河南町地域公共交通調査・研究パートナーシップ事業

<平成25年度経過報告> 地域公共交通基本計画案策定へ

 平成21年度から開始した「河南町地域公共交通調査・研究パートナーシップ事業」は、25年度に発足した同町の地域公共交通検討会議を通して、このほど「河南町地域公共交通基本計画案」が策定された。来年初めの実証実験に向けて、今後は住民との協働による計画具体化作業の段階に入る。25年度の調査・研究経過と基本計画案の概要を紹介する。(文責:鎌田徹)

 河南町は平成25年9月末で人口1万6,000人、6,300所帯の自然豊かな町。そこに、昭和45年から入居が始まった大宝住宅団地、平成5年から入居が始まったさくら坂住宅団地が出現した。

 町では、新しい住宅団地を中心として、交通問題が顕著になってきた。大宝地区では高齢化に伴い、クルマを利用できない世代が増え、路線バスの改善が望まれるようになり、さくら坂・鈴美台地区では、あまりにもバスサービスのレベルが低いため、不満が蓄積するようになってきた。

 平成21年度に町からの要請を受け、町と地域デザイン研究会とのパートナーシップ事業としてスタートした。このパートナーシップ事業は委託事業とは異なり、役割分担を含む協定書により行われる。基本的には役所は経費の負担と情報提供、NPOは事業の推進、情報収集、情報提供などを行う。現在までのところ、うまく機能していると思われる。

■地域公共交通検討会議が発足

 河南町の地域公共交通をいかに改善・構築していくかということを検討するため、平成25年7月26日、河南町地域公共交通検討会議が発足した。委員は学識経験者2名(平峯氏=検討会会長、小川氏)、住民の代表(区長会会長)1名、地域福祉の推進に関わる団体の代表1名、交通事業者2名(金剛バス、近鉄バス)、町および関係行政機関(近畿運輸局、大阪府、河南町)、公募委員3名、その他町長が必要と認める者(創る会会長)で構成された。

 以後4回の検討会議が実施され、第4回検討会議において河南町地域公共交通基本計画案が策定された。その概要は以下の通り。

1.基本方針

  1. 大阪都市圏の郊外における公共交通の平均的サービス水準を確保する

  2. 区域特性に応じた最適な公共交通サービスを、住民、企業、交通事業者、行政などの協働・連携のもとに実現する

  3. 住民などが主体となり、地域公共交通を維持する(利用者である住民が、自分たちの交通として、計画に参画し、利用促進をすることによって地域公共交通を維持する)

2.バス路線の位置づけ

 バス路線を次の3つの機能別に施策を展開

  1. 駅直結の路線(利用が多く、まちづくりの上で交通の主軸、既存路線バス)→住民、行政とも利用促進に向けた取り組みを行う。事業者は利便性に配慮した運営を行う)

  2. 町内循環路線(利用が比較的見込まれ、まちづくりの上で必要な路線、買い物など)→既存の「やまなみバス」(福祉バス)を、需要に応じて再編する。(後述)

  3. デマンド型路線(利用者が一部の区域、もしくは一部の住民に限られる路線やエリア)→需要は少ないが、必要に応じて配車するデマンド系バスを検討する。

3.計画案の要件

  1. 住民主体の取り組み
     住民が積極的に関わることが最も大切。計画案への参画、利用促進への取り組みなど。

  2. 継続と評価の重要性


     計画を立て、実行する、それを評価し、また実行する。PDCAのサイクルを回す。

  3. 既存資源の有効活用-実現可能なことから着手する
     現在稼働している「やまなみバス」(福祉バス)を再編・有効活用して循環バスを導入することは実現可能であり、これの実現を目指す。

4.町内循環型路線の計画案(右図)

 21年度に行われたアンケート調査結果や、年齢層の分布による需要状況を見て、やまなみバスの活用を基本とした「循環バス計画」が示された。

<計画の骨子>

  1. 需要の見込まれるさくら坂・鈴美台地区と町の中心地区、商業施設を結ぶ路線を基本。北部ルートと南部ルート。

  2. 路線バスとの乗換拠点を設ける。

  3. 運行日は原則として毎日。

  4. 運行間隔は30分が望ましい。

  5. 運行時間帯は8時台から19時台を基本とする。

  6. 料金は100円。

5.今後のスケジュール

  1. 現行のやまなみバス委託契約がH27年1月末までであることから、切れ目なくバスサービスを継続するためには、27年2月に実証実験を開始する必要がある。

  2. 住民参画を確保する必要がある。計画案はあくまで案、ルート、バス停、ダイヤ、料金等すべてに渡って、住民の意見を聞き、住民と協働で計画を練る必要がある。

  3. 有料となれば、道路運送法に基づく所定の手続きが必要で、そのための行政との調整が必要。 これらを踏まえると、非常にタイトなスケジュールになるが、関係者一丸となって推進する必要がある。

H21年度~H24年度までの経過

H21年度

全町所帯の1/3にあたる2000所帯にアンケートを実施。990所帯からの回答。現状の公共交通に対する不満とその充実を強く訴えるものであった。

H22年度

全町民を対象としたシンポジウムの開催。その中で、さくら坂地区から「是非とも当地区でコミュニティバスなどの地公共域交通改善に取り組みたい」との意向表明。その後、さくら坂地区、大宝地区での意見交換会の開催。

H23年度

さくら坂・鈴美台公共交通を話し合う住民の集い(ミニシンポジウム)が持たれ、さくら坂・鈴美台地区ワークショップが持たれた。「地域福祉バスを再編して買い物や通学に使えるようにするにはどうするか」など多くの意見が取り交わされた。さくら坂・鈴美台地区に於いて、「さくら坂・鈴美台地区の地域公共交通を創る会」が発足した。

H24年度

さくら坂・鈴美台地区に於いて「さくら坂・鈴美台地区の地域公共交通を創る会」が主催し、河南町・地域デザイン研究会パートナーシップ事業から支援し、実験バスが実施された。期間は10月の1ヶ月間。地域住民が主体となり、企画立案、実施された意義は大きい。実験のあと、アンケートが実施され、多くの貴重な資料が得られた。


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