レジメ = 中島克元

1999.1.30     [資料]
元気の出るシンポジウム
「固定観念をぶっ飛ばせ」
〜官民一体のまちづくりを模索する〜

1.現在の街、都市計画、合意形成のプロセスなどについてどう思うか?満足しているか?どこが気に入らないか?

 概ね満足しているが、阪神・淡路大震災よりの震災復興という観点では、インフラ整備も重要であるが個人の住宅再建や生活再建という視点で捉えざるをえず、極めて不備であると言わざるをえません。理由としては、土地区画整理事業の移転補償金は建物が残った者のみが対象となること、事業用仮設住宅の前倒しによる建設個数が少なかったことと建設時期が遅れたために震災復興の観点での急場の被災市民の支援には結び付かなかったことなどがあげられる。したがって松本地区では今から20数年前に神戸市より提案された土地区画整理事業を平成7年の震災後に実施するにとどまっている。このことは神戸市のみに責任があるのではなく、松本地区の住民も大きな責任を有していた、と考えている。このような制度自体の目的と被災者の目的との大きな相違のなか、また蔑災後の混乱期における松本地区での住民合意形成は、比較的スムーズに行われたと感じている。

2.今まで実践してきたこと・その目標?

 まちづくり提案その1〜その4を神戸市に提出。

 その1・・・第2段階都市計画決定に向けてのハード面の提案。

 その2・・・松本地区の平均的宅地面積は狭小であるため、インナーボーナス制度を
       活用した建蔽率緩和や松本地区は全体として住居地域であるため、
       高さ制限18mなどを松本地区のまちづくりの指標とする地区計画の設定へ
       向けた提案。

 その3・・・安心安全なまちづくりを目指すための地域コミュニティ施設の整備に
       関する提案。

 その4・・・地域コミュニテイの拠点整備に要する用地の捻出を土地区画整理事業に
       おける用地取得の対象とするよう提案。

 以上を通じ松本地区では高齢者や障害者が安心してかつ安全に暮らせるまちづくりを目標としている。

 地域コミュニテイとしてはこれらを実践するために組織的、経済的に脆弱な自治会組織やまちづくり協議会組織から発展させた有限会社 C・D・C・神戸を設立した。この会社は松本地区内外の39名の出資者によって作られた法人で、民間非営利事業を基本精神とした法人である。現在一種のホームセキュリテイシステムである「24時間安心システム」の実施に向けモニター家庭を募集し実証実験に入ろうとしているところである。

3.街づくりには、

(1)公園や震災復興など、身の回りの生活環境をどうしていこうかという
  「地区レベルの街づくり」と、

(2)幹線道路など、広域的・根幹的な都市の基盤をどうしていくかという
  「都市レベルの街づくり」というように、概ね、分けて考えられるが、

 まず、「地区レベルの街づくり」について、

 ・計画の主体・・・住民
 ・事業の主体・・・行政
 ・実践面から見て、住民ができないこともあると思うが、それは何か?
  どう解決したらよいか?

  ・・・ソフト面を除き住民のみではほとんど実現不可能.
     ただし、民間再開発は除く.
     民間再開発の問題点
       計画立案時から竣工引き渡しの間の担保保全措置が公共事業者によって
      なされない限り今後は実現は極めて困難。

     土地区画整理事業について
       原価補償制度のみによる考え方では限界がきていると感じられる。街区の
      インフラは道路公園のみによらず公営住宅や地域コミュニテイの拠点施設など
      地域の特殊性に合わせ柔軟に対応する必要がある。この実現のためには旧来の
      土地区画整理事業単体で行うのではなく、関連する他の制度との複合した形で
      の事業の実施が不可欠であると考えられる。

4.「都市レベルの街づくり」については、今後も、行政により進めることとなると思うが、
  どう思うか?

 戦後50年の都市計画は専ら先進地域の成功例を基にこれを模倣複製することによって行われてきた。また考え方の根幹は都市への人口の過度過密を解消し、分散させることによって良好なる住環境の育成を目的としたものであった。

 しかし戦後50年を経て少子化高齢化の社会の到来は旧来の拡散拡大型の都市づくりではなく、地域限定型循環型都市づくりへの転換が求められていると考えている。近年のTMOの考え方にも共通することである。つまり、極めて理想論ではあるが、また、関連する新たな法制度も必要不可欠であるが、住民を土地の呪縛から解放しライフスタイルに応じた適時適選の住環境を地域として提供し、住民を地域内で循環させることを念頭に置くべきであると考えている。

 こうした観点で計画の主体を考えれば、行政のみではなく住民組織を法人化し(いわゆるNPO)合体した計画主体が望ましくその結果、事業実施においても事業の実施がその地域のNPOの財政的な育成に繋がることが望ましいと考える。

5.街づくりにおける学者、企業、住民、行政の役割・責任をどう思うか?

学者について
 その地域の防災上の危険度の判定および個々の建物の危険度の判定。

企業について
 業種によって一概にはとらえられない。(製造業、サービス業、小売業など)

住民について
 制度によって生かされているという生活概念の転換が必要だと考える。自発による自力事業主体の自覚が求められていると考えている。

行政について
 住民の安心安全な生活を保証し、その実現のためのインフラ等の整備を続けることは 集税者としての責任であると考える。個人主義的になりがちな住民はまち全体の課題よりも個人の課題を優先的に考えるのは当然で、そのため場合によっては個人の権利を抑制してでも地域全体の公共の福利を優先せざるをえない状況が考えられる。その実現のためには日常的に行政として住民を指導する責任があると考ている。


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