わたしの一冊

<改訂版>かえりみる日本近代史とその負の遺産

玖村敦彦:著 寿郎社:刊

推薦者:鎌田 徹

著者は1926年生まれで、終戦の年は19歳だった。当時は旧制高校の2年生で、学徒勤労動員により呉の海軍工廠に派遣された。米軍の大編隊による空爆が起こるようになった。そんな中で8月6日の原爆を体験する。下級生を従えて直ちに広島に行き、そこで悲惨な状況を目の当たりにする。

戦後70年がたち、現在のテレビ・新聞等を見るにつけ、戦中派として我慢できないことが多過ぎると、自分なりに資料を勉強し各所で配ったりしていたが、今回はそれらを集大成し一冊の単行本に仕上げた。

注目すべきことは、執筆に当たって膨大な文献を参照していること。 本書の構成は、〈Ⅰ〉自分自身の体験、〈Ⅱ〉何ゆえにあのような惨憺たる敗戦に至ったのかを明治維新以降の歴史の文脈から考えたもの、〈Ⅲ〉敗戦までの国の歩みの「負の遺産」とその精算・克服を取り扱ったもの、となっている。

明治維新から1945年の終戦までを、時代考察を加えながら詳細に述べられている。日本の近代史を再確認する上で必読の書といえる。


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