REPORT

令和元年<東北復興>を見る

奥村組関西支店  立間康裕

宮城県内、岩手県内とも復興期限を来年度末と想定している地域が多く、各地で護岸工事や道路整備などハード事業は追い込みに入っている。また、復興住宅などの整備も進み、まち開きや新しいコミュニティづくりも行われている。そんな中、元号が令和に変わっての最初の東北視察は名取市閖上地区となった。また、JR山田線の復旧が終わり三陸鉄道に移管されたことにより、大船渡市(盛駅(さかり駅):南リアス線)~久慈市(久地駅:北リアス線)までが1つにつながり、全長163kmの第3セクターとして日本最長の鉄道となった。この夏、その記念イベントとして三陸鉄道(株)との合同イベントが企画されたので現地を訪問した。

●名取市閖上地区の町びらき(5月26日)


かわまちてらす閖上(名取川)

名取市閖上(ゆりあげ)地区は、市長の方針により被災原位置での復興を目指していたが5月26日、めでたく「閖上地区の町びらき」が開催された。閖上地区まちづくり協議会事務局の方に案内していただき、状況視察を兼ねて参加してきた。

閖上地区では第2次防災線となる道路整備や宅地の嵩上げ、復興住宅などの工事も概成し、すっかり新しい街並みができていた。集合住宅のマンション屋上は避難所として指定され、非常時には開放される構造になっており、1階部分では居住区画をつくらず、溜まりスペースなどの共用空間となっていた。戸建ての住宅もゆったりとした空間を配置し、明るい雰囲気に仕上がっていた。また、地区の横を流れる名取川では、護岸における賑わいづくりの試み「かわまちてらす閖上」が整備され、地域の有名店などが店を構えていた。今後、ここを新たな拠点として活性化の取り組みを進めていくようである。

「閖上地区町びらき」では、地区内の各所でイベントが開催され、近隣からも多くの人たちが参加していた。公民館前の広場に設置されたステージでは、住民によるダンスや歌手のコンサートなどが催され、「かわまちてらす」や漁港では飲食物販、朝市、御神輿などが出るなど多彩に行われ、循環バスによって駅との連絡や地区内の移動を確保していた。長年この地区の調整推進を担ってきた閖上地区まちづくり協議会(針生勉会長)には、山田市長から感謝状(10月1日付)が贈られた。

●三陸鉄道リアス線に乗って町歩き(8月19日)

神戸のNPO仲間に神戸電鉄の方(若手幹部)がおられるので、彼を窓口にこれまで数回の三陸鉄道との合同イベント「震災学習列車」を開催してきた。今回も特別列車を企画したが、JRとの調整がうまくいかず(釜石駅での取り扱い)貸し切り列車は出せなくなったので、1日乗車券を利用した主要駅での町歩きに切り替えることにした。早朝から夕刻までの 長いイベントとなったが、大学関係者、大学生、地域の人たちなど40人ほどが参加した。

今回のイベントは、釜石駅と宮古駅を往復する間で、(往路)鵜住居駅、陸中山田駅、(復路)宮古駅、大槌駅で下車し、各駅2時間ほど地域の町歩きなどを行うという趣向で、基本的には自由行動となった。これまでJR山田線が不通であったため陸路で被災地を見て回っていたが、初めての鉄道からの眺めは全く違ったものに感じられた。当初、復旧は無理だろうと考えていたので、初めて視察した時の両石地区の住居跡や鵜住居駅付近からの光景が鮮明に思い出され、熱いものが込み上げてきた。各地区では住宅や諸施設が整備され、以前とは全く異なった町に見えたが、住民の人たちによる地域風土の継承と新たな賑わいづくりを期待したいものである。(写真は、大槌町の模型を見入る参加者) 

ラグビー・ワールドカップの会場となる鵜住居スタジアム、「ひょっこりひょうたん島」をイメージした新しい大槌駅舎など、見るものの多い町歩きとなった。


鵜住居駅からのリアス線

大槌町の模型を見入る参加者

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