悠悠録

科学者の欺瞞か?怠慢か?

平峯 悠

 最近国民的関心の強い事柄としては、「STAP細胞疑惑」「南海トラフ三連動による巨大地震・津波想定」「福島原発の放射能汚染と帰還問題」「CO2による地球温暖化」などがあげられよう。これらは全て“科学者”が大きく関わる問題である。科学(自然科学)とは、自然における諸対象の法則性を明らかにする学問で、私たち技術者は、その科学の知見を実地に応用し自然の事物を改変・加工して人間生活に役立てることを使命としている。

 まず巨大地震・津波想定について、政府が南海トラフ巨大地震の被害想定を発表するとそれを上回る西日本の被害想定が出され32万人の死者、津波の高さはさらに2m大きくなるという予想が新聞に躍る。シミュレーションの結果というが、そもそも本来「揺らぎ」の多い、しかも人智の及ばないことが多い地球を対象に、巨大想定を出すことが科学者の態度と言えるのか。技術者は具体的な堤防や建築物、土地利用の在り方を示そうと努力しているが、現在の想定等では責任は持てない。私たち人類は過去から地球の恵みと怖さをこれまで真摯に受け入れ、対処してきた。いつ何処で起こるかもわからない地震に対し、危機を煽り責任逃れに見える地震学者の言動に慌てふためくことはしたくない。地球に住んでいる以上、何千年の間には何かが起こることくらいは私達みんな心の中では承知している。

 いまだ解決の目途の立たない福島原発の最大の問題は、放射線や原子力に関わる科学者や学会の真摯な発言が聞こえないことである。人間生活と放射線については不明なことは多く、加えて日本人は放射能に過剰反応するが、自然界から取り出した放射線物質は医学等の分野で多大な貢献をしている。科学者は放射線と人間の健康、放射能を封じ込める科学的方策、水・空気・土の希釈能力、除染効果、国際的な安全基準など現時点で考えられる知見や科学的成果を明らかにすべきである。原子力に関しては、まさに怠慢としか言いようがない。さらに原発問題の厄介なのは科学者の中に主義主張が入り込むことである。

 地球温暖化についてICCP(気候変動に関する政府間パネル)は、CO2により地球温暖化が進み21世末には全世界で大きな影響が出ると警告する。日本でもCO2削減が正義のように叫ばれている。地球が温暖化しているか寒冷化に向かっているのかの学説が分かれており、仮にCO2が温暖化の要因であったとしても中国や発展途上国などの排出が桁外れに多い。また化石燃料が温暖化の原因とすれば原子力発電はCO2を排出しないエネルギー源である。科学者もいい加減なら一般の人たちも誤魔化している。

 小保方さんのSTAP細胞疑惑は検証中なので論評できないが、自然界の複雑な事象に対し、科学的根拠が完全に示されていないからといって切り捨てることも一方的に信じることも正しくない。私達技術者は“これまでの経験をもとに正しく疑い、疑った上で納得すれば対策を提示する”ということであろう。一方、真の科学者というのは謙虚であり、わからないことは分からないという。疑り深いから歯切れが悪くなり、従ってマスコミ受けはしない。マスコミ界から呼ばれないのが真の科学者であるとすると、正しい科学的知見をどのようにして聞き取ればよいのか迷ってしまう。科学者の欺瞞や怠慢は許されない。律儀で真面目な日本の技術者を惑わすことがないよう願う。


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