リニア中央新幹線に思う

JR東海が9月18日、リニア中央新幹線(東京・品川~名古屋間)のルートおよび中間駅の位置を発表。1973年に基本計画決定後40年を経た一大プロジェクトは、いよいよ開業へ向けて前進することになりました。地デ研機関誌「潮騒」では、読者のリニアに対する思いも様々だと思われることから、「リニア中央新幹線」への感想・意見などを、無記名という条件で募りました。寄せられた声を掲載します。

●リニア新幹線の意味?(T.O)

 かつて遷都論がやかましかったころ、リニアによって、東京の政治機能を名古屋、大阪に分散しようという分都提案を読んだことがあったが…。それ以来、しっかり考えてこなかったリニアについて、今回記事募集を機会に考えてみた。

 莫大な投資をして東京・大阪を列車で約1時間、それも途中ルートは山の中を大部分トンネルで結ぶことに意味はあるのだろうか。確かに皆が求めている先端技術開発による夢のプロジェクトではあるが、マスコミがはやし立てているほど、僕の心は浮き浮きしない。

 成熟社会を迎えている我が国において、時代が求める新たな価値をつくり出せるのか。東京・大阪間が1時間圏になると言っても、1つの大都市になる訳ではないし、そんな大都市は魅力的と思わない。それぞれの気候風土のなかで、歴史、文化、伝統などを育んできた特色ある都市が存在し、それらを訪ねて、車窓の風景を楽しみながら列車で旅する。そのような落ち着いた価値観を取り戻す時代ではないだろうか。現在一時的にスローライフを強いられている私なので、こんなことを考えてしまうのか。

●リニア中央新幹線に思う(S.F)

 2027年に東京名古屋開通予定のリニア中央新幹線が着工へ向けて動き出しました。ところが名古屋大阪の開業はその20年後です。そうなれば大阪は1地方都市になると悲観する向きも多い。しかし現実を冷静に受け止めて関西の活性化策を創案し推進するのが良策ではありませんか。私見を述べます。

 ◇2015年に金沢まで開通の北陸新幹線を早期に大阪まで接続することです。リニアは先の話ですが、再来年には東京と北陸は日帰り圏になり東京一極集中が進むのです。関西と北陸の時間距離を縮める計画策定が急務です。 ◇関西の空港機能を高めることです。関空と伊丹が経営統合されましたが、神戸空港も含めた3空港一体運営で国内外に広く門戸を開こう。小型低騒音の機体主流の今は、神戸空港の時間、便数、ルート制限を緩和できる良い機会です。 ◇関西ならではの個性的な都市再生のビジョンです。市長選挙最中の神戸ではウォーターフロントのクルーズ港への脱皮や、六甲山を活用したグリーンツーリズム、ポートアイランドの高度医療産業の推進が話題になっています。

 大阪、京都でも斬新な構想を打ち出して、魅力ある都市創造に挑戦しましょう。

●今、関西は何をなすべきなのか (Y生)

 リニア中央新幹線がJR東海の単独費用で東京~名古屋間が先行開業されるそうな。

これはこれでおめでたい話なのだろうが、どうもしっくりと来ない。何故だろうと考えると思い当たることが一つ出てきた。非常に偏見に充ちた考えではあるが、関西再生とちょっとした経済学の基本論から一つの論点にのみ絞って語ってみる。

 そもそも国家戦略として「国土の均衡ある発展と太平洋ベルト地帯の交流拡大を図る」ことを目的として作られた東海道新幹線は鉄道の領域を拡げ、我が国の高度成長に大きく寄与してきたことは論を待たない。一方では関西が東京への日帰り圏に組み込まれ、関西の地盤沈下と東京への一極集中化が進んだことも(全てが新幹線によるものではないにしても)事実であろう。

  今では中央から気軽に東京に呼び出されて、日帰りで東京出張を繰り返すビジネスマンは数多く存在している。東海道新幹線の「のぞみ」に乗ると朝は新大阪や京都から数多くの人が東京に向けて出発し、夕方には最終列車までほぼ満席の状態で関西に帰ってきているのは御存知の通りであろう。これらの人々を見ると全てが一万円札に見える。実際はもう少し高いが・・・。そう、関西の人は往復二万円以上の金を関西以外のどこかで強制的に消費させられているのだ。関西で稼ぎ出している金が外部に流出していて、関西の経済の回転速度を落としている。

 では、その金はどこに行っているのだろうか。運賃は全てJR東海に入っているので、名古屋にあるJR東海の本社に利益が集約されているのだろう。

 さて、これからが本題。なぜ今回JR東海が自前で東京(品川)~名古屋間を作ると言い出したのか。東海道新幹線の更新その他の理由は勿論あるだろうが、首都と地方の時間短縮の効果が、自社ひいては名古屋圏の利益となることもあるのではないか?。では、関西として将来のそういった変化を取りこむことは出来ないのだろうか。可能性の一つとして、名古屋~関西間がJR西日本(或いは関西の鉄道会社)であればどうだろう。当初は莫大な建設費が収益を圧迫することになるかも知れないが、長期的には今まで東海道新幹線によって名古屋に落とされていた金の一部が関西に戻ってくることになる。さらには北陸新幹線の福井までの開業によって起こるであろう富山や金沢など北陸の都市の東京直結化を最小・最短の費用・期間でもって米原までの建設による大阪直結まで引き戻せる事も出来る。

 関西の経済界は手をこまねいて傍観していていいのだろうか?。今行われようとしているのは、需要が約束されている東海道新幹線の客の転移ではないのか。関西では相変わらず東京~関西への同時開業の要求など他人任せ、お上頼りの論調ばかり目立つ。

 関西特に大阪は古くから中央に頼らず自主的な活動で経済を育んできた。自由な経済活動は起業しやすい風土を生み、地方からの人を呼び寄せ、新しい企業を生み出してきた。

 東京と関西が1時間で結ばれるようになると移動に対するコストはかかるにせよ太平洋ベルト地帯の東京・名古屋・大阪は一つの大きな都市として一体化し、その中で個性を競うことになるのではないか。当面の開業が名古屋までならば、名古屋が首都エリアの西の拠点となる。関西の経済界や識者は大きな視点でもってこの問題を論じるべきではないかと思う。


HOME  潮騒目次

inserted by FC2 system