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旅ゆけば・・・

バスツアーに見た引率のプロ

小西道信

この夏、3つのバスツアーを体験した。バスツアーは、参加者をひとまとめにして目的地の近くまで運び、散策や鑑賞のサービスを提供してくれる。経営的には、1人の添乗員でより多くの参加者を催行することがポイントだろう。そんな中、車外の移動時間が長く、交通渋滞にも巻き込まれた日帰りツアーでの添乗員の仕事ぶりに感心した。その「熱狂!S席で鑑賞!本場阿波おどり」バスツアーのあらましは、次のとおり。

大阪を正午過ぎに出発。徳島市内で夕食のあと演舞場の指定席で鑑賞し、その日のうちに帰阪するという弾丸企画である。阿波おどり期間中は徳島市内には交通規制が敷かれた。観光バスは市内の降車場で客を降ろしたのち、シャトルバスで運んでくる客を市外の河川敷駐車場で待つというシステムだった。折しも8月12日はお盆。高速道路は徳島までずっと渋滞。そのため神戸市内では混んでいない一般道を走ったり、トイレ休憩を予定外のサービスエリアに変更したりと大わらわ。どうやらバスの1時間半の遅れは想定内だったようだ。徳島市内に着くと、日の高いうちに演舞場への入り口と帰りの集合場所を現地まで案内して確認。そして一時解散して約1時間の夕食時間をとり、各自演舞場の指定席に着いた。たっぷり2時間、2拍子のリズムと手さばき・足さばきに胸を躍らせた。

ところで、車内での行動予定の説明方法も面白かった。物事の説明を受ける時は、全体から入り細部へと進むのが大方だが、このツアーでは「これからする行動」ひとつを伝えるのみ。全行程を知っておきたい客から、質問が出たくらいだった。高齢者主体の集団に周知徹底するためだろう、眼前のことに集中させられた。もちろん自立的に動けるようスケジュールや地図も渡され、目印となるリボン(裏に手書きの添乗員のスマホ番号付き)も付けられていた。

帰路では、45名の“アラ・セブン”の集団が祭りの人出の市街地を、それも夜間シャトルバス乗り場まで30分かけて移動した。車両進入禁止エリア外周の歩道付きの道路とはいえ信号が数か所、踏切もあった。添乗員の目印は、旗につけた蛍光ライト付のマスコット人形。歩く速度を調整し隊列を整えて、全員を一塊にして一気に渡らせた。シャトルバス乗り場では、バスの回転が悪いのか、長蛇の列をなしてバス順を待つこと1時間。15分程走って観光バスに乗り換え一路大阪へ。しかし大阪到着は0時を回ってしまい終電に間に合わない人が多数出たが、皆大らかに添乗員に手を振って分かれたツアーとなった。

25名ほどの街歩きの会の裏方をしている身として、今回のプロの引率ぶりには学ぶことが多かった。


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