イタリアモードのお正月

クリヤマ株式会社 白井良夫

今年の正月は長男がイタリアから帰国する(フイレンツェに画家修業中)とあって、横浜の我が家で久しぶりに家族そろってのんびり過ごすつもりであった。

ところがである。イタリアの友人が長男を頼ってやってきた。1月から横浜で語学学校の講師になるFRANCESUCAと、その友人のSARA(弁護士)と夫のMICHELE(ITエンジニア)の女性2人、男性1人の計3人である。

ふだんは妻と子供2人の我が家が、私と長男そして3人の珍客で人口密度が一挙に3倍近くになった。受け入れ準備は天地逆転の大騒動。広くはないが3人でゆったり使っていた我が家の片付け、そして部屋割り。そのうえ、近年すっかり忘れていた日本の正月を経験させたいとの思いがあれば尚更である。10日間の滞在期間中のハプニングや想い出は尽きないが、紙面の限り書き綴ってみたい。

生活習慣、文化の違いはとても大きい。

<マイ・サンダル持参>

イタリアの浴室は床がよほど広く冷たいのか、それとも不潔なのか。脱衣室に濡れたサンダルが3つ、所狭しと並べられている様は異様。はるばるイタリアからマイ・サンダルを持ってきた執念には頭が下がる。

<ファッションの国>

さりげない着こなしがなんとも言えない。さすがファッション先進国だ。化粧にはたっぷり時間をかけるがあまり目立たない。日本人も流行にとらわれず個性を大切にするファッションセンスをもっと磨きたいものである。

ただ習慣の違いか、香水の匂いがきついのにはいささか閉口気味である。もっとも日本でも近ごろは、過激な臭害をまき散らす女性が目立つようになった。

<朝食はいたって質素>

ビスケットかコーンフレークに、コーヒーか紅茶が基本。サラダをはじめいろいろ準備するが、あまり召し上がらない。私なりの分析は、夕食が遅いお国柄、おのずと朝は食欲が無く簡単に済ます、といった悪循環に陥ってるのではないか。健康に良くないよと余計な心配をしている次第である。

<予定は未定>

おおらかなスケジュールで、決して急がない、あわてない。朝(というか声を掛けなければほとんど昼近く)起きてから、どこに行くかを決める。限られた滞在期間を有効に過ごすために前もって計画したらと思うのが日本人。もっとも私もこの頃では、少しはケセラセラの生き方を身につけねばと思うようになっている。

<人なつっこい国民性>

表情、身振りが豊かでにぎやか、とても会話好き。食事中もBUONO(美味しい)とありがとう(GRAZIE)の連発で話が弾み、食が進み、そして連夜の深酒となる。八景島のカウントダウンで新年を迎えた瞬間、そばにいる人と抱擁の挨拶。ぎこちなく女房と私も参加することに。

とにもかくにもこの年末年始の9連休はイタリアモードで明け暮れた。我が家に大きな刺激と活力を与えてくれたことは間違いない。

ところで、国際観光白書2001年版によると、国際観光の規模は世界中で6.6億人を超える人たちが国外旅行に出かけ、世界中のGDPの1割以上の3兆6千億ドルに達するという。観光は世界最大規模の産業だそうだ。その中で世界第2位の経済大国の日本が、訪問先としては第36位なのがいかにも寂しい。日本では産業としての観光に対する評価はまだまだ低い。日本が今後一層人口減少し需要が停滞することが予測される中、需要拡大の有効な対策の1つとして観光産業を位置づけるべきだと考える。海外からいかに多くの人を日本に呼び込めるか、いかに魅力ある日本にするか、快適な居住性をいかに確保するか、この視点からの街づくりが大切となってくる。

アジアと欧米の文化が交流する真に開かれた文化大国・日本、なかでも特に文化遺産の集積する関西、そして我が地域デザイン研究会の果たすべき役割は大きい。

新年を迎えますますデフレ不況という活字が行き交う昨今ですが、視点を変えれば夢は大きくグローバルに膨らんでいきます。

我が家のイタリアモードの正月体験記から、最後は日本のあるべき姿、研究会の役割へと強引に結びつけることになりました。


HOME  潮騒目次

inserted by FC2 system