陰陽五行思想と都市の様相

ア−キタイプ工房  渡邉康人

妙なタイトルですみません。ちょっと陰陽五行思想に興味がありまして。最近、人間が引き起こした環境問題はもとより、近い将来の大地震、大噴火、地軸のシフトなど、地球規模の天変地異の危険性が現実味を帯びて指摘されています。人間も自然の一部であり、自然の摂理に沿った生き方が一番望ましい。いや、自然の摂理にとらわれない生活というものはあり得ないのだということを感じます。

ご存知のように、陰陽五行思想は、中国古来の思想で、自然の摂理を体系立てた学問です。森羅万象を「陰」と「陽」に2分類する陰陽二元論と、万物のエネルギー(気)は5つの状態で循環しているという五行説が融合したもので、これで全ての事象や時間までもが説明されます。

季節変化がある地域だからこその発想だなと思うのですが、よくできています。呪術、東洋医学、易、風水などは全て、陰陽五行がベースです。

現代でも日本文化のあらゆる面に浸透しています。生まれ年のえと、あるいは、午前・正午・午後の「午」のように無意識に使っています。また、正月、節分、ひな祭、土用のうなぎなど、古くから伝わっている年間風習行事や祭りなど神事は全て、春夏秋冬の季節が順当に巡ってくることを願い、それに合わせて、健康な生活が営めるようにと願う呪術なのです。恒例行事にして全国民が同時に祈れば、呪術効果がより高まるというわけです。

米や作物が収穫できなければ、すぐ飢餓に陥った昔の人にとっては、春は春、夏は夏というように、ちゃんと季節が巡ってくることが最重要だったのですね。

ところで、この陰陽五行は、都市計画にも生かされました。周知のように、平安京、江戸城などがそうです。平城京から平安京へ移る間に10年間ほど、今私の住んでいる長岡京に都があったのですが、10年で長岡京を捨てた理由が不明とされています。しかし、これも方位呪術の方違え(かたたがえ)で説明ができるそうで、あらかじめ計画された予定通りの行動だという説もあります。

良い波動(磁場エネルギー)が集まる「四神相応の地」を選んで平安京は造営されました。御所の真北には丘陵(船岡山)、東に流水(鴨川)、西に大道(三陽山陰道)、南に沢畔(昔の小椋池)。さらに、東北方向に比叡山延暦寺を配して表鬼門を封じています。ちなみに、京都を地図で見ると左京区が右(東)、右京区が左(西)にあるのはなぜかご存知ですか? 古来中国では、天帝は北に位置するとされるので、天子である天皇は北に位置し、御所から南方向を見たとき、右手が右京区、左手が左京区になるのです。こうして遷都以来今日まで、1200年以上も栄え続けている都市は世界的にもまれです。

家康の江戸城も同様です。北方に麹町台地、東方に平川、南方に江戸湾、西方には東海道で、四神相応の地です。そして、表裏の鬼門封じに東叡山寛永寺と日枝神社。今日の皇居は、いまだに霊的にも守られているわけです。

各地の城下町なども四神相応の土地であることが多いようです。単純に、北に山、南に大きな水面と考えれば、栄えている都市は、太平洋側、瀬戸内でも山陽地方ですね。これも自然の摂理。太陽は、東から上がって南を経由して西に沈む。地からのエネルギーと共に、天の太陽からのエネルギーを充分に受け取ることができる場所が栄え、山の陰になる山陰地方や北陸地方は、発展しにくいということです。

また、家相は、東南方向に玄関があるのが最高で、西に玄関がある家は、お金が貯まらないなどといいますが、これも、早朝の太陽エネルギ−を充分得ることで栄え、日没は、エネルギ−衰退、あるいはエネルギーを吸い取られるということで、玄関の位置を最も重視するのです。

四神相応かどうかは知りませんが、関西の高級住宅地である芦屋は、東方は大阪平野、南方は海ですから遮るものがなく、早朝から午前中にかけて登ってくる太陽エネルギ−を充分に受けることができます。午後は、西方の山により強い西日が早くから遮られます。高級住宅地となる要因の一つです。

まちの中にも方位と様相の関係があるそうです。列記しますので、古い地方都市へ行く際は、意識して町中を歩いてみて下さい。

駅周辺など中心地は、意外と汚物やゴミが多い(早朝の繁華街を見るとわかりますね)。中心地から北へ行くと、川・酒・金銭など水に関する場所や店がある。東北方向は、社寺・菓子店・行き止まりがある。東方は、うるさい場所で商店街や電器店などがある。南東方向は、表通りに面しにぎやかで、運送屋・郵便局などがある。南方へ行くと、日当たりがよく、明るい住宅地・交番・書店がある。南西方向は、静かな場所・甘味店・平地・田畑がある。西方は、窪んだ土地・池・沼・喫茶店・飲食店がある。北西方向は、立派な土地や建物・丸いものを扱う店や会社があるのだそうです。どの程度当たっているでしょうか。


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