旅ゆけば

青春切符の5日間

大戸修二

 私の趣味の1つは旅。交通手段としてLCC(格安航空会社)利用を重宝しているが、国内旅行では5日間で1万1,850円という「JR青春18切符」の魅力にはまりつつある。新幹線や特急は無理だが新快速なら乗れるため、大阪駅からかなり遠くまで行ける。

今年春シーズン券(4月10日まで利用可能)で、まず向かった先は静岡だった。7時22分発の新快速に乗車、乗り換え4回、13時41分に静岡着、所要時間は6時間19分。主目的は頚椎骨折で入院中の友人のお見舞いだった。病室の窓から雪化粧の美しい富士山が見えた。翌日は実家の名古屋へ。1年ぶりのお墓参りである。さらに1泊後の帰路は名古屋駅で新快速に乗り、岐阜駅で途中下車、がん治療中の友人のお見舞いに寄った。予想外の回復ぶりに何よりもホッとした。

3日間の主目的はお見舞い2件、お墓参りと青春切符らしくない使い方だったかもしれない。5日間の残りはあと2日。考えた末に大阪発で鳥取まで行くことにした。7時22分発の新快速に乗車し乗り換え3回、13時54分に鳥取着。所要時間は6時間32分と大阪・静岡間とほぼ変わらない。普通列車の魅力は車窓の景色、桜前線真っ盛りの様相にうっとりさせられた。鳥取では砂丘で夕焼けを見て、駅前商店街を散策、そして居酒屋へ。海の幸をあてに飲んだビールで、ほろ酔いのいい気分に浸った。

5日目。乗り継ぎ駅の山陰線城崎温泉駅で駅弁「かにめし」を購入、これがまた美味だった。兵庫県立コウノトリの郷公園が近いことを思いつき、2駅目の豊岡で下車。今回唯一の民鉄利用、京都丹後鉄道で無人駅「コウノトリの郷駅」で下車した。ところがである。案内表示が見当たらない。平日のせいかも知れないが、歩く人の気配すらない。走ってきた軽トラに無理やり止まってもらい、道順を教えていただいた。歩くこと約20分、やっとのことでコウノトリが舞う姿を見ることができた。

年を取ると時の経過を早く感じるものだが、青春18切符には、時をゆっくり楽しめる魔力があるのかもしれない。持ち合わせた文庫本「パリ・スケッチブック」(アーウィン・ショー著)もいつの間にか読み終えていた。


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