REPORT
会員が抱える「まちづくり課題」
フリートーク「よってたかって議論」の要約
5月31日に行われた総会の後に、フリートーク「会員が抱えるまちづくり課題報告~『よってたかって議論』」が開催された。課題提供者は平峯悠、村橋正武、友田研也、松島清、前田秋夫、岡村隆正、道下弘子、田中賀鶴代の各氏で、その要約を掲載する。(文責:岡村隆正、鎌田徹)
■私たちはこれまで何をしてきたか! これからは何を目指していくのか!(平峯悠)
「資料」として、1960年代から2000年代までの各10年間の法制度等、世相、社会の課題、都市計画・まちづくりの考え方、国の基本方針別の年表が提示された。
1960年代にローマクラブが出した「成長の限界」説は未だ切実な問題であるが、どの時代も目の前の課題解決に追われて走ってきた。
1970年代に公害が顕在化し、1980年代は転機にはならず、クルマの使い方などが十分議論されず、総合交通体系もできなかった。
1990年代は、バブル経済が崩壊し、目標を見失った。成長しなくてよい社会などない。
2000年代になり、人口減、少子高齢社会が現実的となり、人々が幸せに暮らしていける都市・地域づくりについて、車・公共交通の扱い、公共施設の配置論、工場支援、人が住むところなど、新しい都市論として考えていく必要がある。
■これからの都市計画の考え方<空間概念の取り扱い>(村橋正武)
今までの都市計画の考え方は、都市空間のあり方(線引き、土地利用と都市施設のバランス論など)に重きが置かれたが、現在、議論されている機能論では、経済的な都市活力を増進することしか考えられていない。空間論は顧みられていないが、これでいいのか。
都市計画は本来3次元の計画であるべき。しかし今までは2次元で表現される計画であった。空間については、容積率、建蔽率等で規制してきたが、(高度地区が廃止されたこともあり)タワー型マンションによる無秩序で貧しい景観を生み、いずれの都市も同じ顔になっている。将来に向けて財産となるような都市づくりの視点を欠いている。
都市のヒートアイランド現象緩和には風の道の確保が有効だが、都市計画上何の配慮もしていない。また都市機能の導入整備に焦点を当てた都市再生緊急措置法は言わば東京の容積率緩和のためにできた法律と言ってよい。
<討論>
人口減少するなかで、考えを抜本的に変えなければならない。
本来は建築と土木が一体となって、都市空間を考えるべきだが、建築は単体でしか考えなくなった。今後は建築と土木の相互乗り入れ的な取組が望まれる。
■都市再生に関わる検討について(友田研也)
<提案>
様々な課題の中でも、「豊かな郊外居住」について考えたい。例えば、郊外で開発された大規模ニュータウンの拠点の魅力を高めることなどが必要になると思う。
<討論>
東大阪新都心構想は未達成で、市の思いも希薄。これではできない。
日本では、都市内の農地は地主が強く、ままならなかったが、郊外丘陵部は開発しやすかった。イギリスでは都会の近くでの田舎暮らしがあこがれとなり、職住ともにそろった(ベッドタウンでないニュータウン)が開発された。都会から田舎に移り住むという価値観が日本人にあっただろうか。
あるものを活かす。例えば、地域の拠点に住んでいる人の能力を活かす場をつくる。使われていない公園を家庭菜園に変えることもいいのではないか。・線引きの上に地区計画をかぶせるという姑息なやり方は、都市計画でなく塗紙計画だ。都市計画をできる人がきちんとやるべき。
線引き、農振農用地など、今までの規制をいったん外して考えるべき。
市町村は都市計画をまともに考えていない。人材も問題だろう。
■『うめきた全体のまちづくり』と歩行者ネットワークのあり方について(松島 清)
<提案>
グランフロント大阪(GFO)では、JR大阪駅との接続が、2階デッキと地下レベルでの接続に限られ、南館と北館の間も、地上レベルでの歩行者ネットワークが分断されている。デッキレベルでの歩行者ネットワーク中心の計画となっている。2期事業では緑中心の計画となるので、地上での歩行者動線が必要と思う。また、2階デッキだけでは歩行者容量を捌くには問題があると思う。
<討論>
元々の計画では先行開発区域は上空・地上・地下の3層の動線が計画されていたが、府警の歩車分離方針により、地上が実現されていない。⇒人間の本能からは地上歩行がベース。
2期エリアが緑中心の整備なら、デッキは必要最小限にし、地上歩行を主にすべき。人工地盤だけを動線にするのはもってのほかだ。
■泉北高速鉄道の利用者と運賃(前田秋夫)
「資料」として、「乗り継ぎケーススタディ」を提示し、「利用者は何を基準にルートを選ぶか」について提案した。
<提案>
提案料金(泉北線と南海高野線中百舌鳥乗継が現行より80円割引)でも、目的地(出発地)が難波以外では、中百舌鳥乗り換え地下鉄利用の方が100円程度安く、時間差は数分程度。速達性、経済性による選択が効くのは、難波~泉北NTのみ。これは現行も同じ。難波以外の地下鉄駅が目的地(出発地)なら、中百舌鳥で地下鉄乗り換えがなおも有利。しかもこの割引は定期には適用されない。
提案料金が実現すれば、泉北・南海の乗継ふつう券利用者にメリットがある。この条件下で、どの程度の乗客移動、乗客増は期待できるか。
通学定期の割引については効果あり。
<討論>
このような料金変更は稀なので、予測と実際を比較できるよい機会である。
■市による総合計画のあり方(岡村隆正)
「資料」として、「市による総合計画のあり方」についての課題や提案などを示し、必要論を含めて参加者から考えを聞いた。
<討論>
なぜ廃止になったか理解できない。市の現状の分析、将来予測をし、進む方向を示した経営方針のようなもので、これからも必要である。
総計は、市の職員、議員にも勉強材料になる。
府の計画は、現在施策ごとのビジョンになっているが、全体をつなぐものが必要。
府のグランドデザインは、そうなったらいいなというもので、現状の分析、将来予測がない。⇒現状分析、将来予測はあるが、わかりやすいものにするため、省かれている⇒省くべきでない
専門家が議論してつくったものでなく、事務屋の作文ではいかがなものか。⇒専門性の否定は許されない。
大学人で論じる人がいなくなったのも大きな原因だろう。
■低所得者住宅のあり方(岡村隆正)
<提案>
府営住宅、市営住宅とも府下で偏在(貝塚市、泉佐野市は同規模他市の2~3倍)
府は府営住宅の市への移管を進めているが、偏在是正が先ではないか。
建物の大量更新が喫緊の課題となり、問題が顕在化。・高齢・単身者が半数以上。⇒福祉施策との役割分担←そもそも低所得者に対する社会保障のあり方。
公共がハードをどこまで持つべきか⇒民間との役割分担+ソフト施策:家賃補助、民間建物の借り上げ。
■責任はどこにある? 災害・危機管理から考える(道下弘子)
「資料」として、紀伊半島大水害の事例(直轄のみ)を取り上げ、問題点、課題、提案などを示した。
元に戻すのが災害復旧の基本というのは知恵がない。
居住権、所有権が強すぎ、危険な遠隔地の集落でも、それを安全にするために莫大な費用を投入する。本来、危険な地区には居住しないようさせるのが行政の役割。土地所有者も権利が大きすぎ、被災地に戻ることばかり主張し、災害については自己責任がまったくない。災害危険度が明らかに高い地区は“元に戻さず”に整備すべき。国土保全に意味のある投資を優先し、個人の生活補償は限度額を決めて、移住も選択すべき。
■おもてなし地域活性化プロデュース(2009~2014現在)(田中賀鶴代)
「資料」として「ひこね吉本新喜劇」「とんだマルシェ」「高槻・とんだ酒金賞酒を愛でる会」など、自身が関わってきた地域活性化プロデュース(2009年~2014年)事例を通した課題や提案を示した。
<提案>
「真心をもって、地域活性化をなす」(もってなす)のおもてなし地域活性化をご提案します。素晴らしいハード面を活かし続けるソフト面を提案していく。
地元だけではアイデアが枯渇したりパワーがなくなったりするのをよそ者の外部コーディネイターとして常に新たしい刺激と進化をご提案続けその地域オリジナルの文化と芸術を作り続けるお手伝いがしたいと思っている。
<討論>
行政からの援助があると活動に制約がでる。⇒行政の限界(公平、公正)
いくつか経験をさせて頂き地元の実行委員会が中心となりそれを行政がフォローする形が継続するし、ベストのように感じている。
「満員は最大の演出がモットーです」:人や組織(例えば交通とエンターテーメントと大学と地元物産など)をつなぎ、それぞれのできることをうまく発揮させるようにプロデュースして、とにかく満員にし続けることが最大の演出になり地域内も実行員会も外部もなんだか盛り上がっているように感じるもので、その活動を今後も継続したいというエネルギーになるものだと実感している。