凜とした町並み

今中昌男


出水市野田麓(出水市HPより)

蒲生麓(姶良市HPより)

 最近は地形の面白さに取りつかれているが、以前はよく歴史的町並みや集落を歩いた。町並みや集落を評価する指標はいろいろあるが、今回は凛とした町並みはどこだろうか?と記憶をたどってみた。それは私の中では一連の「薩摩の麓集落」である。

 麓は、薩摩藩が領内を区分し武士を分散定住させ、軍事ネットワークとして、また農山漁村や町場の支配の拠点としたもので、御仮屋といわれる在地役所を中心に郷士屋敷の集落を形成している。(※女優・本仮屋ユイカの仮屋もそうです)

 以前から「知覧」が、最近では「出水」がかつての麓集落の雰囲気を色濃く残す観光地として人を集めているが、それ以外にも、普通の住宅地として高品位な景観を保っている麓集落が多い。私が訪れた中では野田(出水市野田町)、入来(薩摩川内市入来町)、蒲生(姶良市蒲生町)、国分(霧島市国分中央)の麓集落が良かった。旅行していると田舎の風景の中に突然、質の高い高密な空間が表れるので驚いてしまう。

 出水を含め、先にあげた麓集落は玉石か切石(凝灰岩)の石積み、槙の生垣、武家門で構成された景観を持っている。住宅地としてよく手入れがされており、限られた素材で作られた、色彩を押さえた景観は凛としており、清々しい。かつてそこに住んだ薩摩武士の生き様もその感覚を助長しているのであろう。


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