思えば遠くへ来たもんだ

〜神戸駅周辺編〜

創造計画 金城 昌幸

 昨年10月に、我が「創造計画」の事務所を、大阪市中央区内淡路町から神戸市中央区古湊通に移転し、少し慣れてきたかなあと思った年末に突然、潮騒の原稿依頼が飛び込んできた。その依頼内容は、「思えば遠くに来たもんだ」ときたもんだ。何かの間違いではと編集委員に聞くと、間違いないそうである。自宅が神戸市垂水区で、自分自身としては「思えば近くに来たもんだ」の感覚であったのだが・・・・・・。


写真ー1:兵庫県里程元標


絵図ー1:蒸気車相生橋の図 長谷川小信作


写真ー2:相生橋付近を走る陸蒸気
相生橋から東方を望む。明治中期


写真ー3:かつて相生橋があった場所
昔は鉄道が道路の下を走っていた。

 ではでは、ご紹介。事務所のある古湊通は、JR神戸駅の北西に位置し、徒歩5分程の距離で、有馬街道(国道428号)に接したまちである。近くには、楠木正成他を奉る地元の人に「楠公(なんこう)さん」と親しみをもって呼ばれる湊川神社(明治5年創立)や昔の若者の憧れの新開地、今の若者の憧れの神戸ハーバーランド等がある。また、三大「原」と呼ばれた遊
郭の跡である「福原」(あとは、江戸の吉原、京の島原)も近くにある。現在もその名残はあるが、なかなか利用できない?今日この頃である。

 湊川神社の正門前に兵庫県里程元標という高さ3mほどの石柱が建っている。碑の側面には県境や県内の各地までの里程(距離)が刻まれている。(写真−1)明治7(1874)年、神戸〜大阪間に初めて鉄道(現在のJR)が走ったとき、元町通から多聞通へ通じる道は鉄道によって分断されてしまうことになった。そこで、鉄道をまたぐ木製の橋がつくられ、相生橋と呼ばれるようになった。最初は、歩行者しか通れない橋だったが、明治22(1889)年に鉄の橋に架け替えられ、荷車なども通れるようになった。明治43(1910)年4月には神戸に初めて開通した市電も、この橋を渡った。当時の市民は「川がないのに橋がある」と大変珍しがり、また橋の上から陸蒸気を眺めて楽しんだそうである。

 兵庫県里程元標は、明治43年2月に相生橋の西側に建てられたもので、神戸から各地までの距離を測るときに起点となる重要なものである。また、旅人にとっても大切な道しるべとして長年親しまれてきた。

 

 やがて、産業の発展に伴って列車の本数が増え、昭和初期には一日約190本に達した。踏切での混雑がひどくなり、昭和6年、鉄道は現在のように高架の上を走るようになり、相生橋はなくなることになった。標柱も同時に撤去されたが、昭和35(1960)年にもとの場所から約150m離れた湊川神社前に移設され、現在に至っている。

 また、神戸の中心地は明治の開港以降、現在のJR兵庫駅付近から、神戸、元町と徐々に東へ移動していった。現在は三宮地区が都心部の座を占めているが、商業地に関しては、阪神淡路大震災の影響で、三宮の一極集中の構図が崩れ、元町とハーバーランドの地位が急浮上している。

 三宮は神戸の玄関口であり、JRや阪急、阪神の三宮駅を中心に広がるいわゆる駅前商業地であり、ファミリーを中心に幅広い層の買い物スポットである。

 一方、元町は異国情緒あふれる古い街並みの中、高級ブティックなどファッション性の強い専門店などが立ち並ぶ大人の街という性格付け。港を眺めながら買い物や食事ができるハーバーランドは若者たちのデートスポットとして、県内はもとより他府県ナンバーの車で活況を呈している。

 このように三拠点はそれぞれ個性に磨きをかけ競演し、それが相乗効果を生み出し、震災後の街全体の新たな魅力づくりと集客力強化に一役買っている。

 神戸駅周辺でも、南側のハーバーランドに影響されて、北側の店構えも徐々であるが変化してきている。

 中高年のグレーっぽい感じから、若年向けとまではいかなくても街の色がクリアな感じとなっており、若い女性の姿もちらほらと見かけられるようになった。

 ちなみに、地元では(関西でも?)ハーバーと呼称しており、確か女性のディオグループの「花*花」がテレビで「以前、ハーバーによく行くの」と言った時、東京のアナウンサーが一瞬戸惑って「横浜の」と答えていたシーンが思い出される。

 最後になりましたが、仕事や遊びで神戸駅に立ち寄る機会があれば、是非ともご連絡下さい。この場を借りて、移転通知もさせていただきたいと思います。

 取り留めのない雑感を書き綴りましたことお詫び申し上げつつ、今日はここまで。

●創造計画の新連絡先

〒650-0026
神戸市中央区古湊通2-1-20(アトラス調査設計内)
TEL 078-362-6501
FAX 078-362-6502
E-Mail capakane@mb.infoweb.ne.jp

(参考として)

1.「こうべ市制100周年記念誌」より転載

2.「日経都市シリーズ 神戸」(日本経済新聞社編)

3.神戸市役所ホームページより転載


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