特定非営利活動とNPOとしての提言活動

地域デザイン研究会 副理事長 柳田保男

当会は、いわゆるNPO法に基づく法人認証を受けてから早くも4年が経過したことになるが、この間、NPO法における「特定非営利活動」種別は5つ増えるとともに、公益法人改革議論も大詰めを迎えようとしている。しかしながら、皮肉な見方をすれば、特定非営利活動種別の増は旧通産・労働省の縦割りへの参入であり、公益法人改革は税制が話題になっているにすぎない。そして、各政党は、この間にNPOの集人・集票マシン化をねらったとしかいえない動きを見せているほか、財政に苦しむ地方自治体は,「公益事業」の新たな「安い下請け」化を図っているとしか思えない動きも見せている。

ところで、これらがどのように結着するのかはさて置き,このような背景のもとに,当会の目的でもある「よりよいまちづくりの実現」のための「提言」なるものについて、以下、「特定非営利活動」の定義の問題から考えてみたい。すなわち、

とすると、所詮は「不特定かつ多数のものの利益」と「よりよく」の定義に対する「合意形成」が不可欠、ということになる。

「多数」とは、どちらでもよい,関心がない者を含めての過半数、と定義することは可能であるものの、例えば、ハードの代表である公共建設事業については、過半数の合意形成の確認を1つ1つ実施することは不可能に近い。また、例えば、ソフトの代表である学校の週5日制については反対が過半数と思われるものの、合意の上に立った実行可能な「よりよい」施策提言は不可能に近い。

極論すると、「合意形成」の証拠をどうやって作るかに終始することになっているのが現実ということになっている。PI、PC、VFM、CVM…といった合意形成のための各種の手法も提示されてはいるが、単純な過半数以上の可決、という一般的に認知・納得されるもの以上の方法がないのも現実である。

そして更には、NPOの6〜8割が関係しているといわれる福祉・文化・人権部門に関しては、よほどの提言でない限り反対はない、というより反対できない又は反対しにくいという側面もあり、換言すると「反対できなかった合意」なるものが形成されていることもある。

NPO法に掲げられている「まちづくりの推進」の定義は明らかにされていないが、一般・常識的には「街づくり」あるいは「町並みづくり」であり、その前にバリアフリー,生き生き、あるいは人権・文化などのタイトルが付されることによって、やや具体的に理解しているにすぎない。現在、NPOの数は15,000ともいわれており、その実態をとらえるために種々調査(これも縦割り)も行われているが、NPOの原点である「特定非営利活動」ついての調査を行うべきであるということが問題になっているということを聞いたことはない(筆者だけか)。また、「提言」という活動に関する議論については聞くこともまれである。

税財政の「三位一体改革」などで地方自治体のあり方が問われるようになったいま、行政がNPOと連携して政策を進める「協働−コラボレーション−コプロダクション」と「民間委託」が流行である。大量生産・消化のための建設コンサルタントの活用、といった昔から思い起こされる面も多々あるが、あえて、NPOとしての活動の原点を忘れてはならない、を提言としたい。


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