地域デザイン研究会「まちと中心機能」分科会 議事録
日 時 平成13年3月3日(土)午後3時から
場 所 伊丹市
メンバー 石橋、岡村、鎌田、木村、高岡、中出、福井(吹田市)、増田(吹田市)、梶(記録)
1. 伊丹市フィールドワーク
テーマ:芸術文化を中心としたまちづくり
説 明:伊丹市生涯学習部社会教育文化財担当 片岡主査
(1) 現地視察
@ 伊丹郷町の歴史について
- 歴史は古く奈良時代には既に開けていた。
- 南北朝時代は伊丹氏の城下町として繁栄。
- 織田信長に仕えた荒木村重が1574(天正2)年に有明城(後に伊丹城)に入って惣構えを完成させたが、1578(同6)年信長に反旗を翻したため攻められ落城した。しかし、その後も旧城下町は町人を主体とする郷町として発展した。
- 伊丹郷町とは伊丹村を中心とした15ヶ村の集まりの総称で、江戸時代は幕府領であったが、1661(寛文元)年に10ヶ村が近衛家領となり、摂関家に保護される形で酒造業が栄えた。盛時には80軒近い酒造家が軒を並べた。
- 伊丹は酒づくり発祥の地。鴻池(こうのいけ)村で山中シカノスケの長男ユキノブが天正時代につくりだしたのが最初と言われている。碑あり。
- 江戸では大阪の方から来る酒は下り酒と言われていた。中でも伊丹の酒は丹チョウと呼ばれ(伊丹酒の代名詞)トップブランドとしてもてはやされた。
A 旧岡田家住宅について
- 1674(延宝2)年に松屋与兵衛が建築したとしている。
- 当初は町屋で、約40年後に酒蔵を増設して酒造業を営んでいた。岡田家の所有となったのは明治33年。岡田家の本家は旧岡田家の東隣にあった。
- 店舗は、兵庫県内に現存する最古の町屋で、年代が確実な17世紀の町屋としては全国的にも貴重。酒蔵は、現存する日本最古の酒蔵で、江戸時代に隆盛を極めた伊丹の酒造業の歴史を今に伝える重要な文化財である。
- 昭和61年伊丹市へ売却、平成4年国指定文化財に。現在、解体修理を終え、防災工事を実施中である。
- 改修後は伊丹郷町の資料館として利用する。
B旧石橋家住宅
- 江戸時代後期に建てられた商家。主屋の正面は厨子2階の塗り込めの軒裏と虫籠(むしこ)窓、出格子窓、正面中央の摺(す)り揚げ大戸の出入口装置やバッタリ床几(しょうぎ)、揚見世(あげみせ)など、建設当初の店構えを残している。
- 都市計画街路事業の実施のために移転を余儀なくされ、平成8年に市指定文化財に指定し、旧岡田家住宅の東隣に移築することになる。
- 石橋家は、18世紀に猪名野神社の門前通り北少路村に移り住んで商売を始め、明治以降、紙と金物の小売業のかたわらに酒造業を始め、日用品の雑貨商を営んでいた。
- 平成13年度中に一般公開予定。
C 歴史的な建築物を集合させた背景等について
- 旧岡田家住宅の復元にあたり、まずは宮ノ前(商店街)地区の活性化を考えるということから入った。若手の商店主らとの協議会を設置し検討を進めた。
- 市の体制づくり。都市景観、道路、その他あらゆる分野の担当者を集めてプロジェクトチームにより検討した。各セクションのバリアフリー化が必要。
- 旧岡田家住宅だけではダメで、周辺整備が必要であるとの結論。各担当課毎に何ができるかということで2年余り検討した。
- このような中、国の方から周辺整備に対して提案があり、各担当課長からのGOサインが出て事業として進むことになる。
- その頃、旧石橋家住宅が都市計画街路事業の実施のために移転を余儀なくされており、市の文化財に指定し、旧岡田家住宅の隣に移設することに決定。地下を美術館として利用することにした。
- その他として管理棟を建設。この3施設を中心にして歴史的な修景整備を進める。
(2) 意見交換
Q:建物の復元は元の建物とかなり変わってしまっているのか?
A:ほとんど変えていない。
Q:一旦解体して再築したのか?
A:YES。全発掘したうえで再築した。
Q:このような再築の仕事ができる大工は少ないのでは?
A:まだ全国で200人くらいいる。
屋根は早くから瓦が使われていた。酒蔵は火を使うため防火面に配慮。そのため江戸初期の瓦が多く出土する。非常に珍しい。
震災時にも瓦の損傷は少なかった。Q:旧岡田家住宅の屋根にある瓦は全部で何枚ぐらい?
A:1万枚弱。そのうち600枚は当時のまま残っている。
Q:再築に際して何の費用が一番高くつくのか?
A:材(柱)である。瓦はそれほどかからない。
壁は在来工法である。京大に構造診断をしてもらったところ想像以上に強度が出ているという結果が出た。建設省(国土交通省)も見直さざるを得ない結果となった。Q:土間や壁の材料は?
A:土間は石灰、まさ土、にがり。色はサンプルを採って合わせた。
壁はカミスキを利用した。非常に高くついた。2.懇談会
場 所 長寿蔵(白雪ブルワリービレッジ1階)
−市内の酒造会社が開設した”日本酒博物館”。伝統的な酒造りの道具を展示しているほか、江戸時代の酒造りのようすを映像で紹介する「マジカルシーンビジョン」などがある−
・片岡主査から事業を進めるに際しての苦労話や裏話、またご自身の夢の話などを聞かせていただくことができ、大変盛り上がりました。
3.演劇鑑賞
場 所 伊丹アイホール
−関西小劇場演劇のメッカ。自主事業の中心は演劇とダンスで、演劇ファクトリー(演劇学校)、フラメンコ教室、ダンスワークショップなどの自主講座も行っている−
公演名 瞼の街、君の稜線(作・演出 深津篤史)
- 第3部は今回のFWの目玉?でもある演劇鑑賞。当分科会の副査の山根さんが参加しておられた「伊丹市演劇ファクトリー」の【出荷】公演です。
- 現地を視察して、実際にその芸術・文化に触れるというこれまでにない新しい企画。
- 参加メンバーは演劇鑑賞初体験者ばかりで少々とまどいもありましたが、そこは何事にも挑戦ということで懇談会の会場から徒歩にてアイホールまで移動。
- アイホールに着くと既に大勢の人が入場を済ましていました。でも若い女の子が多い!私は少し場違いな感じもしながら空いている席を見つけて席に着きました。
- 前傾した舞台、奇抜なセット(マネキンがいっぱい!)にまず驚き、開演すると現在と近い過去を何度も往復する忙しいストーリー展開について行けず、何がなんだかわからないまま終わってしまったという感じでした。(これは私だけ?)
- 伊丹市のまちづくりの歴史を知ることができ、今日演劇ホールの運営や数々のワークショップが行われていることについて少し理解することができたような気がします。また、芸術文化を中心としたまちづくりの一端を見ることができ大変有意義なFWになったと思います。
以上