PPP時代の政策評価

吹田市市民文化部長 冨田雄二

1. New Public Management

NPMの基本的思考(4原理)は、@行政サービスの内容や提供方法に関する裁量権を行政サービスの受け手である住民に近い組織に可能な限り移転させる。A市場原理と競争原理の活用 B行政サービス提供方法の統制基準の見直し。官の統制基準を残したままだと、PFIやエージェンシーを導入しても第3セクターと同じ失敗を繰り返す危険性がある。C組織改革NPM理論の実践過程では、Plan Do SeeのManagement cycleの導入が重要である。公的部門の全てに市場原理と競争原理を適用するイギリス型から、部分適用の北欧型など国状に応じたバリエーションがあります。

1997年に誕生したブレア政権は、第3の道(THE THIRD WAY)を志向します。PPP(Public Private Partnership)の制度化の取り組みが英国で本格化します。

NPMの考えを支える原則に「Best valueの原則」があります。@市場原理と競争原理の活用の活用は、手段であって、Best valueが確保されているとは判断することはできない。ABest valueが達成できない場合は、計画の速やかな是正に取り組み、その意思決定のプロセスも開示すること、などがあります。

都市経営は、文化・環境を排斥する関係にあるものではなく、文化・環境・コミュニティの成熟のために、経営論理がどうあるべきかが大事であって、市民によってスクリーニングされるものと思います。

2. Socially Responsible Investing(ウオール街投資理論の応用)

○Taxpayerの政策評価・・文化、環境からのスクリーニング

Socially Responsible Investing (SRI)とは、企業社会責任(CSR)により企業を評価し、投資行動を通じてこれを支援する運動で、企業の社会性、倫理性を評価して投資することです。言い換えれば持続的成長企業へのInvestment です。Buycot ,Green consumer 運動からスクリーニングによるInvestingと思ってもらえば簡単です。

投資の仕方で社会を変える運動でもあり、何に投資すれば、収益還元とStakeholderの社会的責任が果たせるかの問題でもあり、WallStreetのnew trendで、論文をまとめたのは、AMY DOMINIさんバリバリのWallStreetの高名な女性 Investment adviser です。

ポジティブスクリーニングの例としては、ISO14000シリーズ、9000シリーズ取得だし、ネガティブスクリーニングの例としては、軍需産業、タバコ産業があげられます。女性の雇用環境評価では、ネガティブorポジティブスクリーニングとして機能します。

課題は評価基準の客観性です。ダーティマネーでフィランソロピーをしてもマイナス評価点なのです。

企業社会責任(Corporation Socially Responsibility)はISO新規格になります。CSRは、企業が社会の一員として果たすべき社会的公正や環境への配慮を経営活動に組み入れていくことを意味します。法令遵守、消費者保護、環境重視、正当な雇用、安全衛生、人権擁護、社会貢献をシステム化することなのです。(02,07,09 日経産業新聞)投資の仕方で社会を変えるWall Streetのnew trendなのです。2000年7月の英国年金法改正により、基金運用の評価基準としてSRI評価基準が持ち込まれ、EU諸国もその加入条件としてGDPの3%を社会貢献投資など企業社会責任投資であることが求められる動きとなってきました。このような評価基準は市民による都市経営の政策評価に応用されていくと思われます。

3. 住民参加型公募債

低金利・銀行不信で、投資意欲を減殺されている個人金融資産を、地方公共団体に投資してもらおうという発想で始められたものですが、2002年3月の群馬県を皮切りに7月同県太田市、9月の東京都「東京再生都債」や大阪市の「みおつくし債」、10月の「こうべ市民債」など(02.9.12日経、02.9.17読売、02.12.13日刊工業)今後自治体にとって有効な資金調達手法の一つとして、都市基盤整備の自己資金であり、地元市民の投資に支えられた新しいまちづくり手法として取り組むだろうと思われます。自治体に対しては、投資家として、またタックスペイヤーとしてのSRIなりCSRの手法での政策評価が、試されることがそこまで来ていると思います。これからは市民から選別されることになり、真の意味での地方分権の厳しさを思い知ることになると思います。自治体は、Socially Responsible Investing (SRI)の評価基準を十分に研究し、NPMの有効な活用と分かりやすい政策評価を取り入れる準備をする必要があります。SRIの評価基準が単なる投資評価基準に止まらないからです。

4. 公共政策主体の多元性

先ほど申し上げた「Best valueの原則」に行政サービスの主体は公的組織に独占されるべきではなく、供給主体は民間であっても、なんら差し支えないとする原則があります。これは、公共部門の市場?開放の側面を強調するだけではなく、市民・企業と地方政府が、新たな価値を創造することに意義があると思います。

あたかもJAZZにおいて、ピアノ・ドラムス・ベースなどのそれぞれの音色がCollaborationによって、新たなサウンドが創りだされるようにです。

NPO・TMO・まちづくり協議会・民間事業者・地方政府が政策主体となり、それぞれが資金調達をしながら、あるいは補完しあいながらのまちづくりの条件は、揃い始めたように思う。その際に、市民の望まないまちづくりや、都市経営に文化、環境に配慮しないまちづくりは、投資家・納税者から厳しい評価を受ける時代がそこまで来ていると思います。


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