REPORT2015年現地シンポジウム「彦根における活性化の取り組み」
今年の地域デザイン研究会の現地シンポジウムは、2015年9月4日~5日の日程で「彦根における活性化の取り組み」というテーマで実施された。4日午後4時から彦根商工会議所で開催した意見交換会では、彦根市(都市計画課、世界遺産登録推進課)、彦根商工会議所、花しょうぶ通り商店街から、それぞれの取り組みについて説明があり、その後に彦根市の活性化について討論を行った。意見交換会開催を前に地デ研側の参加者は、「近江牛ランチ」6名参加)を満喫するとともに、「鉄道ミュージアム」を訪れて施設を見学、近江鉄道の取り組みについて説明を聞いた。さらに近江鉄道で「ひこね芹川駅」まで行き、彦根の各商店街、本町の四番町スクエア、夢京橋キャッスルロードを視察した。(文責:前田、鎌田)
参加者は、彦根市都市計画課・志萱氏、彦根市世界遺産登録推進課・鈴木氏、彦根商工会議所・安達氏、花しょうぶ通り商店街 とばや旅館・和田氏、近江鉄道運輸課・髙橋氏、同総務課・藤原氏、同鉄道営業課・古川氏、同・宮崎氏。地域デザイン研究会参加者は、平峯、柳田、岩本、岡村、小山、田中、中尾、松島、前田、鎌田。
彦根市資料より
近江鉄道路線図(近江鉄道HPより)■意見交換会
平峯理事長の挨拶の後、各取り組みの説明があった。
「中心市街地におけるこれまでのまちづくり」 (彦根市都市計画課 志萱氏)
景観行政についての取り組み
夢京橋キャッスルロード 本町まちなみ委員会
四番町スクエア 区画整理で
歴史まちづくり 歴史的風致維持向上計画
「彦根城下町の文化財」(彦根市世界遺産登録推進課 鈴木氏)
彦根城城郭の全体構造がよく残っている。
城下町を構成する多様な建築物が残っている。
江戸時代の都市計画町割)がほぼそのまま残っている。
「彦根市のまちづくり概要」(彦根商工会議所 安達氏) 商店街活性化)
キャッスルロード ゆかたまつり
・TMO計画事業(H11~H16)ファサード・アーケード・テナントミックス整備
ひこねまち遊び携帯
ひこにゃん誕生
彦根城築城400年祭(2007)
ゆるキャラまつりin彦根
映画のあるまちづくり
ひこね新名物 ひこね丼
「花しょうぶ通り商店街LLPひこね街の駅」とばや旅館館主 市会議員 和田氏)
花しょうぶ通り活性化計画 97.6~98.3 滋賀大土井ゼミとコラボ。ファサード事業中心。
ナイトバザール 毎月第2土曜日開催
アートフェスタしょうぶ市ものづくり市場)
ひこね「町の駅」寺子屋力石(2005.10) 戦国丸(2008.3)
NPO、大学等とコラボ
<質疑応答で出た意見>
花しょうぶどおり商店街はヒューマンスケールの商店街という感じでいい雰囲気を出している。
( 伝建指定されるよう努力している。 ・しかし、他の商店街はクルマの道になっている。道を広げたのは仕方がないが、歩道を広げるなど工夫が必要)
(インバウンドは?) 京都のおこぼれが来ているケースが多い。晩遅くに泊まりに来て、朝、京都大阪に行く感じ。ホテル以外にお金を落とさない。欧米の人は、歴史をゆっくり時間をかけてみる人が多い。
(駅前の雰囲気や、お城までの誘導がうまくいっていないような気がする。) それが課題。
まちづくりのキーワード・地元の人がどう評価しているか、住み続けたいと思う町、特徴のある町) 住民の中には、観光客が来すぎると困るという意見もある。
小江戸のイメージとは?) 小江戸は川越をヒントにしている。建造物は、江戸と京都と合わさっているところが多い。山車を復活したい。
(観光資源をうまくPRが大切)、2019年度の大河ドラマで「おんな城主 直虎」が始まるが、うまくPRに結び付ければ) 彦根城築城410年になるので頑張りたい。
(インフラの基本はほとんど出来ているように思う。この都市規模であれだけの道路がいるのか?使い方・断面構成を変えるということもあり。)
(南北の道路を拡幅しているが、どういう機能を考えているか。) 中堀に沿った道路に通過交通が入っている。南北の道路はその振替と考えている。交通量を減らしながら、中は歩行者を主に考えている。
(バスや公共交通をわかりやすく整備することが必要)土・日・祝日は巡回バスを運行
(車を優先しすぎているように見える。観光客との住み分けが大事、自転車をもっと取り入れたら?歩道の拡幅もある。近江鉄道の活用)
(地元の人はあまり気づかないかも知れないが、彦根は素晴らしい資源を持っている。もっと知ってもらう取り組みが大事)
(優れた観光資源があるのだから、旅行社と組んで、近江鉄道とも連携して、滞在型の観光を目指すべきと思う)
(うまくまちを回っていけるようなコース設定が大事)
(中小電鉄どうして助け合うシステムが出来ないか。いろんな会社でイベント情報とかクロスするとそんなにお金をかけずに、パンフレットを駅に置くとか、「彦根の案内」を駅に置くことにより、PRができる。お互いにそういうことをやればいいと思う。)
歩け!歩け!フィールドワーク
●9月4日
プロローグ・近江牛ランチ)11:00~ 「彦根といえば近江牛でしょう」ということで、本番前に食通6名で近江牛ランチを食べに行きました。目指す「千成亭レストラン」までは1キロ余。幹事としてはタクシーに分乗してと考えていたのですが、「何を考えとんじゃ、歩くのにきまっとるやろ」という声が強く、徒歩で行くことになりました。これがきっかけとなり、今回の現地シンポジウムは「歩け歩けシンポジウム」となりました。
近江鉄道ミュージアムにて
鳥羽や旅館前にて記念写真
鉄道娘「豊里あかね」
ひこね「街の駅」寺子屋力石
夢京橋キャッスルロードを歩く佐和町商店街→おいでやす商店街→登り町グリーン通り商店街と歩き、目指すリバーサイド橋本通り商店街にある千成亭レストランに到着。1階が肉屋さんで2階がレストランとなっていました。おいしい近江牛を食べた後再び集合場所の彦根駅に向かいました。もちろん徒歩です。
銀座商店街→中央商店街→彦根駅前商店街→彦根駅。ランチを目指して歩いた彦根の商店街は、広い道路の両側に店舗が並んでいて、なんとなくイメージが違う感じです。また歯抜けになっていたり、ちょっと老朽化が進んでいたりで少しさみしい感じでした。やはり活性化が必要です。
近江鉄道)13:30~
JR彦根駅と近江鉄道彦根駅は引っ付いていて、そのすぐ横に近江鉄道本社と鉄道ミュージアムがありました。「近江鉄道の活性化の取り組み」について、近江鉄道の高橋さん、藤原さん、古川さんから説明を受けました。
イベント列車の運行
ビール電車、ワイン電車、地酒電車などを実施し好評である。サイクルトレイン
(自転車を持ち込むことができ、無料)新駅設置
沿線自治体や企業の協力により新駅を設置し、旅客増を図っている。河辺の森駅(H16.3)、フジテック前駅(H18.3)、スクリーン駅(H19.3)、ひこね芹川駅(H21.4) 注) 近江鉄道では平成元年以降でみると、前記4駅のほか、水口松尾駅、水口城南駅、大学前駅、京セラ前駅が新設されている。鉄道むすめ 「豊郷あかね」
鉄道むすめとは、鉄道に関する職場で働く女性をモチーフに、トミーテックが中心となって展開している日本のキャラクターコンテンツである。<参考> 営業キロ 59.5キロ米原~貴生川本線)、近江八幡~八日市八日市線)、高宮~多賀大社前多賀線)) 年間輸送人員 4,565千人)H24年度
近江鉄道は、湖北・湖東・東近江・甲賀地域を結ぶ広域的な幹線交通として、沿線住民の生活に欠かせない公共交通機関である。しかし、明治29年1986年)の設立以来長い年月を経て老朽化の進んだ施設もあり、安全確保のためにも改善が必要とされている。こうしたなか、近江鉄道は、全国の他の鉄道と同様、自家用自動車の普及等により 鉄道利用者が減少していたが、利用促進に向けての施策や新駅の設置等の取り組みの結果、平成15年以降は利用者が増加傾向にある。近江鉄道活性化計画<近江鉄道活性化協議会>より)
近江鉄道は、いろいろな取り組みを実施しており、それなりの成果は出ている。しかし、経営改善、存続といった観点からみるともう一歩前に進めた取り組みが必要と考える。特に地元の特性を生かした観光客の誘致という意味では、まだまだ取り組みの余地は残されている。たとえば、他の同じような鉄道との協力というのも有効である。
近江鉄道に乗車)14:30~
彦根駅~ひこね芹川駅までの一駅乗車。単線でそこそこお客さんは乗っていた。
再びまち歩き)14:50~
彦根商工会議所を目指し、約2.5キロの商店街歩き。 ひこね芹川駅→花しょうぶ通り商店街→銀座商店街→四番町スクエア→夢京橋キャッスルロード→彦根商工会議所 四番町スクエアの面的開発は素晴らしいという意見が多かった。
(注)四番町スクエア
昭和57年 再開発事業計画としてスタート
平成8年 再開発事業断念
平成9年 区画整理事業として再スタート
平成11年 彦根市本町区画整理組合設立
平成12年 工事着手
平成18年 四番町スクエアグランドオープン街びらき)
四番町スクエア、夢京橋キャッスルロードは彦根城観光の延長上にあり、観光客も多く、成功事例といえる。ただ他の商店街との落差が大きく、これをどう解消するかが大きなテーマである。キャッスルロードは平成11年の完成から16年が経過しており、ブラッシュアップが必要である。またキャッスルロードは江戸時代、四番町スクエアは大正時代をイメージしており、なんとなくちぐはぐな感じもした。
古地図で楽しむまち歩き)17:50~
彦根市鈴木氏の案内で、外堀の名残と、今も残る足軽組屋敷を回った。商工会議所→長松院→金亀会館→武家屋敷跡→千代神社→今も残る外堀跡の湧水→現存する外堀の土塁→足軽組屋敷=写真)→芹川のケヤキ並木→とばや旅館
外堀や足軽組屋敷が当時のまま残っていて素晴らしかった。ぜひ「ブラタモリ」に来てもらうべきという意見があった。
(とばや旅館)18:30~
とばや旅館で夕食の後、反省会をしました。とばや館主和田さんも話に参加し、とても充実したものとなりました。また料理もおいしく非常にコストパフォーマンスがよかった。歩け歩けで疲れたのか、いつもと違い早めに寝る人が多かった。
●9月5日
彦根城散策)9:30~
ひこにゃん
玄宮園にてボランティアガイドさんの案内により彦根城を散策しました。天守広場でひこにゃんに会えました。博物館の能舞台はよくできていた。 いろは松→博物館→天守→玄宮園敵が攻めにくいよう、上りにくい階段が多かった)。玄宮園にある鳳翔台茶室)で素晴らしい庭園と天守を眺めながら、薄茶を味わった。
(エピローグ・つる亀庵のそばと たねやのお茶)
最後に残った4人で昼食につる亀庵のそばを食べ、たねやにお茶を飲みに行きました。お茶を飲んでいると、I副理事長が「4人で取りまとめの原案を作ろう。」と提案され、他の3人がボーっとしている中あっという間に、まとめの方向性案)をつくった。素晴らしい。玄宮園=右の写真)→つる亀庵→たねや→彦根駅。
最後にお酒を差し入れてくれた彦根の夏川さんをはじめ、お世話になったみなさん、本当にありがとうございました。