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釜石・大槌大学プロジェクトに参加して

阪神電気鉄道 不動産事業本部 顧問 立間康裕

  大学や企業の様々な関係者による講座と地域との意見交換会の場である大学プロジェクト。昨年8月に「夏期集中講座」として始まったが、今年度は復興庁の「心の復興事業」として採択を受けたため、組織や期間も充実させて行われている。この中で夏期集中講座は、8月19日~26日の間、釜石市内や大槌町の各地で講座や報告会、イベントなどが開催され、地域との交流が行われた。私も20日から24日まで参加し、講座の進行や「市民俳句の会」を担当し、期間中や帰路で被災地の現状を視察して来たので簡単に報告する。

◆「釜石・大槌大学プロジェクト」の概要

  • 期間:平成27年7月21日~平成28年2月末(開校式:7月21日)

  • 主催者:NPO法人@リアスNPOサポートセンター

  • 共催:岩手県沿岸広域振興局、NPO法人神戸町づくり研究所、など

  • その他:校長(佐々木和延局長)、副校長(室崎益輝先生)、参加大学(京都大学防災研究所、神戸大学、長岡造形大学、甲南女子大学、岩手大学など)、参加企業(神戸電鉄、三陸鉄道、阪神電気鉄道など)

   釜石氏周辺では、南リアス線が釜石駅から(南へ)大船渡市盛駅までこの春に開通し、JR山田線の復旧も決まるなど鉄道への期待が膨らんでいる。そこで、弊社阪神として「阪神淡路大震災からの復興と沿線活性化の取り組み」という内容で、復旧においての課題やその後の利用者減少に対する取り組み事例などを紹介した。地域状況や被害の内容も異なるが、駅特性の活用や地域との連携手法などは参考になったのではないかと思っている。


市民俳句の会(天神仮設の談話室にて)
 

大槌町の市街地(城山から)

陸前高田の市街地(今泉地区の上部から)

●市民俳句の会を企画

  また、土曜日の仮設住宅におけるイベントとして、「市民俳句の会(俳句講座とお茶っこの会)」を企画、担当した。俳句は時々詠む程度で句会にも参加したことはないので、社内におられる俳句雑誌や句会を主宰されている方に俳人の紹介をお願いし、釜石在住の方に俳句講座と句会の指導を含めて依頼し実施に至った。仮設住宅の談話室での開催であったが、優しい俳句に関するお話しの後、明るい雰囲気の中で楽しく作句を行い、参加者の投票による優秀句について感想などを述べ合った。俳句を通し、うちとけた交流の場が持てたのは良かったと思う。当日の句会の段取りは次の通りであった。

  1. 10分で先ず1句を詠み、一人ずつ先生との対話と講評をいただく。

  2. 約30分で一人2~3句を作句する。

  3. 全ての句を整理、回覧し、各自が好みの句に投票(一人で3句を選定)する。

  4. ポイントを集計の後、優秀作のいくつかについて、参加者の感想と作者の思いを語り合い、先生の講評を受ける。

●大槌町「定点観測」報告会開く

  今年の「夏期集中講座」の期間中には、神戸大学による大槌町における「定点観測」の報告会も行われた。観測を行っている大槌高校の学生や先生方、震災前の経過や状況を知った地元の方々などが参加し、会場を埋め尽くす程の聴講者であった。今後の町づくりに活かされる事を期待したい。また、イベントでは三陸鉄道と神戸電鉄との共同企画である釜石駅から大船渡市盛駅間の往復イベント列車や、甲南女子大学による釜石こども園でのダイバーシティ関連の取り組みなど、各地で様々な取り組みが行われた。

●順調の一方で地域格差も

  これらの取り組みの間を利用して、釜石市内や大槌町の現状を視察したが、広大な平野部での盛り土などハードの整備は順調に進んでいるようには見えたが、地域格差も見受けられ不安な一面も残している。しかし、釜石市内の中心部では民間による新築や改修工事が進んでおり、町に活気も出てきているようにも見受けられた。一方、市役所の職員との会話では、市民対応にかかわる判断基準にスピード感が失せたようなところも感じられ、平常的な対応になってきていることは気掛かりでもあった。また、大槌町での事例のように地域が有していた特性情報がどう活かされていくのか、それがCM方式の場合にどのような道筋が必要なのかなど、技術担当者に期待したいところも多く感じられた。

  帰路に、南リアス線から大船渡市の盛駅でBRTに乗り換え、陸前高田市の状況を見せてもらった。本会の会員でもあるオリエンタルコンサルタントの宮本直樹さん(震災復興推進室長)には、急なお願いにも拘わらず、良い視察ポイントから丁寧な説明をいただき、非常にありがたく、状況もよく理解できました。この紙面をお借りしてお礼を申し上げます。


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