REPORT

「東北3.11」今とこれから

~被災後10年を控えて~

奥村組関西支社 立間康裕

概ね来年度が期限となっている東日本大震災の復興状況を視察してきた。今回は釜石市根浜海岸における「3・11慰霊イベント」準備の手伝いと参加を予定していたが、新型コロナウィルス対応の関係でイベントは中止となってしまった。そのため宮城県石巻市、岩手県釜石市、大槌町、陸前高田市などの各地を視察することとした。今年で9周年となる3月11日には、鵜住居地区にある宝来館前庭での慰霊モニュメントの製作(東京芸大、日比野先生のグループと地域NPO)に立ち会うことができ、午後2時44分には「釜石祈りのパーク」(元地区防災センターの跡地)で献花と黙祷を行った。また、3月14日に全線開通することとなったJR常磐線を利用して、福島県の双葉町や大熊町にも行きたかったが、1日違いで運休のために断念することとなったのは残念であった。

●各地の復興の現状


湊西区画整理地区

根浜海岸(鵜住居)での慰霊のモニュメント

常磐線浪江駅から、原発に近い双葉駅を望む
石巻市には、大阪市から8人の職員が今もなお派遣されており、旧北上川西岸の石巻港近くにある「湊西区画整理地区」(=写真)を大阪市チームで担当している。地区内の都市計画道路(第2防災線)や区画道路は概成、暫定供用されており、地区全体の状況も視覚化ができるまでになっていた。数区画の民地は建築物も完成し、営業もされているようであった。今年秋の完成を目指している。また、弊社(奥村組)の施工である地区南側で交差する県道門脇都留線(第2防災線)も、既存道路を生かしながら盛り土等の施工中であり、日和山の南側に広がる新門脇地区では「津波復興祈念公園」の整備中であった。

釜石市内の復興状況は、小白浜地区、平田、鵜住居、両石の各地区を見て回った。唐丹地域の小さな漁港である小白浜地区では、津波の引き波で転倒していた護岸は新しく重厚に嵩上げされており、高台にある住宅地の擁壁や避難路も整備されていた。低地エリアはコミュニティ広場として整備が進んでいた。市域の他の地区でも区画整理事業などが進捗し、新しい町並み、住宅などが整備されていた。

毎回立ち寄っている大槌町でも同様な状況であったが、陸前高田市の状況について少し触れておく。 前回(平成29年7月)訪れた時は、被災地域北側の盛り土(8~10m)が終わり、中心市街地の造成の最中であったが、想像していた以上にしっかりとした街並みができつつあり、その多くは供用もされていた。南北に賑わい軸(本丸公園通り)がスラローム型の歩行者系道路として整備され、公共軸(駅前通り)は新市役所(建設中)と交通広場を結んでおり、東西軸(高田南幹線)と国道45号が他地区などとのアクセス道路となっていた。施設周辺には大きな駐車場が配置され、交通広場は、現在はBRTの発着場となっているが、JR駅舎も設置されていた。

海沿いを通る国道45号より海側では「津波伝承館」などが整備され、津波の強さ、恐ろしさを知ることのできる見応えのある施設となっていた。北側の中心市街地と海側のエリアは造成の真っただ中であった。

●これからの課題

以上のように、ハード系の施設整備は一部地域を残して完成できそうであるが、戻ってこない避難者やその所有地の取り扱い、産業振興や活性化、新しいコミュニティの創造や心のケア、かつての文化の伝承など、これからの課題も残っていると感じられた。また、多くの区画整理では補償等により公共所有となっており、今後の活用方針が重要である。

釜石市に派遣されている大阪市職員人から、仮設住宅の現状や課題などについてのヒアリングを受けたが、令和2年末には仮設住宅は撤去される予定となっており、残っている高齢者や独居者への留意が必要である。そのほか、帰還者が減少している中での区画整理事業の清算業務、産業振興におけるグループ補助金を含めた災害援助補助金の償還対応などが課題として挙げられる。

福島県については、今回は途中まで(浪江駅)しか行けなかった同県の復興をどう考え実行していくのか、10年目を迎えてもまだまだ課題が山積しているようである。広域圏計画や実施主体の各自治体のリーダーシップ、国による継続的な制度や財政の支援などを含めて、未来を期待したい。


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