REPORT

2017年現地シンポジウムin舞鶴

仮想的30万都市「京都府北部地域連携都市圏形成」を目指す

地域連携、広域連携が叫ばれる中で、京都府北部地域の5市2町が「京都府北部地域都市圏協議会」を設置し、連携による地域づくりに本腰で取り組んでいる。地域デザイン研究会は2017年度現地シンポジウムとして11月24日、同地域の取り組みを聞くことを主旨に、事務局である舞鶴市役所を訪問。あわせて赤字に苦しむ北近畿タンゴ鉄道について、鉄道運行・運営で収益改善に取り組むことになったウィラー・トレインズ社からも様々な取り組みを聞いた。

<現地シンポジウム出席者>(敬称略)

▽WILLERTRAINS(京都丹後鉄道):青山清満(営業企画部長)

▽舞鶴市:松岡幸治(政策推進部企画政策課長)、小西征良(政策推進部企画政策課主幹)、泉光信(政策推進部企画政策課係長)、亀井亮介(政策推進部企画政策課主査)、岡田祐貴(政策推進部企画政策課主事)、松岡恵美(産業振興部観光まちづくり室観光商業課係長)

▽地域デザイン研究会:平峯悠、岡村隆正、鎌田徹、大戸修二、田中賀鶴代、中尾恵昭、前田秋夫、松島清


小西主幹
 平成27年4月、京都府北部地域の5市2町(福知山市、舞鶴市、綾部市、宮津市、京丹後市、伊根町、与謝野町)は「京都府北部地域連携都市圏」形成推進宣言を採択した。これは各市町がそれぞれの強みを活かし、連携と協力により役割分担と機能強化を図るとともに、公共交通ネットワークの利便性を向上させることで、「京都府北部」が1つの経済・生活圏を形成し、圏域全体の活性化を図ることを目的としている。

●北部地域連携都市圏の強みとは

同連携都市圏の強みとしているのが、①広域観光の拠点、②ものづくり産業の拠点、③「職」と密接・多様な教育群、④高度専門医療が受けられる地域医療群、⑤子育てしやすい環境、⑥国防・国の安全保障の拠点、⑦海の安全の拠点、⑧関西経済圏のエネルギー拠点、⑨大規模災害時等におけるリダンダンシー機能。例えば「広域観光の拠点」としては、国交省の広域観光周遊ルート認定や京都縦貫自動車道開通という追い風もあって、5市2町の観光入込客数は年間1,000万人に増加。また舞鶴港を活かしたクルーズ船の寄港がめざましく、平成28年は17回、29年は39回のクルーズ船寄港を記録。一方で北部地域だけでなく、隣接する福井県若狭地方との連携強化で宿泊を含む相乗効果を目指すという。

●7つの重点プロジェクトを設定

広域連携のあり方として、観光、医療、定住促進、教育、公共施設、産業などの分野について、高いポテンシャルを有する市町が担う中での連携を推進していくとしている。そして仮想的30万都市の実現に向け、平成29年7月に連携ビジョンとして7つの重点プロジェクト(北都7つ星プロジェクト)を設定、一致団結して具体化に乗り出している。

北部地域連携都市圏の動きに対し国からも注目を集めることになり、平成28年3月には地方創生加速化交付金に「広域観光推進事業(海の京都DMO地域活性化推進)」、「移住・定住プロジェクト」、「丹後食産業創生事業」、「地(知)の拠点推進事業」など4つのプロジェクト(採択額6億7,860万円)が採択されて事業を開始している。 29年度の連携ビジョン確定を受けた後の取り組みについて、小西征良氏(=写真、舞鶴市政策推進部企画政策課主幹)は、「今後はアクションプランの作成、ガバナンスの充実・強化、重点プロジェクトを展開していくことで、人口減少の全国的な克服モデルとなれるよう、頑張って進めたい」と語った。 

●移動(公共交通)で地域を元気に


青山部長
鉄道運行事業と鉄道施設保有の上下分離方式を導入することで収益改善を目指すことになった第3セクターの北近畿タンゴ鉄道(KTR)―。運行事業譲渡先を公募し、平成26年(2014年)5月にウィラー社(WILLERALLIANCE)を選定。ウィラー社はウィラー・トレインズ社(WILLERTRAINS、第2種鉄道事業者)を設立し、平成27年4月から鉄道名を「京都丹後鉄道(丹鉄)」と改称した上で、乗車券発売などを含む鉄道運行事業を新たな視点から開始。意見交換会でウィラー・トレンズ社の青山清満営業企画部長は、「移動(公共交通)で地域を元気にすることを目指している」と語った。

●観光地・目的地が分かりやすい駅名に変更

運行開始にあたってまず取り組んだこととして、例えば観光地・目的地が分かりやすい路線名・駅名へと変えた。駅名では「夕日ヶ浦木津温泉」(旧:丹後大宮)、「コウノトリの郷」(旧:但馬三江)、「福知山市民病院口」(旧:厚中問屋)を含め7駅を変更した。路線名は従来の宮津線、宮福線を宮津を基点に3つの路線に分け、宮津-豊岡間を「宮豊線」、宮津-西舞鶴間を「宮舞線」、宮津-福知山間を「宮福線」というように改めた。観光視点の目玉として観光列車を導入、「くろまつ号」、「あかまつ号」、「あおまつ号」の運行を開始。JRとの相互乗り入れによる京都-丹後を走る特急列車「丹後の海」も登場させた。

 また、観光交通商品の造成として、丹鉄と沿線バス会社と連携した企画乗車券の導入、JRとの連携会議で京阪神エリアからの誘客強化、ダイヤ改善を含めアイデアを出し合っている。付帯事業として地域に根付いた収益モデル醸成を目指し、丹鉄ファンド・鉄道ビジネススクールを創設。成果としてファンドを活用した新規事業「丹鉄珈琲」をスタートさせた。

●モビリティマネジメントにも取り組む

 一方で地域内利用を増やすため域内観光の強化、モビリティ(移動)マネジメントにも取り組む。例えば「たんてつこども新聞」の発行、イベント列車の実施、農業振興と地域活性化を目的とした貨客混載事業、駅に回収ボックスを設置した廃油回収事業にも取り組んでいる。こうした取り組みについて青山部長は、「沿線5市2町との連携の重要性を痛感している」と心境を語った。

今回の現地シンポジウムで地域デザイン研究会側からは、地デ研活動を通じ得られた「地域連携」や「歴史・地域資源を活かしたまちづくり」の研究資料、鉄道に関係した各地の取り組み事例なども紹介。後半の意見交換会では相互に活発な意見が交わされた。最後にあいさつした平峯悠理事長は「従来にない新しい観点からの話を聞けた。地デ研ではNPO連携の交流会議もスタートする。これを機に新たな連携ができるかもしれない」と結んだ。 (※意見交換会の詳細等は、紙面の都合で割愛しました。文責:大戸修二)

充実の旅 ◆観光列車「あかまつ号」に乗車

 1日目の懇親会と田中さんによる盆略手前の余韻を残しながら、2日目は宿を出て西舞鶴駅に向かった。参加者は鎌田、中尾、岡村、田中、前田の5名である。 途中、中尾さんの提案により真名井の清水・新世界商店街水汲み場に寄った。真名井の清水は、田辺城主細川幽斎が「御水道」と呼ばれる水路をひき、日本最古の上水道と呼ばれている。現在も大切に守られ生活用水として利用されているらしい。

西舞鶴駅から、京都タンゴ鉄道「あかまつ号」に乗車(=写真)。「あかまつ号」は工業デザイナー水戸岡鋭治氏がデザインした列車で、運賃+540円ワンドリンク付きで西舞鶴~天橋立を1日2往復している観光列車である。当日は休日ということもあり満席だった。美しい海岸線を楽しんでいると、天橋立が見え、天橋立駅に着いた。時間の都合もあり、予定を変更して天橋立ビューランドに行くこととした。ビューランドから見る天橋立は飛龍観と言われとても美しかった。

次に智恩寺・文殊堂まで歩いて行きお参りした。文殊堂は、室町時代に創建され、「切戸の文殊」として親しまれており、奈良の「安倍文殊」山形の「亀岡文殊」と並んで日本三文殊と言われている。知恵がつくようにと願った。智恩寺の近くの「天橋立松吟」で廻旋橋が回転するのを眺めながら、アサリ丼を食べた後、天橋立駅に戻り、はしだて号で帰路についた。

短い時間ではあったが、なかなか充実した舞鶴、天橋立の旅となった。無事大阪に着いたが、あまり知恵はついていないようである。(文章:前田) 

スナップショット

お手前

真名井の泉前で

田辺城資料館

知恩寺・文殊堂

知恵の輪

天橋立ビューランドより

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