まちづくり雑感

〜インフラ整備⇒住民参加のまちづくり⇒コミュニティ熟成〜

住友信託銀行 松島 清

【インフラ整備状況と生活施設整備

私の住んでいる宝塚市JR中山寺駅南地区では土地区画整理事業(約16ha)が最終段階を迎えている。この区画整理事業により、駅前地区は従前と比較して格段と交通インフラが向上した。以前は全くと言って良いほど、道路さえも無かった所に、3,000uの駅前広場(地下は2,500台の駐輪場)をはじめとして、既存市道宝塚長尾線と駅前広場を結ぶ都市計画道路中山寺駅前線(幅員16m、延長473m)等とその周辺の区画街路が整備された。あせて3,500uと1,300uの公園も整備された。また、JR中山寺駅のエレベーター設置(ホーム⇔改札)と、駅前広場から改札までのエレベーター設置も行われて、車イス・ベビーカー等での電車へのアクセスもスムーズになっている。

その結果、区画整理事業地域内には中規模分譲マンション(78戸)、大規模複合商業施設(HC、SM、スポーツ、家電)やスーパーマーケット、ドラックストア、イタリアンレストラン、和風割烹、回転寿司、ファーストフード店、お酒のDS、手芸用品店、クリニックセンター、また周辺地域には大規模分譲マンション(3棟)、ステーキハウス、健康ランド(スーパー銭湯)、総合病院(2施設)、保育所、老人介護施設等が立地しており(一部工事中)、生活利便性は格段に向上した。

これは、それなりのポテンシャルがある地域で都市基盤(インフラ)が一気に整備されれば、都市生活に必要な諸施設が民間の力で一通りそろい、非常に便利で住み心地の良い地域となる事例の典型と言える。

【住民参加の公園整備とその功罪

こうした基盤整備を行う中で、宝塚市は公園整備に当たりワークショップ形式での住民参加の計画づくりを提案してきた。しかし、実態としては時間不足(2カ月)とコンサルの能力不足(?)のため、形式的な住民参加で終わるところであった。コンサル対応があまりにおざなりであったために、住民意向を踏まえた逆提案をした結果、参加メンバー(子供会、愛護会、老人会、自治会)に支持され、結果的にほぼ逆提案通りの公園が最近完成した。

本件は結果オーライで幸いであったが、コンサルの配慮の少ない案でそのまま施工された場合、使い勝手の悪い、安全上の問題のある公園となっていた可能性が高い。(事実、もう1つの公園はコンサル案通りで、問題のある仕上がりとなっている。)これは、本来住民側の意向をくみ上げて計画をまとめ上げるべき立場のコンサルの能力如何で、状況が大きく変わる事例と言える。

一方、別の見方をすると、曲がりなりにもワークショップの機会があればこそ、住民参加計画となり、あせて住民同志のコミュニケーションが深まり一体感が生まれたのも事実であり、とにかく新しい動き方を始めた成果と言える。結果的に、宝塚市の考えである、住民主体の公園管理の基盤が形成されたことになった。

【マンション建設に伴う住民説明会とその功罪

そんな中、自治会内の区画整理事業地域で分譲マンション建設計画(44戸)が突如動き出した。地区住民にとっては、これまで戸建住宅と3階建マンションしか無かった所へのいきなりの5階建て分譲マンション計画であり、居住環境維持に向け誠実な説明会開催を求めた。

このマンション計画は地区計画にのっとり計画されたものであり、何ら法的に問題のあるものではなかった。しかし、地区住民にしてみれば、唐突なマンション建設計画であり、かつマンションデベロッパーが素人同然で、満足な住民説明会さえ開催できない状況であったため、その対応に苦慮することとなった。

第1回説明会では非常な関心が住民側にはあったものの、デベ側と話し合いを継続する中、住民側もパワーの持続が難しくなった。結果的には合計7回程度の説明会を経て、両者痛み分けでの決着を見ている。現在協定に基づいた工事施工を住民側で見守っている状況である。

一連の交渉で住民側は、マンション事業に対してそれほど大きな成果は得られなかったものの、その過程は、住民自身が自分達のまちをいかに考え、いかにつくり上げるかについて真剣に検討する貴重な機会となった。

【外的要因とコミュニティ熟成&まちづくり】

住民が新たに都市基盤(インフラ)の良さを手に入れたあと、それらを自分達らしいまちづくりに生かし切るには、『住民参加のまちづくり』が必須と思われる。インフラだけが整備されたまちは、日本国中にいくらでもあると思われるが、後は住民達の味付けしで、どこにも無い、いかに住み良いまちにしていけるかがポイントと思われるし、求め甲斐のあるテーマである思う。

その視点から見ると、今回の『住民参加の公園整備』『マンション建設反対運動』は、結果的に100世帯のコミュニティ成熟と自分達のまちづくりを意識する契機となったと思われる。すなわち外的要因は、コミュニティの熟成・更新と住民主体のまちづくりに、前向きに生かす絶好の因子と考えられる。


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