REPORT

まちを視る分科会

「あやめ池遊園地跡地開発」をFW

 「まちを視る」分科会では5月18日、「省CO2のまちづくり」をテーマに近鉄あやめ池遊園地跡地開発のフィールドワークを行いました。今回の案内人は近鉄不動産の戸建事業本部で現在は販売等を担当され、この開発に造成工事から携わっておられる外岡様です。「まちを視る」分科会で住宅開発のフィールドワーク(FW)を行うのは2006年の「ガーデンシティ舞多聞」以来8年振り。それだけ関西での大規模住宅開発が減ってきたように思います。

●2004年6月、賑わった78年の歴史に幕

 
全体説明を受ける
 
景観軸視座
 
メタセコイヤ公園
 
メディカルコートあやめ池

戸建て住宅 

 近年、ドリームランドや宝塚ファミリーランド等関西の遊園地がどんどん閉園となっており、あやめ池遊園地も例に漏れず2004年6月に閉園、78年の歴史に幕を閉じました。同遊園地は1926年6月に開園。遊園地の真ん中に大きな池があるのが特徴で、1929年には温泉場や飛行塔や回転ブランコなどの施設も完成し大変賑わいました。1958年には「平和のための防衛博」が開催され、戦闘機や戦車などを展示し、来場者数は70万人を記録したそうです。

 跡地開発事業の計画にあたっては、奈良市、学識経験者、地元住民の代表、近畿日本鉄道などをメンバーとする「あやめ池遊園地跡地利用検討会」を設立し、産・官・学が力を合わせて検討することから始められました。

 計画面積は池、都市計画道路、駅前広場を除いて約19haあり、用途地域は駅前の商業地域(400/80)、第1種住居地域(200/60)、第1種低層住居専用地域(60/40)で、第3種風致地区(高さ10m)、第5種風致地区(高さ15m)、あやめ池遊園地跡地地区計画、宅地造成工事規制区域、地域森林計画対象民有林、砂防指定地等、多くの規制があります。

●2011年4月に一部まち開き

 駅前広場がなかったことから都市計画道路の変更や、計画建物に伴い用途地域、風致地区規制の変更等を行っています。奈良県では風致地区の見直しにおいては、若草山がどう見えるのか、どう影響するのかが検討要素にあるとのことで地域性がうかがえます。2008年に土地区画整理事業認可を取得し、造成工事に着手し、2011年3月に事業終了認可を受け、同年4月に一部まち開きをしています。

 土地利用は駅前に新しい交番とスーパーマーケット、スポーツ施設としてインドアテニス、学校施設として近畿大学付属幼稚園と小学校、池辺を利用したカフェレストランと結婚式場、有料老人ホーム、クリニックモール、住宅として分譲マンション2棟128戸と戸建住宅142戸となっています。

●「四季や自然に応答する街」目指す

 まちづくりのコンセプトは「水辺や緑などあやめ池のランドスケープを承継・活用して四季や自然に応答する街」「あやめ池を中心とした新たなライフスタイルをもとに人と地域がつながる街」であり、それに基づき景観・環境ガイドラインを策定しあやめ池をのぞむ景観軸を設け、池周辺に遊歩道を整備し、メタセコイヤなどの緑を活かす計画としています。また、緑のリサイクル計画として既存樹木498本の内、230本を保全し、93本は移植し、残りの伐採木は加工して再利用しています。湿地帯の復元として小学校のビオトープで蛍の人工飼育や、西側戸建ゾーンは電柱を地中化としています。

●住宅・建築物省CO2推進モデル事業に採択

 2009年度第2回 国土交通省 住宅・建築物省CO2推進モデル事業に採択され、自然エネルギー利用設備として池に太陽光発電を設け、太陽光・風力利用の防犯灯やソーラーLED公園灯を設置しており、ヒートアイランド対策としては、透水性舗装や湿地の復元・自然石護岸とし、共用設備としてエコステーションや太陽光発電を利用した電動自転車シェアリング、駅前広場にエコ掲示板や住宅専用ポータルサイトにエコ情報の発信をしています。また、共同住宅や戸建住宅でも外断熱工法やLED照明、ガスと太陽光発電のW発電システムの採用等をしています。住民による持続的なエコ活動として、マイカーの利用抑制や住民参加の緑地の管理やその他のCO2対策等エコ活動による促進ツールにより、商品券やプリペイドカードの発行等を行っています。

 説明の後に、まち歩きを行いましたが、新しい街とは思えないような自然の緑の多さ、あやめ池をのぞむ景観軸や若草山をのぞむ眺望の美しさ、水辺から吹く清々しい風には景観・環境への配慮を改めて感じました。また、所々に遊園地当時の遊具の基礎などが残っており、当時のパンフレットと見比べると懐かしく感じました。

 戸建住宅は平均的に敷地面積約250uで価格は5000万円前後で、最後に見学したモデルハウス(スマートハウス)は敷地面積約100坪、5LDK、床面積153uで、様々な省CO2設備を備えており、是非住んでみたいと思いましたが、私たち庶民には手が届かない価格でした。

 まち歩きの後は恒例の懇親会を大和西大寺駅前で行ないました。まち歩きの感想や参加者相互の情報交換など和やかに会話がすすみ、宴たけなわのうちに散会となりました。


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