2013年度現地シンポジウム「11年振りに智頭町で開催」
地域デザイン研究会の2013年現地シンポジウムは11月1日~2日、鳥取県智頭町で行われた。同町での実施は2002年以来の約10年ぶりで、地域づくりへの着実な進化がみられた。1日目は、ますます進む少子・高齢社会でいかに豊かで幸せな生活ができる地域をつくっていくのか。過疎化が進む典型的な山間地域の中で、先進的に地域づくりと取り組んできた智頭町で、その取り組みを紹介いただくとともに、今後どう取り組んでいったらよいのかを議論した。2日目には地区振興協議会の拠点施設や町内の名所を視察した。(本稿は参加メンバーが分担執筆し、事務局で要約した) |
行程および参加者
▽日時:平成25年11月1日(金)14:00~16:30
▽場所:智頭町保険・医療・福祉総合センター「ほのぼの」
▽参加者:智頭町(寺谷町長、谷口町議会議長、山形地区・山郷地区・いざなぎ地区・富沢地区・土師地区各振興協議会)、地域デザイン研究会(平峯理事長、井上、岡村、鎌田、田中、中田、松島、道下、柳田、計9名)
<フィールドワーク>▽平成25年11月2日(土)9:00~13:30
・智頭町マイクロバスで巡回(豊乗寺、木材市場、山形小学校廃校跡、みたき園、石谷家住宅、米原邸、西河克己映画記念館、塩屋出店)
智頭町寺谷町長
地域デザイン研究会平峯理事長
●地域デザイン研究会・平峯理事長の開会挨拶
まちづくりを進めるに際し、地域デザイン研究会では地域、伝統文化、植生、食物等をキーワードに、もう一度まとめ直す必要があるのではないかと大阪でいろんな試みをしているが、新旧の融合がなかなかうまくいかない。前回訪れた智頭町はすでに10年を経て、もっと進んでいるのではないかとの思いで、改めて智頭町を訪問することになった。今回の目的は3点で、①現在の智頭町の地域振興等の取り組みを教えてもらう、②大阪でうまくいかないことについても、智頭町の地区振興協議会の進め方等を関西に落とし込めないか、③智頭町の自然、福祉、まち並みなどを拝見させていただきたい。いろんな話を聞かせていただき、私どもの参考にしたいと思っているので、よろしくお願いしたい。●寺谷町長による挨拶と智頭町の取り組み説明
<地区振興協議会>
集落単位の1/0運動から始まって進化したのが現在。リーダーシップをとっていただいているのは地区振興協議会の方々で、層が厚くなった。
<いよいよ田舎の時代>
智頭町のテーマは「緑の風が吹く疎開のまち」とし、震災等で子育中の人たちが疎開できることをコンセプトとして、「お待たせしました、いよいよ田舎の時代」。高度成長期に地方からは都会に「金の卵」として出ていったが、今では都会には住めないということから、地方に向いた風が吹き出した。智頭町は93%が山林で占める。林業で戦後は非常にお金持ちの町だったが、戦後50年が経過して木材の値が下がり、やっていけない、山を見たくないと変わってきた。
<百人委員会でアイディア練る>
町全体の振興について、町民の皆さんの知恵を借りようと「100人委員会」を設立。教育、林業、農業、福祉等について意見を交わしていただき、その中で思いもつかなかった意見、アイデアに予算をつけることに
した。
智頭町HPより
智頭町HPより<森のようちえん>
東京の若い母親が「緑に囲まれて子育てができる」という一言から某TV局が2年かけて取材、その報道は全国的な話題となり、番組は金賞を受賞。今は「森のようちえん まるたんぼう」として運営されている。園舎を持たず、自由に森と触れあうことを重視している。
<森林セラピー>
「山がお金にならない」から、「山が教育のフィールド」へと変わってきた。ストレス社会で森林セラピーを始めると、大阪などからお客さんが訪れる。
<民泊>
智頭町まるごとを民泊にしようという動きにつながり、現在では40軒程度が始めている。
<疎開保険>
疎開保険を東北大震災の前からスタート。災害があれば智頭町に避難しに来てください。その代り、年間1万円の疎開保険に加入していただき、預かったお金で高齢者が作る「本物の野菜」を町が高く買い取り、加入者に「智頭新鮮組」として送る。また、田植えや稲刈り等を体験してもらう取り組みを行っている。
<移住・定住> 町から出ようとする若者に対して、あるいは町に移住しようとする人に対し、土地は無料で提供するが建物は杉の木で地元の大工で建てるという仕組みをつくっている。移住では、限界集落に3家族移ってきている。その中の若者から、昔あった大麻の栽培を始めたいとの申し出があった。大麻は麻薬という印象があるが、麻であり繊維の利用価値は大きいので町として応援した。このように、進化の中で置き去りにされるものに光を当てる「逆行」に対してもバックアップし、起業化を奨めている。
<大阪との交流>
2012年から大阪駅前の富国生命ビル4階の「森」をテーマとする拠点と組んで、大阪とのパイプづくりを始めた。(=大阪大学・小林教授指導)
<百業学校>
百業講座や百業調査で、地域の課題に取り組む人材を育成する。
今後も地域デザイン研究会の皆さんと固い絆で智頭町の良いところを学んでほしい。智頭町としても、皆さんの良いところを遠慮なく学ばせていただきたい。
左から、谷口町議会議長、山形地区・山郷地区・いざなぎ地区・富沢地区・土師地区各振興協議会 |
●地区振興協議会の活動状況
前回の訪問時にすでに進行していた「日本1/0村おこし運動」(1997~2007)の活動は、息長く継続して行われていたが、当時とは活動形態が大きく変容していた。
前回は町内86ある集落のうち16集落だけで「日本1/0村おこし運動」が行われていたが、集落単位の活動が10年を経過したところから、新たに集落の集合体である地区単位の活動「地区振興協議会」(2008~)の制度が発足。その結果、現在では智頭町の全6地区のうち、町の中心部に位置する智頭地区を除く5地区で活動体である地区振興協議会が立ち上げられ、活動が行われていた。
支援内容は当初2年間が100万円/年、3年目~10年目は50万円/年を限度として運営費を支援している。
◆山形地区振興協議会(一番活動が活発と思われた地区)
人口:1,234人、集落数:12集落、高齢化率:35.25%。設立6年目。
トピックス:地区代表の発言「活動をうまく進めるためには、遊び心を持って活動することが大事」
活動のキーワード:「あるもの見直し」「創造的むかし返り」・・・昔からある良いものを掘り起し今に活かす。旧山形小学校校舎を活用した多彩な活動を実践(宿泊施設等)。
具体的活動:「森のミニデイ」自ら制度設計したデイサービスを立ち上げ実施(5人からスタート)。宅配での孤食ではなく、拠点で一緒に楽しく食べることが大切との理念で実施。
他地域との交流:伊丹市立高校等と交流。
◆山郷地区振興協議会
人口:598人、集落数:6集落・協議会の歴史:設立6年目。10年目の自立を目指して活動している。・トピックス:村落研究会のイベントを誘致し100人規模の民泊を実施。
具体的活動:福原PAでのテント市・有人直売所。旧山郷小学校でのふれあいサロン。農家レストラン。
◆いざなぎ地区振興協議会(地道に出来ることを実施していると感じられた)
人口:1,103名、集落数:17集落、設立3年目。
トピックス:交流情報部会が複数回婚活イベントを実施。成果が出つつある。
具体的活動:安心安全部会(独居&老人のみ60世帯/350世帯の見守り活動)、地域振興部会(農林業体験、小学生の田植え・稲刈り)、交流情報部会(福島県から100名の4泊5日のキャンプ受け入れ)
課題:いざなぎ地区はこれまで「待ち型」だったが、「攻め」の姿勢が必要。
◆富沢地区振興協議会
人口:790人、集落数:9集落。設立1年目。
トピックス:おとなしい人・サラリーマンが多い地区。とはいえ、他地区も協議会を立ち上げている状況を踏まえ、「今でしょ」ということで「無理やり立ち上げた」。
具体的活動:270人規模の夏祭りを実施。(どうにか集まったというレベル)
課題:地区内に仕事(やること)は多くあるが、儲かる仕組みが出来ないので、引き受け手がいない。
◆土師地区振興協議会
人口:1,068人、集落数:20集落。設立1年目。
トピックス:地区内には8,000年前の縄文土器が発掘された枕田遺跡がある。
具体的活動:土師器(埴師)・陶器の復活、森林セラピー事業の推進、マップ作成等。
課題:少子高齢化。最近10年間で200人減少。独居者64世帯(全戸数の20%)、独居高齢者32人(独居全体の半分)・・・見守り等が課題。そんな中、地区住民からは、徐々に「今度は何をすればよいか」との問い合わせは増えているという、前途にやや明かりの見えるコメントもあった。、
■討論概要
※(智):智頭町、(地):地域デザイン研究会
◆真に困っていることは?
(智)・独居・老人世帯の増加、集落運営の継続が困難に
・空き家の増加→居住環境悪化
・雇用:農林業の衰退、必要な仕事はあるが儲からない
◆集落協議会から地区協議会に重心を移した理由は?
(智):集落協を10年やってきて、終了。それを発展させる形で、平成20年より、地区振興協議会でそれぞれの小学校空校舎利用の提案を主にスタート。最初に山形地区、山郷地区がスタートし、順次他の地区も立ち上がった。
◆インフラ関係
(智):町営の「すぎっこバス」および光ファイバーの全所帯設置がある。
智頭町HPより |
◆地区振興協議会に対する支援は?
(智):支援金のほか、人的支援は地区に関係の深い職員を配置、また、全国に公募して、都会から地域おこし協力隊として来てもらっている。3年契約。
◆プロジェクトへの支援は?
(智)・要求型でなく、提案型・協力型の提案を引出し、それを実行していく。でないと長続きしない。これが地区の役割。
・町長の役割は、金を工面すること。総務省などの国の金を結構取ることができている。
・我々は、町内の全集落にこれを説明に回った。要求型はだめですよと。提案して、自分たちも汗をかいてくださいと。
◆池田市の例(地)
池田市で小学校単位で協議会をつくり、補助金を配ったが、うまくいってないところがあった。智頭町との違いは?
(智):智頭町は集落から始め、10年後に地区の取り組みになっている。下地ができていること、都会と田舎の地域性の違いがあるのではないか。地区協議会の方は、苦労されている。なかなかまとまらない。でも、旧小学校施設をどう活用するかというテーマがあるので、みんなの知恵が出てくるのだと思う。
◆新たな産業は?
(智):木の宿場プロジェクトがある。実験として、いままで出荷したことのない人も含めて、間伐材を出荷してもらい、業者がトンあたり3,000円で買い取りチップ化する。智頭町からの補助金2,000円。更に外部からの協力金1,000円、計6,000円が杉小判(地域通過)で支払われる。これは、智頭町内の登録商店で使用可能。
◆サラリーマンと地域活動
(地):富沢地区で、「サラリーマンが多く、地区の活動に積極的に参加する人が少ない」とあるが、我々も共通した問題。時間をかけて説得しまとめていく苦労があると思う。
◆儲かる仕組み
(地):「必要な仕事は多くあるが、儲かる仕組みが出来ていないので、引き受ける人がいない」。これも共通の課題
(智・富沢):富沢地区では、結局老人が地区の面倒を見ている状態。儲けることが必要だが、儲かる仕事は今のところ見当たらないし、そもそも、やる人がいない。そんな中でも、遊び心で何とか参加してくれないかと説得しようとしている。
◆女性の参加
(地):女性が参加すると元気になるということがある。
(智・土師):介護に関しても、実際出来る人が少ない中で、男女の垣根を取っ払って考えることが必要と考えている。
(議長):いざなぎ地区大背の集落で、年寄りとご婦人方が、しょっちゅう集まって、議論している。そういう意味で、女性の役割は大きい。
◆各地区間の交流は?
(智):各地区のメンバーが定期的に集まって、活動内容をプレゼンしたり、討論したりしている。その中で刺激を受けたり、アドバイザーの方からも、ご意見をいただいたりしている。
◆議会の立場
(地):谷口議長もおられるが、議員の立場でどのように考えられているか。
(議長):基本的には、いざなぎ地区振興協議会のメンバーなので地区のみなさんと一緒に活動している。
◆キーワード
(地):11年前に来たとき、1/0運動は新鮮に感じた。その後発展しているので、次のキーワードを見つければいいと思う。「森」とか「智頭」とか。
◆アドバイス
(町長):私たちとしては、智頭町はこうしたらいいのではないかというような、アドバイスを是非ともいただきたい。大阪へも交流に行っているので、引き続き地デ研と交流していきたい。
感想
昨年、町内6小学校が1校に統合され、廃校になった旧山形小学校を拠点とする。同小学校は昭和17年に建てられた立派な2階建て木造校舎で、平成17年に国の有形文化財に登録された。80m一直線の広い廊下を利用して、手巻き寿司づくりをしたこともあるとのこと。
協議会はこの校舎と隣接する旧中学校用地を使用し、好きなこと・楽しいことを日々活動に取り入れ、活動メンバーの「大人の遊び場」になっている。また、京都大学デザイン学大学院の智頭町山形地区サテライトオフィスがあり、学生たちが泊まれるようになっている。
キーパーソンとして協議会立ち上げから尽力しているのは、元智頭町企画課長。地区住民の協議会参加率は10~20%。参加しない住民をいかに取り入れるかが課題と感じた。
智頭町内をフィールドワーク
<富乗寺(ぶじょうじ)>
樹齢600年の杉の木が元気だった。大師堂は珍しい茅葺きの堂宇。
<みたき園>
寺谷町長が経営する山菜料理店(フィールド)。ポンプ揚水する人工の滝は町長のこだわりだと、11年前に聞いたことを思い出した。とても寒くて冷たい山菜料理の記憶があったが、ほうき掃きのあとのある小径はすがすがしかった。水出しコーヒー450円をはじめここの商品価格は都会とまっこう対向姿勢。町内の稼ぎ頭であるゆえんか。
<石谷家住宅>
参勤交代の宿場町「智頭宿」で因幡街道に面する敷地面積3000坪、部屋数40余りの大規模近代木造建造物。17世紀末ごろに鳥取城下から移り住んだ山林事業家・石谷家の居所兼事業拠点で、大正8年に着工し、昭和初期までかかったという。土間は高さ14mの吹き抜け空間で、赤松の巨木の梁、ケヤキの柱、栗の一枚ものの腰板をはじめ、贅を尽くし極めた木造だ。平成21年12月に国指定の重要文化財に指定。11年前は一般公開して日も浅く、生活臭を感じる部屋もあった。欄間・掛軸・置物・ふすま絵など、コレクションの展示説明文もなかったからか、今回はさりげなく飾られている美術品に目を見張った。食事・喫茶室もできていて、庭園を見ながらのキーマカレー700円、そば500円也にはお得感があった。
■参加者の感想・意見・提案
※この項は智頭町へ送った感想。意見・提案の要約
◆地域振興と産業振興
産業振興よりも地域振興に重点をおいた施策を推進している姿勢が今回改めて確認できた。しかし、地域振興と合わせて、少しでも「自立」に繋がる産業振興を積極的に行う施策が必要と痛感した。
地域振興(地域共同体の活性化)を土台として、新しい産業振興の芽も出てくる可能性がある。
◆地区振興協議会
地区振興協議会は互助や元気な「人」のネットワークを活かした地域振興。町長、議員、職員、地域住民の意気込みと、コーディネート力が発揮されているが、小学校跡地活用をテーマにした地域活動の活性化だけでは限界があるように思う。やはり、そこに生業があり、若者が新世帯を築けるようにしてこその活性化である。智頭町で経済的に自立できれば、子、孫が戻ってきたり、移住者が増える可能性は高い。
地区振興協議会は好きなこと楽しいことを日々活動に取り入れ、活動メンバーの「大人の遊び場」として活用されているが、「うちわ」だけの場になっていないか? 地区住民の協議会参加率(現状10~20%)を高めるための工夫として、「人に奉仕できる場を提供する」「頼られていると感じるスチュエーションをつくる」ことを考えれば、多くの住民が参加する仕組みを再構築できるのではないか。
◆水の販売
水が豊かで道路の利便性もよくなったことを活かして、水販売ビジネスは成立しないか。
◆木工品
山形地区の杉材で作られた木製ベッド、椅子、机を規格組立キッドとしてインターネット販売できないか。また、燻製装置は戸建住宅用にコンパクト化して売れないか。
◆林業
農業や林業(林業で昔は金持ちだった)の後継者が育つよう、稼げる産業にしなければならない。林業ではいま国産材を活用する仕組みが進められているが、寺谷町長の「お待たせしました 田舎の出番です」をぜひ林業に活かしてほしい。
◆宿場町
栄えた当時の町並みを視認できる資料に欠ける。参勤交代の宿場町、古代の土器等から歴史を体験できる仕掛け、かつての町並みのビジュアル的な資料を見せる必要があるのではないか。
◆陶器
智頭駅前の観光案内所では、旧家?の蔵から出品された陶器が販売されている。それらの出自を知らない人は、なぜ古い陶器が売られているのか、まったくわからない。小さいものでも、それを説明する表示が必要だ。「陶器市」を開くなど、観光資源に生かせないか。
◆豊乗寺
豊乗寺は京都の名刹とかわらぬ雰囲気を持った空間を保っている。樹齢600年の大杉をパワースポットとして売り出す仕掛けを考えてはどうか。ただし、寺へのアクセス道をわかりやすくする、大杉に触れるためのルートを少し整える必要がある。また、国宝を「いつでも見られる」ようにすれば、さらに観光資源としての優位性を確保できる。
◆石谷家住宅
石谷家住宅は、建物だけでなく、展示装飾品も含めた「空間」として訴求したほうが、人々の興味を引くと思う(参勤交代の宿場町・智頭宿、因幡街道)。また、レストランは庭園を見渡せる絶好のロケーションで価格も安く魅力的、もっとPRすべき。
石谷家の「お宝おじさん遭遇」
■300年前の茶器がつなげてくれた11年前のご縁
その地域の陶磁器を観て、お小遣いの範囲で購入するのが一番の楽しみです。智頭町総合案内所の骨董品のコーナーで手頃に茶道具に使えそうな素敵なお皿をゲット。
職員:「このあたりは蔵が取り壊しになるとたくさん江戸時代の陶磁器が出ましてそれを鑑定の資格を持った方が手入れしてこちらに並べています。実はこの案内所でこのコーナーが一番売れるんです」
私:「すごく安く買えて嬉しかったです。私が購入したお茶碗の由来はご存じですか」
職員:「ちょっと待ってくださいね。その方は観光ボランティアもされているので聞いてみます」
そうして福本昭夫氏(写真左)とお出会いさせていただくことになりました。この方は石谷家の留守居役のご子息で石谷家に住んでいて、11年前に地域デザイン研究会が智頭町を訪ねたときに石谷家の案内をしてくださったボランティアガイドの方だったのです。皆さんの許可を得て、松島さんと私は福本氏のご自宅を訪問、アトリエ、蔵とたくさんお宝を拝見、ご丁寧に説明いただきました。素敵なお雛様の茶椀を賜り、有意義な時間を過ごさせていただき大満足。ちなみに私が案内所で購入した皿は300年前のものでした。
河内屋の「八千草薫さん」
■河内屋旅館の美人女将
今回のお宿は中心地にある河内屋旅館さん。八千草薫似の上品な女将さんに興味深々。地デ研:「鳥取になるのにどうして屋号が河内屋さんなんですか? 女将さん綺麗ですね。八千草薫さんにソックリですね」女将さん:「とんでもない(笑)大阪に憧れて河内屋にしました。築390年です。私は鳥取の境港の出身で女優の司葉子さんと同級生です。主人の仕事で各地転々としてしまして、主人の姉がしていたこの旅館を継ぐことになりました。このあたりはとても裕福な人が多く、鳥取駅前の土地は全部このあたりの人の持ち物なんですよ」 それから司葉子さん、八千草薫さんの話に花が咲きました。調べますと司葉子さん79歳、八千草薫さん82歳でした。 余談ですが八千草薫さんは誕生日が1月6日で、私と同じでびっくりしました。 (文:田中賀鶴代)
■智頭町現地シンポジウムに参加して
私にとっては「智頭」という名前は大学時代に実習で鳥取に行き、鳥取県の東南端にあるということを知った時から名前に興味を持っていました。その後、智頭急行という三セクの鉄道会社ができたことが加わりました。そして今回智頭へ行くプログラムなので早速応募しました。
初日のシンポジウムで、町長さん各地域の協議会の皆さんが楽しそうにいろいろな取組を報告していただいたのを聞いて、初めて「智頭」の魅力はここにあるのだということがわかりました。旅であちこち行きますが、外から見ているだけでは町の一面しかわかりません。町の人の話を聞いているうちにそこの歴史、生活、苦労、楽しみが伝わって「ああ、町に来たな」と実感します。
2日目の現地を回ってまたそれにふくらみが加わり、漸く智頭のイメージができたかなと思えるようになりました。短い期間で「町」を体感するのは無理かもしれませんが、中身の濃い旅でした。
智頭の町づくりについて、池田市の試み(小学校区単位の地域コミュニティー推進協議会)と似ていたので、いくつかの質問をしました。智頭の場合、小学校の統合に際し廃校の活用をどうするかを課題の軸にしているとの回答があり、地域の人々のまとまりをもって活力を引き出して集約できているようでした。この辺は地域に差があり、相当進んでいるところ、これからのところがありました。どうしても地域の対抗心が出たり、お金の方に関心がいってしまったりする危険性はありますが、地域の良いリーダーとまとまりが今後ますます重要になると思います。
産業振興と地域振興の点については、地方自治体の役割として率先経済振興を引っ張る(公共事業中心に)というのは、ますます財政悪化を招くのみで、その体力を持たないのが現実と思います。その意味で町長は「役所に期待せず、自分たちでやりなさい」と言いにくいことを言ってそれを政策にしているのは大きな実験(この点では池田市も同じ)で、注目に値すると思います。ひょっとすると、日本国中に広がる、府県、国自体もそうなる可能性が今の行政体にはあります。
今回残念なのは何も残してこれなかったことです。何かボランティアとしてできればよかったなと思います。地デ研の皆様今後ともよろしくお願いします。(文:中田 智)