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岩手県の復興状況を視察して

阪神電気鉄道株式会社 立間康裕


陸前高田市の状況(今泉地区から)
<嵩上げ工事もほぼ完了し、宅地開発が進んでいる>

大槌町の状況(安渡地区)
<山田線の復旧工事が進捗している>
東北大震災が発生して6年半が経過し、来年度で概ねの基盤整備が終了しそうな状況なので、今年度は岩手県の復興状況を見て回ることにした。岩手県の被災地は広いので、9月15日からの3泊4日の訪問となった。ただ、これまでほとんど観光もしていなかったので、最終日は龍泉洞(鍾乳洞)や盛岡市内などの観光も楽しんだ。

今回の視察地は、陸前高田市、釜石市、大槌町、宮古市である。陸前高田市では、今回も本会会員の宮本直樹さん(オリエンタルコンサルタンツ東北支店震災復興推進部長)に案内していただきました。また、釜石市、大槌町でも、自治体の復興局やNPOの方々に大変お世話になりました。紙面をお借りして感謝を申し上げます。

被災地の復興事業は概ね平成30年度で終了予定であるが、一部事業の遅延などにより陸前高田市などでは2年間の延長が予定されている。各地とも護岸工事や嵩上げ工事など基盤整備は順調に進捗しており、区画整理地区では既に道路整備もされ、地下埋設工事や一部では建築工事も開始されていた。計画によって地域差はあるものの、4m~11m程度の盛土をされた地盤に立つと、女川町でもそうだったが、以前からずっとあったような不思議な感覚になってしまう。しかし、残念ながら土地の匂いがしないし、海もあまり見えない。

護岸工事は各地で多種多様な工法が採用されており、品評会の趣であった。ただ釜石市東浜地区や大槌町赤浜地区(共に漁港)では、従前の高さ程度の護岸高で復旧されており、また、後背地に整備された復興住宅からは海も見えそうなので、漁港等での計画には一定配慮された様子もうかがえた。(事業手法の違いに起因しているかも知れない。)

一方、目立ったのが鉄道の復旧工事である。JR山田線は、復旧後の運営は三陸鉄道に移管される予定であり、現在JRが鋭意施工中である。再来年の移管に向けて橋脚工事や築造工事が進んでおり、一部では配線工事も始まっていた。移管されると、南リアス線(大船渡盛~釜石)と北リアス線(宮古~久慈)が一社で繋がり、多様な運営メニューや企画が可能となり、地域の資源としての活用が期待される。ただ、陸前高田市を通る大船渡線(大船渡盛~気仙沼)はBRTとして運営が再開される予定となっている。

以上、駆け足で観てきたが、想定される住民がどの程度戻って来るのか(=陸前高田市のアンケートでは60%とか)、帰って来ない権利者の土地をどう取り扱うのか、地域の商業は成り立つのかなど、今後の町づくりには課題が山積している。また、全体として復興計画を総括することも、今後の災害復旧に向けた重要な作業と思われる。


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