NPOだより

「西淀川地域沿道まちづくりに関する調査」
(2002年度)について

鎌田 徹

この調査については、昨年10月号で紹介しましたが、このほど2002年度の調査が完了したところです。

2001年度調査では、その最終章で、まちづくりのコンセプトとして、■ 最先端技術による西淀川環境地域の形成 ■ 新時代を先導するまちづくり ■ 地域からの計画づくり ■ 住民および地域伝統産業、西淀川に根ざす事業所による複合的地域づくり―を提案し、まちづくりの対象空間として、@幹線道路沿道地区A駅前地区B居住環境地区=居住・生活ゾーンC自然的環境としての水空間および緑地―を挙げています。

2002年度調査では、西淀川地域でのまちづくりの取り組み姿勢として、ブロックごとの「地区計画」、関連する「沿道地区計画」を策定することが第1ステップになると考え、4つの対象空間について当地区の関係者、特に住民が地区計画策定に取り組もうとするときの(合意形成していく)材料となる項目について調査を実施しました。

整理の仕方は、@なぜ当地区に視点を当てたか Aまちの「診断」と「処方箋」(例示)B地元の人々の意向は?(→意向調査事項)という順で行っています。これは、「沿道まちづくり」を行おうとする場合、道路管理者との「対決」という関係ではなく、住民自らのまちづくりイメージの共有、合意形成が必要条件であるため、専門家による「診断」と「処方箋」を示し、住民の意向を聞き、住民自身が動き出すことを促すことが必要だと考えたからです。

調査内容から、2〜3の例を挙げますと、1)「幹線道路沿道地区」の「府道大阪池田線」その中の「御幣島地区」(加島〜歌島橋)では、JR東西線が開通した影響で、沿道の工場系が集合住宅系へ大きく土地利用が転換されつつあるところです。

現状および診断としては、▽この道路は、香蓑小学校区、香蓑連合自治会区域の真ん中を通っており、地域分断となっている。▽集合住宅が立地したところは、前面に緑空間を配置するなど比較的環境に配慮されているが、電線が景観を損ねている。▽御幣島駅の前に、小規模低層住宅群があり、土地のポテンシャルが十分生かされていないところもある。

処方箋としては、▽分断から中心軸へ=当該区間は香簑小学校区、香簑連合自治会区域の中心となっていることから、分断とみなすより中心軸と捉え、地域の人々にとって親しまれる街路にする必要がある。▽街路と沿道との一体的な緑空間の創出=今後マンション等が立地する際に、前面に一定幅の緑地をとるよう地区計画で定めることが望ましい。歩道上の植樹の充実、中央分離帯の植樹。樹種の選定にあたっては住民参加のワークショップを行うことが望まれる。住民が望めば、アドプトロードとして空き空間をマウントアップし草花、低木等を地元に解放する。

2)駅前街区では、@車主体の交通から公共交通へのシフトしている時代の流れの中で、A西淀川区域では、鉄道4路線が通り、駅から1km圏内に工場地域以外の市街地がすべて含まれる。B阪神西大阪線の難波延伸事業も着手されている等、非常にめぐまれた鉄道交通網がある。

こうしたことから、鉄道駅周辺をまちづくりの要として注目した。

診断としては、西淀川区域内7駅うち4駅の駅前が生活の拠点として機能しており、その他の駅についても一部の拠点機能は持っている。したがって、駅を中心としたまちづくりを考えることが重要である。

処方箋の例示としては、▽駅周辺の集積魅力をアップすることは、多くの人が日常利用するエリアであることから効果が大きい。▽駅周辺に地域コミュニティのための施設を集積させることにより、駅勢圏の生活者(住民、企業)によるコミュニティの醸成へとつながっていくことが考えられる。▽鉄道駅および周辺がが、地域管理によるコミュニティ拠点へと発展していくことが考えられる。

上記のような「処方箋」に対し、住民側から見た意向を把握するための事項を整理しています。

<今後の進め方>・まず、「意向調査事項」を盛り込んだ住民アンケート調査を実施し、地域住民が、わがまちをどう思い、どうしたいのかを把握することが必要・私たちの「診断」と例示した「処方箋」および「アンケート結果」を材料に、住民主体の議論の場をつくる・交通実態、幹線道路による分断に配慮が必要な箇所等、さらに調査が必要な事項は並行して専門業者による実施が必要・道路管理者との建設的な話し合いの場づくり・地場の工場の技術を活かすための話し合いの場づくり・地域をリードする「草の根NPO」の育成―というようなことが考えられています。


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