まちとゆとり×居住分科会FW報告

春の淡路景観園芸学校へ

主査 尾花英次郎

4月12日(土)、曇天に小雨がパラつく正午過ぎ、JR舞子駅に集合。高速バスで明石海峡大橋を渡り岩屋ポートターミナルまでわずか15分。岩屋からタクシーに分乗し向かった先は「兵庫県立淡路景観園芸学校」。

淡路島北淡町において平成11年4月に開校、花と緑、自然と共生し、快適な生活環境の創造をめざす新しい概念「景観園芸」の専門家を養成、輩出している。

訪問のきっかけは、当分科会メンバーの伊藤さんが昨年度、この景観園芸学校の「まちづくりガーデナーコース」を修了されたことから。昨年末には、同校内のNPO「アルファ・グリーンネット」理事長(当時)の浅原氏を講師に迎え、学校の理論・技術をベースに実際に街に出て花と緑を広げる取り組みについて、豊富な経験談を交えながら話題提供をいただいた。春の花咲く頃に現地を訪問したいとお願いし、同校平田富士男教授の快諾を得てフィールドワークが実現した。

平田先生は、姫路工業大学自然・環境科学研究所教授を併任されており、景観マネジメント部門で花と緑のまちづくり研究室を率いる専門家。米国社会で活躍するMaster Gardener を目標に、実際に街に出て緑化技術等を駆使し地域を活性化していくリーダーを育成したいと語られた。印象的だったのは「知識や技術の習得だけではダメ。リーダーシップを発揮し、街に出て世間の評価を受けることが大切。」とあくまでも実践重視の姿勢を貫かれていたこと。

同校修了生の活躍は、JR芦屋駅周辺での街区公園の復活や、自閉症児童への園芸療法の実践、ケナフ炭化を契機とした移動式炭焼器の開発、オープンガーデンネットワークの展開など、多種多様。しかも、皆さんが、確固たる目標を示し粘り強く行動するリーダーであることに目を見張った。

討論の後、NPOアルファの方々に、花と緑で彩られた学校敷地のご案内をいただいた。見るだけでなく、触る・匂う・聴くなどの五感に働きかける庭づくりや、園芸を活かした療法の研究コースなど、新たな取り組みを窺うことができた。

同校の景観園芸専門課程(2年)は全寮制でハイレベルの実践教育を受ける。現代の街づくりを根底から揺るがしたあの阪神・淡路大震災、野島断層の間近で、全身全霊を景観園芸学に打ち込むのだ。眼前に広がる古里を絵に描いたような長閑な里山風景。ガイドの説明を聞きながら、平田先生から教えられた「景観園芸学」の定義を思い出していた。

「景観園芸学とは、生活・造園・園芸・土木・建築、そして産業という本来一体となって生活空間を形成すべき諸分野に互いの関連性を取り戻し、街づくりを経済優先ではなく、自然や風土を見つめ直し、人々の豊かな暮らしのあり方を創造する文化的行為として位置付けようとする新しい学問である」。これからの街づくりが経済性の物差しから転換し、自然や風土に根ざすことを願ってやまない。

《コース・プログラム》

@景観園芸専門課程(2年間) A景観園芸専門研修(1ヶ月〜1年) B園芸療法課程(1年間)Cまちづくりガーデナーコース:本科(延15日)、体験(3日間)、テーマコース(延4〜6日間)


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