分科会報告

第2回・まちと中心機能

主査 申出和人(アジア航測(株))

 人口減少及び少子・高齢化社会の到来により、「都市の拡大・発展」という流れや「都市の中心のあり様」に大きな変化をもたらすものと思われます。このような中、郊外型の大規模ショッピングセンターの増加に伴い、駅前(中心)商業地の衰退がすすんでいます。

 当分科会では、都市の中心の役割を考えながら「都市の中心とは」「そのための中心機能のあり方は」などについて研究活動を進めています。

 これまでの取り組みとしては、98、99年度においては「まちの活性化・都市デザイン競技」への応募活動をする等、分科会の中でも一風変わった活動を行っていましたが、現在は分科会のテーマに沿ったフィールドワークや話題提供を主な活動としています。平成12年度は6回のミーティング(話題提供)と3回の現地フィールドワークを行いました。(別表「平成12年度の取り組み」をご参照ください。)

 この中で少し前になりますが、3月に行いました伊丹市のフィールドワークについて少しご報告したいと思います。


白雪ブルワリービレッジ


懇談会


アイホール

 伊丹市(伊丹郷町)の歴史は古く祭良時代には既に開けていたと考えられています。南北朝時代は伊丹氏の城下町として繁栄、その後落城するも、旧城下町は町人を主体とする郷町として更に発展しました。伊丹郷町とは伊丹村を中心とした15ケ村の集まりの総称で、江戸初期は幕府領でありましたが、1661(寛文元)年に10ヶ村が近衛家領となり、摂関家に保護される形で酒造業が栄えました。盛時には80軒近い酒造家が軒を並べたといわれています。江戸では大阪の方から来る酒は下り酒と言われ、中でも伊丹の酒は丹チョウと呼ばれ(伊丹酒の代名詞)トップブランドとしてもてはやされました。このような歴史的背景をもつ伊丹市について、「芸術文化を中心としたまちづくりの歴史」をテーマに現地フィールドワークを企画しました。まず、ハードとしては歴史的建築物の再現と周辺整備の現地視察。ソフトとしては演劇やダンスなどの多くのワークショップを主催し、まちの活性化を進めているということで、当分科会の山根さんにが参加されていた演劇のワークショップの公演を鑑賞することにしました。

 まず、伊丹市の片岡主査に案内をしていただきながら、旧岡田家住宅や旧石橋家住宅の改修工事現場を視察しました。歴史的な建築物を集合させた背景等について、まずは宮ノ前(商店街)地区の活性化を考えるということから、若手の商店主らとの協議会を設置し検討を進めたということでした。そして、市の体制づくりは、都市景観、道路、その他あらゆる分野の担当者を集めてプロジェクトチーム(各セクションのバリアフリー化)により検討を進められたということでした。同時期に、旧石橋家住宅が都市計画街路事業の実施のために移転を余儀なくされており、市の文化財に指定し、旧岡田家住宅の隣に移設することに決定、地下を美術館として利用することとされ、管理棟とあわせてこの3施設を中心にして歴史的な修景整備を進めておられます。

 現地視察の後、片岡主査を交えて懇談会を行いました。懇親会の会場である長寿蔵は、白雪ブルワリービレッジの1階にあり、2階は”日本酒博物舘”になっています。市からも伝統的な酒造りの道具などを提供され展示されています。片岡主査から事業を進めるに際しての苦労話や裏話、またご自身の夢の話などを聞かせていただくことができ、大変盛り上がりました。

 第3部は今回のフィールドワークの目玉?でもある演劇鑑賞。当分科会の副査の山根さんが奉加しておられた「伊丹市演劇ファクトリー」の【出荷】公演です。現地を視察して、実際にその芸衝・文化に触れるというこれまでにない新しい企画。参加メンバーは演劇鑑賞初体験者ばかりで少々とまどいもありましたが、そこは何事にも挑戦ということで会場であるアイホールヘ向かいました。席につくと、前傾した舞台、奇抜なセット(マネキンがいっぱい!)にまず驚き、開演すると現在と近い過去を何度も往復する忙しいストーリー展開について行けず、何がなんだかわからないまま終わってしまったという感じでした。

 伊丹市のまちづくりの歴史を知ることができ、今日演劇ホールの運営や数々のワークショップが行われていることについて少し理解することができたような気がします。また、芸術文化を中心としたまちづくりの一端を見ることができ有意義なフィールドワークでありました。

 このように、テーマの固さ?に関わらず楽しいフィールドワークや皆さんが興味を持っておられる話題を提供し、「楽しくためになる分科会」にしたいと思っています。今年度は別表「平成13年度活動テーマ・スケジュール」のとおり活動を予定しておりますので、当分科会の会員に限らず多数のご参加をお待ちしております。


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