REPORT

STUDY21 活動報告

「STUDY21」を立ち上げて

高岡邦彦

フランスの思想家ロラン・バルトの指摘では、「一切の西欧の都市は同心円であり、その中心は真理の場であり、文明の諸価値が凝縮しており精神性、権力性、金銭性、商業性、言語性の機能が集合しており、ここへ足を運ぶと社会の真理に出会い、現実の充実を体験できる」としている。

彼のまとめ上げたことを平易に語れば、教会、官庁、銀行、市場・商業施設、広場・遊歩道となるだろう。だが今我々の社会を見れば、もちろん西欧社会ではないが、教会に代表される精神性がまったくないのがわかる。

これは2つの点で明確となっている。階級社会のごく一部の者が武力支配をなし続けてきたのに対し、積年の憤りを募らせて、結束した西南雄藩の者たちが反抗・転覆を企てて成功したとき、その行為を是認させるため京都在住の貴族社会を利用し、その持つ宗教的権威で、全国民を納得させようとしてきたこと。またその構図が70年後に外国勢力によって破壊された時に「政教分離」を強引に押し付けられたため、宗教施設が本来の活動を達成できない状態に陥っているからだと思える。

「家父長制」を強いられた、また農作業労働を中心とした協調社会が経済ベースにあったが、居住の自由と工業化の進展により、従来農村部に存立していた宗教的中心性は全(まった)き迄に破損し、各種の「祭り」という共同作業でのみ存続し続けてきた。今や少子化の進展・高齢化の拡大で実行の担い手が減少し、徐々に形骸化が進行しているが、宗教精神とは無縁の観光化で形態が存続しているに過ぎない。

上述の長期にわたる観察結果から、2003年に地域デザイン研究会の中に「町と宗教施設の間の新たなる展開の研究」を目的とした分科会の設立を提案し、理事会の承認を得て分科会を発足させました。この正式な長い名称では読み上げにくいし、親しみを持たれなくなるのを危惧し、分科会初会合の折に愛称募集を行ったが応募がなく、全体の状況を鑑み、関連する状況から「STUDY21」を提案した。分科会メンバーからも承認され、以降現在も用いております。(その由来を記すと長くなるので、今は割愛させていただきます。)

研究を進めるに当っては、分科会会員はほぼ全員が都会居住者であって、地方の実情に不案内であるため、

1.地方における宗教行事を見学する。 

日本における宗教は、中近東で発生した想念で創った神なるモノをひたすら信じることとは異なり、巨樹・巨岩・奇岩等に不可思議な力が存在するというフェティシズム的であること

2.地方の自然現象結果を訪問し得られてきた由来を考察することとし、それらが何らかの大地運動を生じたパワーの源とし、

3.地質とパワースポットの関連を考察するという3本柱で考察することとなった。

ここで以上の成果を総括するべき時となったが、私事ながら、6年前から「リンパ腫」にかかり、積極的な活動が行えず、不本意な終焉とならざるを得ないのは、誠に痛恨の極みです。


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