REPORT

地域おこしを目指した「吉本新喜劇」騒動記(下)

前田秋夫

 「彦根地域住民の参加する吉本新喜劇」の取り組みについて、潮騒前号で「ことの発端」から「実行委員会の結成」までを掲載したが、その後半として「本番開演」までを本号に記す。

 今回の取り組みの重要なテーマとして、「地元のことを盛り込んだ台本」がある。このため台本作家に彦根に来てもらい、地元のこと・地元の想いを理解して台本に生かしてもらうことが重要である。実行委員会メンバーは色々な資料(彦根城、湖東三山、近江牛、湖東焼等)を用意し、熱い想いを披露したが、ボリュームが多すぎて、若き女性台本作家は、消化不良気味であった。資料をすべて理解していたのでは、いつまでたっても台本が出来そうにない。とにかく雰囲気を理解してもらい、台本をまずは仕上げてもらって、それから地元の希望を入れてもらうこととした。

(2011年早春;座長、主な出演者決定)

 やっと座長と主な出演者が決定した。これが決まらないと、ポスターもチケットも作れないということで、地元はすこしあせっていた。

 座長;内場勝則、主な出演者;チャーリー浜、若井みどり、ミスターオクレ、山田花子といった面々である。誰でも知っているメンバーで実行委員会のメンバーは少しほっとした様子だった。地元出演者を入れて最もうまくやってくれそうな座長は、内場さんしかいないという話であった。

(2011年早春;地元出演者のオーディションと稽古)

 プロの吉本新喜劇の中に地元出演者を入れてもらう、というのも重要なテーマだった。出演希望者を公募し、オーディションで決定することとなった。予定では、昼、夜、20名ずつで計40名を募集するつもりだったが、応募が100人近くあり、また芸達者な子どもが多かったこともあり、70人余を合格とした。合格者は子どもからお年寄り、外国人まで、目的も「面白そうだから」から「あわよくば吉本で」と多種多様であった。本番にむけての最初の稽古は、(上手なこけ方)だった。

(2011年春;プレス発表)

 吉本の強みはなんと言っても、メディア関係に強いことである。今回は地元を巻き込んだ新しい取り組みの社会的認知度を高めるため、吉本本社と地元彦根で同時プレス発表をすることとなった。吉本本社では、座長の内場勝則さん、山田花子さん、吉本エグゼクティブディレクター、地元実行委員長、4人組T氏、地元キャラいしだみつにゃんが参加しての記者発表となった。

(2011年春;テレビ番組出演)

 びわ湖放送人気深夜番組「勇さんのびわ湖カンパニー」に実行委員会と4人組で宣伝のため、出演することとなった。テレビに出るというだけでみんな緊張気味なのに、新喜劇の宣伝をするということで、あっという間に出演時間は終わってしまった。

(2011年春;チケット発売開始)

 いよいよチケットの発売開始である。昼夜で2,800枚を売り切らなければならない。チケットは直接販売のほかに近江鉄道旅行センターにも500枚販売委託した。実際は近江鉄道分が発売と同時に完売となった。実行委員の中では、これなら何とかいけるという確信と、もう少し頼んどけば良かったという思いが交錯した。

(2011年6月18日;開演)

 開演当日、吉本舞台設定班が朝早くトラックで乗りつけ、舞台を造り始めた。彦根文化プラザにつながる道が大渋滞となっている。「ただ今より彦根地域住民の参加する吉本新喜劇の開演です。座長・・」満員の客席より「あー山田花子の声だ」そして幕が上がった。

(幕が下りて)

 幕が下りて、ビールを飲みながら、実行委員長が叫んだ。「来年もやるぞ」


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