「まちづくり」−その定義は…?

東洋技研コンサルタント(株)柳田保男

 「まちづくり」という言葉は、文献1)によると、1978.12.に発足した神戸市真野地区の「まちづくり運動」として使用されたことに始まり、1970年代前半では区画整理事業による整備を指し、1970年代後半からは、自治体の福祉に関する指針・計画の中で標語的に使われた、とされている。また、地区レベルの「まちづくり」は、文献1)及び2)によると、1960年代の高度成長において生じた公害などの生活環境の悪化問題を解決するための小学校区単位のコミュニティづくり、あるいは居住環境が同質性の環境整備運動として始まり、1980.5.の都市計画法における地区計画制度の創設による「まちづくり条例」の制定を背景に、更なる展開をみることとなった、とされている。

 また、特定非営利活動促進法(1998.3.25.法律第7号)(以下、NPO法という。)において、第2条(定義)の別表三に「まちづくりの推進を図る活動」なる字句が用いられていることは、みなさまのご存知のとおりであり、これでもって、「街づくり」なる字句の減少(といっても、これに固執されている方も多くおられるが)が加速していくのではないかとも考えられるが、それはそれとして、いまの悩みは、「まちづくり」なるものの定義を提示しなけれ
ばならないことになったことである。

 というのは、筆者の属する「上野地区ジョイントまちづくり研究会3)」の原点である「住みたいまち」のコンセプトは、自治会を始めとする地域諸団体、つまりこれまでの、「まちづくり」なるものの各パ−トを担ってきた方々の意見を集約して、「緑・水、共生の、そして安全な」と設定されている(これは、「住みたいまち」の絶対的条件といえることからも合意を得たものである。)が、この「まちづくり」なるものは、上記のような、これまでの狭義の「まちづくり」の枠を越えたものであることは明らかであり、NPO法の第2条別表に揚げられた活動をすべて「まちづくり活動」と定義していることになっている。

 限られた紙面であるので、上記の「まちづくり」なるものの各パ−トとNPO法の第2条別表との関連については省略するが、別表は、いわゆる縦割り行政による「まちづくり」の項目を羅列(?)したものであり、住民の立場からの「まちづくり」は、これらを網羅(コ−ディネ−ト)するものであるべきであろう。ロ−カリティによる程度の差はあるにせよ、「住民(市民)参加」=「住民のための、住民のための、住民の」の「まちづくり」のためには、行政と住民との協働(コラボレ−ション)などという手法あるいは手法以前に、「まちづくり」の定義が不可欠である、と考えるものである。

 参考文献
1)神戸大介/伊藤史子/渡辺俊一:"都市計画分野における「まちづくり」の展開過程〜1970年から1994年まで"、日本建築学会大会学術講演梗概集分冊F-1、1998.7.、pp167・168

2)田中晃代:"「地区まちづくり」における住民参加の形態に関する研究"、同上、同上、pp285・286

3)"上野地区ジョイントまちづくり研究会の歩みNO.1(1999.12.05〜2000.05.13.)"、2000.6.、78p


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