異質なものとの交流

ピーシー橋梁(株)鎌田 徹

道路公団前総裁、藤井治芳氏の解任劇は、一般の人にどう写っているだろうか。利権を道具にして国会議員、建設業界とトライアングルを組み、道路というセクトの城を築いてきた悪者の代表? 解任だけでなく、道路公団の今までのやり方が問われている。悪い点は確かにあるだろうが、高速道路の果たしている役割は、大きなものがある。しかし問題は、道路公団が、よい点の広報や、財務等の情報公開を怠ってきた点にあると思う。また、城の中の論理、同質なものの論理だけで、受け手の側など異質なものからみた場合の評価などは斟酌されなかったのではないか。

報道もまた問題がある。日本人のほとんどの人が、テレビと新聞でこの解任劇を見た。ある掲示板に次のような記事があった。

(藤井解任は当然)〜他人を小馬鹿にしたような藤井さんの態度や表情をテレビで見ているので、擁護論に同調する気になれない。活字だけだと影響されそうだが映像は隠せない。

これが全部ではないが、多くの人にこのような印象を与えるような報道であった。だからしょうがないということではなく、道路公団に限らず、行政等組織体は、自ら多く の人に積極的に情報提供することに、より力を注ぐべきである。その場合、受け手側が関心をもつようなものでなくてはならない。そのためには、施策そのものが「顧客満足」をもたらすものであって、広報もその点に依拠するものである必要がある。

さらにいえば、双方向に情報が伝達され、「顧客」の意向が行政組織体のこれまでの内部規範に反することであっても、合理的なものであれば、施策に反映されることが必要である。

11月7日に行われた「大阪都市再生フォーラム」で、 関西と関東の違いについて伊藤滋氏は、「関西は古からの伝統・文化・経済基盤があり、日本の中心であったが、よそ者を受け入れないところがあった。 それに比べ関東は、流れ者などいろんな種類の人間 が集まったところ。それらを全部受け入れて、発展 してきた。」という趣旨の発言があった。

異質なものと交流し議論し、合理的なものであれば受け入れ、より高い価値観を見出す。このことが、社会の発展 には欠かせないことではないかと思う。 98年6月3日に大阪国際交流センターで行われた「中心市街地活性化講習会」で、井尻千男氏は「イタリアのペルージアというまちに都市学で取材に行ったとき、応対してくれたのが、哲学教授、政治学教授、経済学教授、一人都市計画協会からで対応してくれた。都市を考えるときに、哲学や、歴史学、経済学、社会学が必要である。最後に都市計画が必要。でも5分の1」と言っていた。都市を考える場合に、いろいろな分野の人が参加し、交流することが必要 と思う。80年代半ばにアメリカの足を引っ張るまでに落ち込んだシリコンバレーで、シリコンバレー・ネット ワークというNPOプラットホームのもとに、行政、経営団体、労働組合、教育関係者といった、利益や考え方の違う団体が地域再生のために結集。地域の教育力を高め、有効な人材を産官学に供給し、シリコンバレー発展のための基礎基盤を築いた事例が報告されている。(注)

地域デザイン研究会は、いろいろな分野で活躍する人材がメンバーとなっていて、この事例のような、 異分野を結びつけるNPOプラットホームになり、 真に豊かなまちづくりに向けて役割を果たすことが、大いに期待できるのではないかと思う。

(注)「アメリカのNPO〜日本社会へのメッセージ」山岸秀雄、第一書林


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