ヨーロッパ大遠征記顛末記(II)

阪神高速道路会団 中尾恵昭
守口市     吉川 一典

スペイン(バルセロナ)

1月7日9;40TK(トルコ航空)1853便イスタンブール発

   12;10プラット空港着

 イスタンブール、アタチュルク国際空港から飛び立った我々は、737−400型ボーイング機で紺碧の地中海沿いのニ一ス、モナコなどコートダジュール地方を眼下に、3時間でスペインはバルセロナのプラット国際空港に到着した。空港の広さは関西国際空港の倍くらいに思われた。両替後、一泊分の荷物を残しスーツケースを空港に預け、タクシーで市内へ入る。初乗り355ペセタ、あとは25ペセタずつメーターが上がる。(レートは100ペセタ=60円)。

 バルセロナの旧市街の中心地であるランプラス地区に向かう。バルセロナはカタルーニヤ自治洲の州都で、スペイン国内でも独立心旺盛でサルダーナの民族舞踊が盛んであり、ランプラス地区にはコロンブスがアメリカ大陸発見後、時の女王に報告の儀式を行った「王の広場」や街の中心である「カテドラル」、「ピカソ美術館」が立ち並び、建築家ガウディーの良き支援者であったグエル氏の邸宅やレイアール広場などが集中している。

 一方、バルセロナ港周辺にはコロンブスの記念碑や再開発とPFIで運営しているショッピングセンターの「マレマグナム」、ヨットハーバーや高層住宅があり、遠くにはオリンピックのメインスタジアムがある「モンジュイックの丘」が見える。

 ランプラス通りのリセウ駅から地下鉄3号、4号線を乗り継いで(150ペセタ)、パリョカルカ駅のグエル公園こ向かう。地下鉄には改札といったものが無い。

 そして街の通りには電柱が一本も無い。どんな狭い通りにも建物の壁面にフックが取り付けてあり、そこに架線をかけ、その架線に照明灯がぶら下がっている。

 グエル公園は、丘の斜面を利用してつくられており、巨大なオブジェ、原色のタイルを使ったモザイクが眩しく、曲線が連続して波打っている。公園の展望台から市内を見ると、近代的なビルの中に石造りの建造物、カテドラルが点在する街並みが形成されており、そこは歴史も古く十字軍時代まで遡る。

 ここは若い男女のデート場所らしく20才前後の女性が目立つ。日本で流行前の股上の浅いジーンズにハイレグのTバック、それも原色のレース柄。それがまた、この街によく似合う。

 サクラダファミリア=写真=に向かう。天を突く建造物はガウディーが残した模型を基に建築が進められている。

 これは何ということだ。どう見ても周りの情景から完全に浮かび上がっている。そこだけが異空間。驚きを通り越して笑ってしまった。どこまでやったら気がすむのか、どうにでもしたら、と思ってしまう。

 1882年に着工した工事はまだまだ完成する気配は微塵もなかった。

 建物の入口部の尖塔内には一人がやっと昇れるらせん階段があり、最上部に出ると隣の尖塔に渡れる橋があり、目もくらむ高さに石だけで積み上げた橋はスリル満点。よくまあ、こんなものを創ったものだと再び呆れる。現物を見なきゃ実感できない。

 グラシア通りのカサミラで夕暮れを迎え、ライトアップされたパトリョ邸、アマトリェール邸を眺め、カタルーニヤ広場を経てランブラス通りに出ると大勢の人の流れに飲み込まれた。カテドラルで新年最初のミサに訪れる人たちであった。重量感のあるパイプオルガンの響き、数千本のロウソクの炎、祈りの余韻に浸りながら荘厳で壮大な中世ヨーロッパの大海運帝国の中心地にタイムスリップしたような気がした。

 夜8時過ぎからフラメンコ=写真=を鑑賞する(4500ペセタ)。本物の民族の躍動。魂から発散される強烈なエネルギー。髪の毛一本一本からほとばしる汗。ダンサーが自分の与えられた時間の中で最大限の自己主張をし、そして自ら楽しみ、そして酔いしれている。震えが来そうだ。何とも血が宴ぐひとときであった。20世紀のスペインが生んだ3人の巨匠、ピカソ、ミロ、ダリの共に対する飽くなき情熱と従来の概念をうち破るエネルギーに通じるものを感じた。

帰りのランブラス通り。突然パトカーのサイレンが聞こえるとともに銃声がこだまし、大勢の人の流れが乱れ、散った。すると1台の事が並木道の歩道に乗り上げ暴走する。それを追うパトカー。まるでカーチェイス。巻き添えをくって流れ弾に当たってはと、必死で路地に逃げ込む。暴走した事は屋台を壊し、街灯にぶつかってやっと止まった。銃を片手にその事を取り囲む多数のポリス。幸か不幸か、どぎまぎする一瞬に遭遇した。

 気を落ち着かせてホテルに向かう。ランプラス通り沿いの二つ星。気のいいおばさんが救いであった。

 次の日の朝、ランブラス通りのカフェでアルコールを引っかけ、軽い目まい、幻想を覚える。みやげはカタルーニヤ陶器の皿とタイル。そして天子ストライカー、リバウドが在籍するリ一ガ・エスパニョーラ、F.C.バルセロナのキーホルダー。

 異端美を生み育てた都市、バルセロナをあとに、次の都市、ハプスプルグの王都オーストリア・ウインに向かう。

(つづく)


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