主張

今、なぜ金剛ニュータウン再生なのか

友田研也

 私は2016年から富田林市が設置する「富田林市金剛地区再生指針策定協議会」の地元代表委員の一人となっている。2017年3月には「金剛地区再生指針」を策定し、引き続き、この具体化に向け取り組んでいる。

金剛地区は、日本住宅公団(現、UR都市機構)が昭和40年から土地区画整理事業により開発した所謂大都市郊外のニュータウンである。開発面積216ha、集合住宅2万人、戸建て住宅1.1万人、計3.1万人の街として計画された。人口は、昭和53年の26万人をピークに減少に転じ、現在、人口1.7万人、高齢化率は32%となっている。開発後、約半世紀が経過し、人口減少、少子高齢化、諸施設の老朽化、コミュニティの希薄化など、いわゆるニュータウン問題が顕在化している。

2014年、増田寛也氏(元総務大臣)が座長を務める日本創成会議が896自治体を「消滅可能性都市」として発表し、大きな話題となった。大阪府においては、富田林市も含め9市町村が挙げられており、そのうちの4市町村が南河内地域にある。

大都市郊外のニュータウンは、旧集落が有するようなコミュニティ力が弱く、自浄能力が乏しいと言われている。しかし、886万人を擁する大阪府の郊外が成立しない訳はなく、計画的に創られたニュータウンは計画的に蘇生していくことを積み重ねる必要がある。多様な暮らし方や生活の質的向上に向けて、現在のニーズに合わなくなったもの、老朽化したものを、地域住民等が主体となって、一定の規律のもとリノベーションしていくことを継続的に行っていく仕組みが街には必要である。このためには、幾つかのポイントがあると思っている。

街を継続的に蘇生させていくためには、強いコミュニティが必要である。このためには、心理的つながりや機能的結びつきを強めるコミュニティの核となる“シンボル空間”を形成し、街の中心性を高めることが欠かせない。隣の大阪狭山市では、これを狭山池が担い、多くの市民が、池まつり等のイベントや定期的な美化清掃活動、日頃の健康づくり等に活用され、中心性が高まっている。金剛地区には、これほどの歴史的資源はないが、金剛・葛城の山並みを借景とし、大阪で唯一の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている寺内町に歴史の重みを感じつつ、駅前、地区センター、中央公園、寺池公園を緑のネットワーク(ふれあい大通り等)で結ぶゾーンを、地域住民等の取組みや新たな民間投資の誘導により、シンボル空間化していくことが考えられる。次に、駅前・地区センター・二つの都市公園は、地域で活動する団体やNPO等が集まり、連携を図り、相乗効果を高め、街の再生を実践していくためのネットワーク拠点、活動の場として捉えることが重要である。例えば、中央公園の既設体育館・プールを、スポーツ・福祉・文化施設へと建替えるとともに、周辺を地域のイベント・コミュニティ広場へと修復することが考えられる。特に、都市公園においては、Park-PFI制度が創設され、民間事業者による公共還元型の収益施設の建設が可能となっている。これを地域住民等がコーディネートしていくことも重要な活動である。

ニュータウンでは、道路・公園等の都市基盤が充実していることが特徴の一つであり、公共空間のリ・デザインとコミュニティによる成功体験が、ニュータウン再生の鍵となる。金剛地区に多く暮らす団塊の世代の方々が元気な内に、継続的に街が蘇生していく仕組みを整えていきたい。この街で一人一人が活き活きと活動し、人と自然と文化とが繋がっていると感じたいのである。


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