旅ゆけば・・・都市を訪ねる(5)~遠野市~
平峯 悠
「遠野物語」は遠野郷(遠野市) 出身の民俗学者柳田国男が明治43年(1910年)に発表した岩手県遠野地方に伝わる逸話・伝承をまとめた説話集であり、特に河童伝説などで子供のころより記憶に残っている。また遠野市は日本百名山の一つ早池峰山と早池峰薄雪草の群生地として有名である。
遠野市を訪れたのは1999(平成11)年6月私が属している山の会の例会で早池峰山登山の折であった。遠野駅集合とのことで朝の飛行機で伊丹空港をたち、いわて花巻空港からJR釜石線に乗り遠野市駅に到着した。予備知識もなかったが、遠野駅の駅舎の美しさと灌洒でしゃれた駅前広場に感心した。どのような街なのか大変興味が起こり、さっそくレンタサイクルで市内を見て回ることとする。城下町の雰囲気を残し、街路樹の美しい道を進むと遠野自然博物館に出る。なお20分ほど走ると田畑と川の風景が現れる。この雰囲気が柳田国男を魅了したのであろう。
遠野市は現在人口が26,820人と比較的小さな都市であるにもかかわらず、年間観光客が200万人訪れるという。遠野市の都市的な面白さは、昭和25年に建造されたJR遠野駅舎建築(=写真)と城下町の風情である。当時としては珍しい硬質コンクリートブロックづくりの欧風建築様式を取り入れたもので東北の駅百選に選ばれている。この洒落た建築物が先導して町並みや建物が造られたというのが遠野市の特徴であろう。
このような鉄道駅舎建築物や素敵な街路と広場、これらが「都市的なるもの」であり、まちづくりを目指す人達が手本にすべきと思う。駅舎の老朽化が進み建て替え計画が浮上しているそうであるが、まちの象徴としての役割を果たすよう改修され更に発展することを願う。
遠野駅舎
早池峰薄雪草