REPORT

調査研究意見交換会を開催

 第1回調査研究意見交換会が2月24日に開催され、地デ研会員11人が参加した。会員が個々に調査・研究に取り組んでいる研究事例を紹介してもらい、まちづくりへの活かし方について意見交換する企画で、今回は石塚裕子氏(大阪大学特任助教)と平峯悠氏(地域デザイン研究会理事長)が話題提供を行った。(文責:大戸修二、鎌田徹)

■新しい歩行空間の創造は可能か

 報告者:平峯悠氏(地域デザイン研究会理事長)

○区域内と区域外の結びつけを

 平峯氏は、近畿建設協会支援事業で取り組む「地域遺伝子等を活用した新しい歩行空間づくり」調査研究の成果について、枚方市、池田市、豊中市の事例を挙げて解説した。その中で戦前・戦後に開発した住宅団地区域内では、素晴らしい公共歩行空間が形成されていることを強調。同様に旧集落区域では、文化・伝統を継承する生活の中に歩行空間が存在していることを紹介した。

 広域的に見ると、「それら(住宅団地、集落)がモザイク状に点在しているだけ」とも指摘。区域外との結びつけ、広域化への道路空間・歩行空間再生の必要性を強調した。課題として「生活面で歩くことへの意識がない」「地域全体の計画性が望めない」などと現状を指摘。一方で、「集落内道路と集落問題に注目し、それを再評価することで、画一的でない都市計画手法の醸成にもつながる」と今後への可能性に触れた。

○意見交換メモ


■広域長期避難者にまちづくりができることは何か

 報告者:石塚裕子氏(大阪大学未来戦略機構第五部門 未来共生イノベーター博士課程プログラム特任助教)

〇「計画性ある空間づくり」の大切さを知る

 石塚さんは、東日本大震災以降に関わってきた「広域長期避難者」への支援活動2件について話題提供した。その1つが、福島県いわき市のいわきNT仮設住宅地域での活動で、中央台暮らしサポートセンターの立ち上げ支援に関わるなど、2カ月に1回程度は神戸から現地を訪れている。センターの拠点がテント構造の「パオ広場」で、2011年9月のオープンから週末イベントを開催、今年3月以降の午前は高齢者等の憩いの空間、午後は子供達の放課後クラブに利用している。有効活用されている一方で、「避難者以外の住民が来ない」と石塚さん。地元住民と避難者との交流の難しさを感じている。

 2012年6月には、被災者支援にあたる約40団体が「3.11被災者を支援するいわき連絡協議会(愛称:みんぷく)」を設立。子供支援、健康・生きがい、復興・しごと、コミュニティ、防災ツアーの5部会を通したネットワークづくりが始まった。この中では、現行の防災ツアーをユニバーサル・ツーリズムへと発展できないかと提案中という。支援活動を通して感じているのが「計画性のある空間づくり」の大切さ。今回の意見交換会では、「いざという時に備えた、空間づくりの手法を考えられないだろうか」と問いかけた。

 もう1つが、都市プランナー・石東直子さんらが2011年4月、神戸で設立した「暮らしサポート隊」での支援活動。東日本大震災の広域長期避難者は神戸にも数多く、様々なストレスを抱える避難者に、いやし空間を提供しようという取り組みが「みちのくだんわ室」の開設である。避難者同士の交流を重点に毎月1回開催しており、参加者は2013年12月までに延べ1,000人を超えたという。

 自らも編集に携わる機関紙「みちのく談話室だより」は発刊からすでに25号。地元に戻る避難者が増えている中で、最近は避難者が故郷・福島に戻った後の生活状況をリアルな語り記事で掲載している。発刊1年後には、避難者22人の震災から1年の軌跡をまとめた冊子「1年の記憶」(3,000円)を出版。3年が経過する中で第2弾の記録誌、その人たちのその後をまとめた「避難者の今」を近く出版するという。

 東日本大震災・福島第一原発事故にともなう避難には、強制避難、自主避難、生活内避難などの形態がある。避難の長期化・多様化が進む中で石塚さんは、社会が関心を持ち続けるための「避難の見える化」の必要性を強調した。

〇意見交換メモ


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