平峯:まずはじめに、先程の本間先生のお話を受けて、あるいは、今までの都市づくり・まちづくりについて、例えば官の方の代表は、それをどのように捉えているのか、ということを、大阪府建築都市部総合計画課長であり地域デザイン研究会の幹事長でもある藤田健二さんにお話して頂きたい。大阪府の総合計画課長というのは、800万府民の都市作りの為に、色々な通達を出したり、国からきたものをどうしようかなどといったことを考える計画の総帥です。そういう方達が、どのようなことを考えて今までまちづくりをやってきたのか、という流れを少し御紹介したい

大阪の都市づくり

藤田:官民一体のまちづくり、固定観念ということでは、官も民も企業も学も、自ら意識しないうちに固定観念をもってまちづくりに携わってきた、ということは事実だろうと思う。特に今まで我々は、公共指導型の都市づくりとして骨格づくり、広域的な都市づくりをやってきたわけだが、阪神・淡路大震災以降、NPOや「まちづくり協議会」といった地区レベルの計画、あるいは住民が携わる都市計画、まちづくりが増えつつある。その中で官と民の軋轢も発生しており、そういうことを踏まえて少しお話ししたい。

 歴史的に見ても、大阪のまちづくりは、古代から中世、近世、近代と、大きな3つの節目があり、古代から中世までは中国の風水の影響を受けた条里都市、近世では、日本独自の将軍制による武家の都市づくりというものがあった。

 近代の都市計画は欧米の法制度や技術の良いとこ取りというか、残念ながら日本型としての咀嚼は不十分なまま未消化なうちに進められてきた。ここ数十年来の都市計画は、国主導であり、国が補助金の権限と掌握を全国統制し、誘導してきた。我々は、おおむね国が定めた都市計画に対し中間行政体として対応せざるをえなかった。特に経済発展を第一にしてきた部分があり、これをいかに変えていくのかということが大きな課題である。

 豊かな社会を目指したはずの経済成長・所得向上ということが幻想とわかるまでに随分かかった。その間に我々は、様々な制度、手法を編み出し、産業経済政策の受け皿を作り、あるいは、道路・公園・下水道といった都市基盤を作ってきた。特に大阪府では、交通基盤としてのハードインフラの部分は、全国に先駆けて、空港・鉄道・道路等を先行的に整備してきた。日本独自の方法論ということでは大規模に食と住を分離したニュータウンも建設した。その様な流れの中で、60年代後半以降、バブル崩壊まで、複合型の都市づくりを積極的に行ってきたが、中には「りんくうタウン」等の失敗もあった。

 そうした経緯を踏まえ、バブル崩壊から、阪神・淡路大震災を経た現在が、一番為になるのではないか。今までの都市の安全神話が崩れ、これからは、真の都市づくりが求められている。つまり都市づくりのパラダイムが変わってきた、ということ。他の都市圏なり都市と、どう連携し、協力したり、共存するか、ということの大切さを学んできている。

 今までの国の管理下にある補助制度や通達においても、我々は通達を、直接市町村に投げかけているのでなく、大阪府としてのあり方や解釈を含めて、流しているわけだが、霞ヶ関の机上の思い付きや東京からの視点に振り回されている部分もある。つまり、国指導の一番の問題点は、地域毎の対応性を認めていない、認めてこなかった、という点にある。全国5ヶ年計画で全部縛られるのではなく、我々なりに重点政策を作る、ということが必要。

 以上のようなジレンマ、悩みを踏まえながら3つの問題意識を提示したい。

 1つは、都市課題への対応の仕方。緊急性が大きくかつ重要なものは、行政の重大テーマとして取り組むが、重要性が大きくても緊急性が無いものについては、先行対応・先行投資すべきか、という課題を迫られる。

 2点目は、都市計画の合意形成システム。現在の都計計画手続きというのは、決定権者により若干の差はあるものの一通りしかない。これを大きく変えないと危険ではないか。特に一都市とか地区のレベルに応じたもの、決定すべき内容、影響範囲、役割分担等、それぞれに応じた合意形成のあり方があるのではないか。この点を本日は特に議論して頂きたい。

 3点目は、国と地方の関係の見直し。地域として自立して、自らの発想で、やるべきことをやりたい方法・時期に決めるということ。地域密着型の課題に対しては縦割りの机上論では対応できない。現場・現実主義で取り組むには、住民の皆さん方とも様々な形で係わっていかなければならないと思う。ただ、骨組みを作るということに対しては、根本的には、やはり行政が走るべき部分もある。多様な手法、ルール、理念のもとで、解決し、実施しなければならない課題も多いが、固定観念を捨てて、地域主権、地方分権、ということを唱えつつ、一歩ずつ進めていきたい。


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