品 格

域デザイン研究会代表 平峯 悠

 21世紀を迎え都市の未来を展望しようと考えていたが、最近の世情があまりに情けないので、タイトルを「品格」に急遽変更した。

 昨年の雪印乳業及び三菱自工問題、お粗末「加藤の乱」に引き続き、今年になってのKSD問題、外務省機密費流用事件など開いた口がふさがらない。

 戦後50年の間に蓄積された政治的・社会的な欠陥が益々増幅されると同時に、日本の社会が持っていた「品格」「品位」が失われつつあるというほかない。

 まさに品格がない、品位を欠く、品性が悪く下劣な事件ばかりである。管子に「衣食足りて礼節を知る」とあるが、日本は豊かになって逆に社会が悪くなっているのではないだろうか。

 品位とは人に備わっている人格的価値であり、品性は人の性格を道徳的価値として見る場合の呼称である。一方、品格と言うのは物の善し悪しの程度、品位、気品を言い、人間のみならず社会全体や都市、地域に対しても当てはめることができる。日本社会の原理(社会の拠ってたつ根本法則)は侍社会の躾だと言う人が多い(司馬遼太郎他)。侍は雨が降っても走らず、道の真ん中を歩き、曲がり角は直角に曲がるなど本当に凛々しかったという。またある行為で恥を掻いたり、人に後ろ指を差される或いは笑い者になれば、死ぬほどの屈辱感をおぼえるなどという行動規範が社会の品格を保つ要因となっていた。現在は恥じをなくした大衆や世間体を気にしない人達にあふれ、拝金主義や拝金思想に麻痺してはいないか。多くの日本人はおかしいと感じている。

 品格があるというのを具体的に示すのは難しいが、品格のなさはどのような場合に生ずるかというと、@権力に媚びる、A大きいもの(組織・企業)を崇拝しそれに依存する、B自分の権利だけを主張し適わないと嫉妬する、C自立性がなく自尊心がない、Dごまかしがあり本物の心と価値が分からない、E金銭を崇拝する等である。これらは程度の差はあるとしても人間誰でも心の奥底に持っている。しかしそれが表に出ないように修養し、努力しているのである。分別のある年齢に達しているにも関わらず情けない人生の結末を迎え、また政治屋が何時までも破廉恥な行動を繰り返すことを許せば日本の将来是非品格のある社会となるための行動原理を作り上げねばならない。現在、日本は経済的・物質的には豊かであるのに豊かさが実感できないといわれるのは品格の問題だと思う。お金がなくとも豊かに暮らしている人々は多いが、「貧すれば鈍する」という諺があるとおり品性がさもしくなる場合もある。財政難に陥った地方自治体が今後まちづくりに対してどのような役割を果たすのかが問われるが、品格のある地域を創るためには上の@からEの逆を行えばよい。即ち中央や権力に頼らず、自立した住民やNPOを重視し、本物で個性ある地域づくりを支援することである。このような地域や都市からは優れた文化や人々が育つと考える。地域デザイン研究会が非営利活動法人となったが、しばらくは経済的に苦しいと思う。しかしこれからの地域づくりのため品格のある法人として機能していきたいと願っている。


HOME   潮騒52号目次

inserted by FC2 system