則だと思う。住民ができない、という言い方が果たして妥当かどうかも問い直さなければならないのではないだろうか。できないことは行政、住民という立場の違いから生じるものではなく、ノウハウや技術、また、金銭の欠如などから来るものだろう。だれができるか、よりも、だれが担うほうがふさわしいのか、ということを考えていくことが大切であり、こうした観点からこれからの社会のしくみ全体を見直してみることが必要だろう。

4.「都市レベルの街づくり」については、今後も、行政により進めることとなると思うが、どう思うか(・計画の主体・事業実施は)?
 ・その進め方等で改善点はあるか?

 そもそも論で考えると、広域と地区で葛藤が起こること自体を間題視しなければならないのではなかろうか。広域では必要だが地区では迷惑なもの、それは何で、それは本当に必要なものか、あるいは必要だとしたら別のかたちはないか、等を考えてみることが大切である。また、広域で必要なことはこれからはネットワークをさせたり、調整していくことだと思う。

5.街づくりにおける学者、企業、住民、行政の役割・責任をどう思うか?

 さきほども述べたように、これはこれから模索していくものだろう。学者、企業、住民、行政それぞれが従来のような仕事をやっていくべきか、どうかも含めて根本的に問い直すことが求められる。だれが担うべさかというのは少しおいておいて、まず、初動期まちづくりの議論のなかで必要なのは、議論の主体とそれを技術的に支援していく者である。これは現在では、前者が住民、後者が行政のまちづくり部局や学者も含めた専門家である。従来の行政対住民のしがらみを払拭するためには、学者など第三者が必要かもしれない。また、学者は現場に立ちながらも大所高所からの意見や判断などをおこなうべきである。

 


(久 隆浩・補足プロフィール)

 生活者の視点にたった、まちづくり・都市計画・都市デザイン・環境計画の研究・実践をおこなっている。現在は、住民主導型まちづくり論や都市景覿に関する研究、環境共生型まちづくりに関する研究などが主な研究テーマである。まちづくりの実践としては、豊中市をはじめ各地でまちづくり協議会やまちづくり研究会、各種市民会議の活動支援をおこなったり、梅花女子大学や茨木市生涯学習センターなどで一般市民向けのまちづくり・環境づくりの講座を担当し、市民主体のまちづくり・環境づくりの必要性と実践のための基礎知識を語っている。

◎主な社会的活動(行政関係)

豊中市環境審議会委員、泉大津市都市計画審議会委員、岬町都市計画審議会委員、大阪施設緑化賞(みどりの景観賞)選考委員、大阪美しい景観づくり推進会議企画委員長、岸和田市都市景観審議会委員、箕面市都市景観審議会委員、兵庫県景観影響評価専門委員会委員、豊中市まちづくりアドバイザー、豊中市都市デザインアドバイザー、堺市都市景覿アドバイザー、箕面市都市景観アドバイザー、茨木市生渡学習センター講師、八尾市総合基本計画策定専門委員、豊中市総合計画策定専門委員、八尾市都市計画マスタープラン策定委員会委員、茨木市商業振興まちづくり協議会会長 など

◎主な著書

『景観からのまちづくり』『都市デザインの手法』『水辺と都市』『水網都市』「マスシティ』『面白い都市』(以上、共著・学芸出版社)『商都のコスモロジー』(共著・TBSブリタニカ)『都市景覿におけるデザインと材料』(共著・工業技術会)


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