悠悠禄

私は思う! 府市統合本部の「大阪グランドデザイン」

平峯 悠

 5月8日までを期限とする「大阪グランドデザイン」に対するパブリックコメントの案内が地デ研のメールで送られてきた。その「グランドデザイン(素案)」を一言でいうと、陳腐化した都市計画マスタープランの大阪拡大版であり、策定作業に関わった人には申し訳ないが内容的には点数がつけられない。私の意見は統合本部に送るつもりであるが、この潮騒にあらかじめ方向だけを示しておきたい。

 そもそも大阪都構想は政策決定機構の一元化であり、府市それぞれが蓄積してきた考えや政策をより強固なものとすることである。大阪市と大阪府はこれまで都市政策面では双方が競争し、役割を分担してきた。阪神高速道と近畿道、十大放射三環状線の整備、流通業務団地の整備、パーク&ライドとライド&ライド、堺泉北港と大阪港、市副都心と府下新都心構想、伊丹空港・関西空港等々これまでの経緯を踏まえ、二重行政や権限分散による矛盾や問題点を解消して行くことが求められている。

 現在、市民や府民に明確に示さねばならないことは、大阪が抱える都市政策面での課題や問題点に対し新たな処方箋を提示することである。例えば、大阪咲洲地区の活性化(経済、社会資本、外国資本)、大阪港と泉北港の統合による対アジア戦略、弊害の多かったモンロー主義の地下鉄網の改善とバス路線の再編、鉄道・高速道路の運賃一元化と料金低減化、東大阪や平野地区の先端的中小企業に対する社会基盤からの支援、大阪北ヤード開発と吹田操車場跡地開発等の連携、求心力が低下している都心の再構築などをオープンに議論し、大阪が変わるという施策を出さなければ人心は直ぐに離れていく。要は戦略的に問題を絞り、それに対する明確な答えを短期間(2〜3年以内)に具体化することである。統合本部はマスタープランを策定するところではなく、成果を示すという戦略本部であると思っているので、第1段階は、具体的な施策を実現するための意見を企業、市民、NPO等から求め、「大阪グランドデザイン素案」は次に手をつける課題であると考える。

 さらにこれから府市で議論し政策として打ち出さねばならない事項としては、@人口構造の変化(少子高齢化)に対する都市政策=都市間・地域間競争にどのように勝ち抜くか、経済的発展を可能とするのか、A大阪全域にわたる歴史的・宗教的資源の活用=都市域における中核施設としての位置づけ、Bクルマ社会からの脱却のための具体的施策、C都市とエネルギー、防災政策、D若者はじめ人々の活動の場の提供による都市地域内部からの活性化などであり、これらの命題に一定の方向示すことが出来れば、大阪が面白いという評価につながり、大阪都構想の成果となろう。

 今回の悠々録は別の題を考えていたが、グランドデザイン素案が示されたので急遽内容を変更した。橋下改革はいろんな批判もあるが、私が評価するのは目の前の問題点や課題を変えようとする強力なパワーであり、現実を直視し即解決しようとする現実主義的なアプローチにある。理想的で美しい絵が描けても実行できなければ意味がない。統合本部の内幕は全く知らないが、今後議論の上訂正・修正され具体的になるよう期待したい。


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