REPORT
2017年現地シンポジウム彦根の魅力アップをめざして
「歴史・地域資源を活かしたまちづくりin彦根」を開催
(潮騒版-2)
●まちづくりの視点から見た彦根城と城下町 谷口 徹
世界遺産登録をめざしている。
<お城>彦根城の中心部分。中堀の内側は特別史跡になっている。特別史跡とは国宝の史跡。佐和口多聞櫓は重要文化財。世界遺産登録申請のテーマに「城と御殿」とした。戦を重ねて城が発達してきた。平和な時代になったが、武士の象徴として壊すことなく保存、修理、維持してきた。一方、政務は御殿でやった。表御殿、槻御殿(楽々園)、
お浜御殿(松原の丘)などがある。
<城下町>
400年前の都市計画。元々は湿地でわずかな集落があったのを、芹川を付け替え、まっすぐに琵琶湖へ放流し、水はけをよくし、山をけずって湿地を埋め立てた。
<世界遺産>
谷口 徹氏コアゾーンの周辺にバッファゾーンを設けるという考え方がある。バッファゾーンとして彦根の城下町も江戸時代の面影をできるだけ残したい。「歴史まちづくり法」ができ、修復に補助金が出る。旧池田屋敷長屋門、辻番所は完成した。藩校の講堂のあとである金亀会館、旧魚屋町長屋、長曽根口御門及び外堀も復元することになっている。
<「伝統的建造物群保存地区」事業による町づくり(花しょうぶ通り、芹町通り)>
東側は中山道に、西側は彦根城に繋がり、当時から人々の往来が多かった。半分以上の建物が、江戸時代の様式を残している。
<重要文化的景観>
これに選定されれば、保存活用のための事業に国からの補助が行われる。第1号は近江八幡の水郷。彦根では、路地から眺める天守閣とか、七曲がりの仏壇街など歴史的な営みがあり歴史的な街並みがある所の整備手法の一つと考えられる。
<彦根歴史的風致活用実行委員会>
NPO法人彦根景観フォーラム、彦根辻番所の会、NPO法人ひこね文化デザインフォーラムなど8団体が1つの委員会を構成し、お互いの成果を共有しながら、各々の団体がいろんな切り口で、まちづくりをしようとするもの。
<足軽屋敷のまちづくり>
江戸時代の絵図面とほとんど変わらない街並みに足軽屋敷が多く残っている。市の指定文化財が10棟ある。もう10棟ぐらいは増えそう。よく残っているということは、空き家が多いということ。それをいろんな事で活用していく。自主防災組織をつくったり、我々景観フォムと協同して「芹橋研究会」をつくって地域と連携しながらいろんな事業をやっている。
●地デ研から視た彦根市(貝塚市との比較と提案) 岡村隆正
<貝塚市の歴史・地域資源>
・貝塚寺内町、・水間観音、・水間鉄道、・東洋の魔女、・交通ネット(南海本線、JR阪和線、水間鉄道、ハーモニーバス)
<衰退・消滅の危機にある「地域・歴史資源」>
岡村隆正氏車社会に対応する道路整備に重点を置きすぎたことに、大きな原因がある。本来の都市計画=人間の生活を基本とした都市計画がきちんとできなかった。
貝塚寺内町の変貌:寺内町内にあったヒューマンスケールの紀州街道と水間街道が拡幅されて、地域の幹線道路になった結果、寺内町が4分割されてしまい良さを活かせなくなっている。
水間鉄道の衰退:貝塚市の中央を貫く東西幹線として貝塚中央線が水間鉄道に並行して整備された。一方、水間観音参詣も周辺に駐車場が整備され鉄道利用が激減。
経済・製造業の変容:街中にあった地場産業が、土地利用の純化を目指した都市計画により、臨海埋立地に移動。一方、駅前商業が衰退し、幹線道路沿道商業に。通勤、買物にクルマ移動が必須となる。
<都市づくり、都市計画の基本(普遍的原則)>
人間のための「街路」:都市に住む楽しさは、にぎわいとか、界隈性のある、人間的なスケールで楽しめる場所があること。街中の街路を再考することが重要。街路の自動車交通が少ないほど、人の行き来が盛んになる。
生き続ける集落:成熟社会におけるまちづくりは、安全性、利便性、快適性などの視点だけでなく、地域そのものの違い(地域遺伝子)を知り、活かしていくことが、地域への愛着を確かなものとし、地域の持続性を高める。
公共交通手段の充実:自動車の使い方を適切に制限し、公共交通を使いやすい都市づくりをすることにより、安全で安心な「歩いて暮らせる」街づくりとなる。
・都市のイメージをつくる:人々が周辺環境に対して抱くイメージは、アイデンティティ、ストラクチャー、ミーニングという3成分からなる。(ケヴィン・リンチ「都市のイメージ」より)
<来訪者から見た「彦根」、「行きたくなる彦根」についての提案>
「コアとゲートウェイ」が都市の印象を創る:「彦根城」は象徴、アイデンティティなので、彦根駅=玄関、駅前お城通り=廊下から、彦根城が見通せること(空間構造)が、彦根のイメージを明確にする。
公共交通を使った「歩いて楽しい街」:クルマの利便性を優先せず、適切に規制し、気持ちよく歩け、どこでも渡れる「街路」を。近江鉄道、市内循環バスなど公共交通手段を充実させ、沿道商店の個性化、魅力化も重要。
「おもてなし」と「食」のまちづくり:単なる観光地巡りでは、印象は薄く、リピーターを生まない。年中行事、祭り、多様なグルメ、文化体験、それを案内する専門家、地元の人との交流を組み込んだ企画が重要。
「産業」を活かしたまちづくり:湖東で最も高い製造業出荷額、従業員数は、豊かな市民生活の基礎となっているが、それをもっと活かすべき。地場産業を知り、愛着を持ち、共に成長する関係をつくる。
「大学」と連携したまちづくり:人口11万の都市に3大学も存在。学生を一過性の部外者でなく、学生(大学)とまちが、相乗効果が発揮できる関係を結ぶ。大学の研究機能、学生の若い力をまちづくりに活かし、地域課題の解決、地域の活性化、人材の育成を図り、地域全体の文化度を上げる。
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