主張

泉北の明日は

前田秋夫

 平成26年7月1日、大阪府等の南海電鉄への株の売却に伴い「第三セクター 大阪府都市開発株式会社」は「南海電鉄グループ 泉北高速鉄道株式会社」として新しいスタートを切った。

 主な事業内容は、これまでと同じ「泉北高速鉄道事業」と「東大阪・北大阪物流事業」である。 泉北高速鉄道は、大阪府の開発する泉北ニュータウンの建設に合わせ、昭和46年に中百舌鳥~泉ヶ丘7.6㎞、48年に~栂・美木多2.4㎞、52年に~光明池1.9㎞と営業開始し、平成7年にURの開発するトリヴェール和泉のために延伸した2.3㎞を合わせた営業キロ14.3㎞のニュータウン鉄道である。旅客輸送人員は、平成7年の6万人/年をピークに、ニュータウンの少子高齢化の進展に伴い減少し、平成24年度は20%減の4.8千万人/年となっている。

 鉄道にとって「安全・安心」は最重要課題である。しかし「安定」も重要な課題である。この「安定」の主要要素である「運賃収入」という視点で、泉北高速鉄道の明日について考えてみる。 今回の株主変更に際し、主な「泉北高速鉄道の利便性向上策」として、下記の2つの約束が提案されている。

  1. 乗継割引の拡大

    • 乗継割引を現行の一律20円から一律100円まで拡大(利用者実質負担80円値下げ)最低10年継続、平成26年度内を目途に実施

    • 年間対象利用者数 約710万人(利用者全体の約14%)

  2. 通学定期割引率の拡大

    • 中百舌鳥~和泉中央の通学定期割引率を約60%から70%に拡大 (利用者実質負担約25%値下げ)最低10年継続、平成26年度内を目途に実施

    • 年間対象利用者数約932万人(年間利用者数の約19%)

 この約束の年度内実施に向け、駅務機器の改修・スルッと関西への対応等精力的に取り組んでいる。

 これらの利便性向上策の実施により、運賃は泉ヶ丘~難波(540円→460円)となり、利用者の大幅な負担軽減となる。これにより難波等への買い物客の増、他社線(例えば阪和線)との駅勢圏の変化等により利用者増が期待できる。

 逆に運賃収入は上記の割引実施により、5%強の減収が想定される。

 次に「泉北ニュータウン」全体でみると、少子高齢化の急速な進展により  堺市の予測では、今後20年で30%を超える人口減少となっている。

 明るい材料としては、ニュータウンの活性化に向けた積極的な取り組みが実施されおり、

  1. 近畿大学医学部・付属病院の泉ヶ丘地区への誘致

  2. 和泉中央地区への大型商業施設(ららぽーと和泉・コストコ)の誘致

  3. 南海グループによる泉ヶ丘地区活性化への取り組み

  4. 私立高校の泉ヶ丘地区での開校

  5. 公的賃貸住宅の再生などが進展している。

 「運賃収入」という点では、減収内容は明確であり、増収内容は不明確なため、かなり厳しいといえる。これを克服するためには、「泉北ニュータウンの活性化」に地元・行政・鉄道事業者が一体となって、前向きに取り組み、その取り組みが鉄道にとってプラスになるよう努力することが重要である。もちろん南海グループ全体としての「鉄道運営の効率化」への取り組みも重要であることは、言うまでもない。

 これらの取り組みが実を結んでこそ「泉北の明日は」あるといえる。


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