「地域から見た鉄道及び鉄道駅のあり方に関する調査」平成14年度報告(概要)
NPO地デ研 公共交通調査委員会
人口や産業の大都市集中に伴う都市交通問題は、バブル崩壊以後その様相が様変わりしてきた。交通現象に現れたいくつかの様相を列記すると
@高速道路における交通量が減少する傾向にあり、一般道路も場所によりその傾向を示す。
A経済不況だけでは説明のつかない交通現象であり、初めての経験である。
B大阪圏での私鉄利用者は年々減少傾向にあり、歯止めがかからない。
C高齢者や女性の外出率は増加しており、今後その傾向は顕著になると予測される。
D都心の求心力が衰え、人々の行動は分散化Eバス等の利用者も減少し、路線の統合廃止或いはバスの再編成が進むとともに、公共交通のあり方が問われている。
このような都市交通問題に対して、行政、事業者、利用者及び地域は一体となって対応すべき時期にきている。
上記の基本認識のもと、OKT興産等の支援と委託を受けNPO地域デザイン研究会として、今後の鉄道と地域のあり方についての分析と提言を行った。
<調査委員会の進め方>
コアメンバーを集め(4〜5名)調査の進め方等について企画書を作成し、それに基づいてメンバーを募集した。最終的には平峯座長以下12名のメンバーで対応することとなった。調査委員会の検討経緯は以下のとおりである。
- コアメンバー会議=現状認識今後の方向性・情報収集、実態調査の項目と方法について。今後の会議の進め方について
- 第1回=メンバー紹介・調査の方向性・「駅の活性化」とは
- 第2回=大阪モノレールの現状と計画・くるまVS鉄道
- 第3回=公共交通論について・TDMの現状
- 第4回=都市鉄道と地域−その課題と考え方−・フライブルグの交通政策、公共交通論そのU
- 第5回=関西私鉄の経営戦略と経営状況について
- 第6回ワークショップ=鉄道のサービスはこれでいいのか
- 第7回ワークショップ=鉄道シームレス化への取り組み
<報告書の概要>
上記のような検討に基づき以下のように報告書をまとめた。
1.1 公共交通の現状と課題=公共交通の利用者の減少傾向を正しく認識することが必要であり、なぜ減少しているのか、今後の動向を読む必要がある。これだけの実績のある公共交通は新たな展開が可能
1.2 交通から見た今後の都市圏構造=伸びきった都市圏は交通を手段として二極化する。今後は公共交通を中心に新しい街を創るという発想が大切である。
1.3 公共交通の現状認識=豊かな社会を創るための基本原則として、これからの交通は利用者の視点から考えるということが重要である。利用者の視点で考えるということは、人の属性と行動(「量」ではなく「質と性格」を重視)の要素を分析することである。利用者の視点で考えることが鉄道経営の原点である。
1.4公共交通を中心とした新しいまちへの戦略=有効な方策を実施できるかどうかが、公共交通と鉄道駅、その繁栄と衰退のシナリオとなる。交通は地域と連携してはじめて生き生きしたものとなる
2.1 公共交通論と交通政策=公共交通とは何か。定義を曖昧にして経営問題を論じている。
2.2 諸外国の仕組み=欧米の交通政策は公共交通主体に政策転換した。
3.1 鉄道(公共交通)のサービスの視点=鉄道サービスはどのような視点で考えればよいのか。道路及び自動車に比べサービスの視点が欠如している。
3.2 新しい試みの交通サービス項目からの評価=公共交通における取組(アイデアを含む)を評価する。
3.3 鉄道サービスの現状と課題=公共交通(鉄道・バス・タクシー)の運賃・料金は如何にあるべきか。現行運賃は高いか安いか?今後どうすればよいのか。
3.4 地域における連携とその条件=公共交通は地域とどのような関係を構築し、連携を図ることができるか。
3.5 公共交通のシームレス化=車に対抗していくためには、広義な意味でのシームレス化を推進する必要がある。
4.1 地域と鉄道に対する提言=!運賃の値下げ"
鉄道・バス・レンタサイクルの融合#駅を地域の中心に平成14年度の内容としては、以上のようなものであった。多くのメンバーで議論していく中で、公共交通特に鉄道はまだまだ捨てたものではない。まだまだ取組むべき項目はたくさんある。といった思いの強さは共通だったと思う。平成15年も具体化に向けた委託をOKT興産から受けることとなった。もっともっと多くの会員の協力を得て内容を深めたいものである。