悠悠録

日本文明を意識する

平峯 悠

 世界の国の数は192カ国(国連加盟国)であるが、その中には私たち日本人には全く理解に苦しむ国が存在している。大昔から異なった宗教が原因で対立し、同一宗教でも宗派が違うことによる紛争や抗争・テロを繰り返す国々、北朝鮮のおかしな行動、国を挙げての反日行動に走る中国や韓国、先進国と言われる西欧においても人種的偏見を持ち、自国の国益のみを主張する国々など、21世紀になってグローバル化が進み世界が一つになるなどは幻想にすぎない。これを一言で表すとハンティントンの「文明の衝突」ということに尽きる。日本は漢字文化圏でこれまで中国文明の影響を多くうけてきたこと、さらに第二次大戦の贖罪意識等により領土を脅かされても衝突を避け、友好を第一とする論調が多いのは日本文明の本質なのか又は逆に日本という意識が希薄なのであろうか。

 文明の定義については様々な考えがあるが、現在世界の文明として、ハンティントン、トインビーはじめ多くの歴史学者は、日本文明を中国文明の周辺文明でもなく、中華文明と西欧文明の混淆体でもない一つの固有の文明として認めている。日本は四方を海で囲まれた海洋国家であり、土着の縄文人に南方、北方からの民族の移住があり、それらが入り混じった中で日本文明が醸成されてきた。さらに中国文明の影響を大きく受けつつ、欧米文化・文明や仏教・キリスト教等の宗教の移入があったがこれらを見事に日本のものとして変形し形づけてきた。その特徴はもの凄く要約すると、天皇制と和魂をもとに穏和・融和・忍従・誠・清・公正・法(規律)等によってつくられた文明である。古代からの自然崇拝(アニミズム)や土着技術を基礎にして、儒教思想、西欧文明を受け入れ進化してきたが、日本文明に危機が生じたのは明治維新と太平洋戦争の後の日本社会であろう。

 戦後、アメリカの文化・文明を無条件で受け入れ、その庇護のもとに経済大国として成長してきた。元々アメリカは国の成り立ちから「民・個人」を尊重すること国柄であるため、例えば会社は経営者と株主のものという象徴的な考えが大きくなりアメリカナイズしてきた。それを見直すきっかけがになったのがITの寵児ホリエモン事件である。さらに中国・韓国はじめ周辺国が発展し自らを主張しはじめると、日本文明と衝突する。両国が一つ覚えのように持ち出す歴史問題は自国の優越性を認めさせる口実にすぎない。

 危機に瀕したときその国の原点に戻るというが、今こそ日本のアイデンティティーを明らかにすることが求められる。最近文化面での日本の特徴はクールジャパンという言葉で喧伝されているが、日本国憲法の改訂の議論が生じてきた現在、日本の文明について再認識することはぜひとも必要なことである。しかしナショナリズムを煽るものではないし、それに踊るほど日本人は馬鹿ではない。中国や韓国は日本の文明や文化を意識させてくれる反面教師とし、また第二次大戦後のフニャフニャになった日本を蘇らせるきっかけを作ってくれているありがたい存在として感謝でもしようか。


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