まちづくりって、何ですか?

茨木市都市計画課 青山若葉

「まち」というものに興味を持ったのは、いつ頃なのでしょうか?

実は私の場合、大学の建築学科に在籍していながら、最初はまちづくり・都市計画という言葉を全く知りませんでした。身近に都市計画の勉強をしているものがいたので、『そんなものもあるんだな』とは思っていましたが、当時、都市と建築の関連なんてあまり考えずに勉強しておりました。よくもそんな人間が、今、市民のみなさんに「まちづくりは…」とか言ってるなぁと思います。

学生時代の製図の課題でも、とりあえずは「集合住宅内のコミュニティはどのようにとっていこうか」とか、「公共施設の周りだから、人が気軽に立ち話できるような空間をとって…」程度のことは念頭にあったにせよ、それと外の関係までは考えにもおよびませんでした。というのも、学校から出された課題には「周辺にお年寄りがたくさん住んでいます。あなたは道路の幅をどの程度とりますか」とか、「ここは古くからの城下町の中にある土地です」とかの条件設定なんてなかったですもの。

当時、世間をにぎわしていたのが京都の景観論争でした。この問題について語り合ったりするうちに、結局は「一個の建物だけつくっても楽しくないなぁ」と感じながら、それでも「一個の建物では完結しないけど、一個の建物を考えることから始まるはず」とか思って建築デザインに走ったり、一方で「建築や都市という問題じゃなく、地球をベースとした空間構成だ」とか考えたり。

そんなふうにして、私の中の都市計画は、理屈っぽい、おもしろくもないところから入っていき、しかも自己中心的な思想にとらわれてしまったわけです。

そんなこんなで、それから何年かの歳月が過ぎ、私はある曲と出会います。今は亡きルイ・アームストロングの名曲「WHAT A WONDERFUL WORLD」です。ご存じない方でも、一度や二度は聴いたことがある素敵な曲です。「I see friends shaking hands.Saying how do you do. They are really saying I love you.…」(もう、今すぐ皆さんに聴かせたいくらいに、この曲の素晴らしさと言ったら!!!)。ある日、この歌を改めて聴いた時、「これだ!」と私は思ったわけです。

そして現在に至ります。

結局は、人々が毎日喜びにあふれ、こころ安まる生活ができることが大事なんじゃないか。こんなふうに言うと、「まちづくりって、結局はソフトのもんなんだよね」と聞こえかねません。この歌を思い出しては、人が心を込めてあいさつできるまちとはいったいどんなまちだろう。あなたのことを、私のことを、子供たちのことを優しい気持ちで見守れる生活ができるまちとは、どんなまちなんだろう。少なくとも、お互い顔を見せ合う場所はいるかな?「気持ちよく」いるためには、ストレスがあったらだめだよなぁ…。このように頭の中でいろいろ考えてしまうのです。そして、当たり前のように答えは出なくなる。やはりそこに住んでいる人の中にしか答えは見つからないのですよね。

私は今、都市計画という分野でまちづくりに関わる仕事につくことができたことを幸せに思います。そこで、私にできることとはなんだろうかと考えてみると、それぞれの人が、それぞれの中にある、心地よいまちとはどんなものなのかを引き出すこと。それをみんなで語り合う場所をつくること。そしてそれを実現できる方策を考えることだろうか。(ああ、もっと勉強しなきゃ…)。まったくもって、一般的な結論にいたるわけです。それがわかっていながら、いつもいつも同じようなことを考えているのです。

それはきっと、私自身の「WONDERFUL WORLD」をつくるためでもあるからです。


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