遅ればせの夏休み

アトリエK 伊藤可奈子

9月の下旬、友人と3人でハワイへ行って来た。はじめてのハワイです。人づてに話は聞くものの、ハワイといえば映画、BIG WEDNESDAYのサーフィン、NHK講座のフラダンスぐらいしか頭に浮かばなかった。ハワイに特に興味を持ったことも行きたいと思ったこともなかったからだ。

なのになぜハワイだったのか。昨年の夏、東京にいる友人から「小笠原へ行ってイルカと泳げへん?」と誘いがあり、「小笠原はいいなあ、乗った!その話」。しかし小笠原は遠い。竹芝桟橋から船で3日。天気が悪いと帰れないかもしれない。時間制限のあるわれわれには無理だと思った。しかしイルカとは泳ぎたい。白浜に行くか、太地に行くか・・・。しかし今離婚問題で悩んでいる友人はやっぱり海外がいいという。ではイルカはあきらめてバリ島でのんびりしようか。3人の意見がバリ島で一致し、早速航空券の手配、バリ島情報を集めにかかった。が、その時すでに出発予定日の8日前、航空券はどこも満席、パッケージツアーも空席なし。キャンセルも望めないとのことだった。

やっとネットで探したJTBのハワイ6日間¥8,5000(安い!)というツアーに空席があり、なんとか3人滑り込んだ。なんとものんびりした、いいかげんな仲間たち。

でもハワイにはイルカがいる!ぜひイルカと泳ごう!しかし申し込みが遅かったため、そのオプションもすでに満席。

仕方がない、今回は熱帯魚と遊びましょう。(後日談:バリ島にはいかなくてよかったとあのテロ事件のニュースをみてぞっとした。外務省の渡航情報によると危険度は結構高かったのだが、インドネシアのドル箱は大丈夫だと思っていた。でもそうではなかった・・・。)

さて、ハワイについてビックリしたことは、なんと日本人の多いこと。それに旅行会社のお膳立てが完璧で、それに乗ればなんの不自由もなくいろいろな遊びを楽しむことができる。(お金はかかるけど)パッケージツアーとはそうしたものだが、この至れり尽くせりには驚いた。それに英語を話すチャンスがない。話せないのだからありがたい話だが、どこでも日本語でOKなのだ。これでは景色こそ違え日本にいるのと変わりがない。ということは海外にいるあの緊張感がまるでない。まあこれだけ安くお気楽に来られるのだから日本人が多くて当然、いいお客さんだからあちらの方も日本語は商売に欠かせないし当然か。

そんなことを思いつつワイキキの通りを歩けば、心斎橋にビーチがくっついたような印象を受け、ベビーカーを押しながらまるで家の近所で買い物をしているような雰囲気の日本の若いファミリーが目に付く。こんな赤ちゃんを連れて海外旅行をするのかとビックリする私は当世ハワイ事情も知らず、やはりもう古くなってしまったのかとショックを受けてしまった。

気を取り直して潜りに行った。スキューバは面倒なので私はシュノーケリングと決めている。3点セットがあればどこでも潜れる。水着姿になるのはイヤだったが、出発前に友人が「あなたなんか向こうへ行けば太っているうちにはいらないわよ」。恐る恐るビーチへ出てみると、よかった!友人の言ったとおり。スマートなjapanese girlの側へは決して近寄らず、大きな外国人の側にいることにした。これで私の水着姿も目立たない。

ハナウマベイは、なんとも美しい景色だった。エメラルドグリーンの海、青い空、火山独特の山姿、山肌、パームツリー、そして強く澄んだ光。どれをとっても美しいとしかいいようのない景色だった。が、海の中は景色と裏腹。

とても透明度が悪い。確かに魚の種類は多かったし、大きなウミガメやウツボとも遭遇したが、水がとても濁っている。珊瑚は瀕死の状態に見えた。このビーチに入る前、使用心得のレクチャーを受けたが、年間100万人もの人がこのビーチへ来るそうだ。そらあかんで・・・、水の中に入って納得した。自然を売り物にした観光の限界が来ている。

自然を守れば経済が歪む。しかし人が来れば来るほど自然は荒れる。なんとも言えぬジレンマ。

それにこれだけの人を受け入れるホテルやレストランの毎日吐き出されるゴミの量はどれぐらいのものなのだろうか。瓶も缶も普通ゴミも同じ袋に集めて回っていたし、このゴミたちはどこでどうやって処分されるのだろうか。ハワイは島の地下全体が大きな浄化槽のようになっていて、長い年月をかけて地中深く降りた地下水をくみ上げて飲料水にしているそうだ。「だから、水がうまい!」とバスの運転手さんが言っていた。道路には側溝がなく、雨水はすべて地面に流れ込むしくみになっていて、歩車道縁切りブロックの所々に穴があいている。では、汚水はどう処理されているのだろう。ハワイには川がない。各施設がそれなりの設備を整えているはずだが、日本の概念でいくとちょっと気になる。

ワイキキから少し離れたビーチでは、人があまり入らない入り江に水上トイレがあった。簡易処理だけで海に流しているのか、その入り江全体が水の色が茶色くなっていた。

華やかで美しくリゾート気分を満喫させてくれるハワイの表の顔の裏側は、なにかをいじめていじめて化粧崩れをおこさないよう必死で我慢している生き物たちの無言の声が聞こえてきそうだった。オアフ島は小さな島だ。

成り行きで行ったハワイだったが、いろいろな問題提起をしてくれたハワイでもあった。素晴らしい自然に身を置きたい願望はあるが、もうこれ以上自然に甘えるのは考えたほうがいいのかもしれない。


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