NPOだより
「茨木・宇野辺駅周辺地区」
複合モビリティポート社会実験を実施してNPO法人地域デザイン研究会
茨木・宇野辺駅周辺地区複合モビリティポート
社会実験担当グループ1,経過
大阪高速鉄道とNPO地域デザイン研究会は、14年度〜15年度にわたって、「鉄道の活性化と公共交通のあり方」についての研究を進めてきた。特に15年度は、宇野辺駅とJR茨木駅の接続について、宇野辺駅と周辺のまちづくりとの関係について研究を進めてきた。
上記の過程で、レンタサイクルによる接続について、併せて宇野辺駅前広場でのオープンカフェによる賑わいづくりについて、社会実験として調査することを、大阪府、大阪高速鉄道(株)と合意し、国土交通省に申請したところ、16年6月末に採択が決まった。
2,JR茨木・宇野辺駅周辺地区の問題点と課題
■ 交通の課題
- 当該地区は、都市計画的にはほぼ完了した地域である。
- 工場からの転換=マイカル等の大規模施設の立地は交通に大きな影響
- JR京都線と大阪モノレールとの接続は長年の課題
- 鉄道・道路及び徒歩・自転車を総合した交通計画が必要な地域
■ 街の活性化のための課題
- JR茨木駅前は昭和45年の万国博時点で整備され、見直し等リニューアル必要
- モノレール宇野辺駅周辺は開業以来余り変化せず、駅前広場の利用も少ない
- 駅をはじめ街全体の活性化は、ここ数年大阪高速鉄道(株)を中心に検討され その具体化が望まれている。
3,社会実験の目的
国土交通省の16年度社会実験テーマは、@くらしのみちゾーン・トランジットモール、Aオープンカフェ等地域主体の道活用、及びB路上工事縮減等に関する社会実験である。
茨木・宇野辺駅周辺地区の課題に対応するためには、@とAの目的を兼ね備えた社会実験を行うことが必要である。特に人々の交流の基本施設である道路等の空間がどのようにすれば活用でき、今後の重要な社会資本として整備されねばならないかについての「知見」を得ることを今回の社会実験の大きな目的としている。
4,実施体制
実験実施にあたって、次のような体制がとられた。
- 実施主体=茨木・宇野辺駅周辺地区複合モビリティポート社会実験実行委員会(構成;大阪府、大阪高速鉄道(株)、NPO法人地域デザイン研究会)
- 協力=茨木市、西日本旅客鉄道(株)、マイカル茨木、大阪府茨木警察署
- アドバイザー協力=大阪大学大学院工学研究科 新田保次教授・同研究室
- 協賛=西日本電信電話(株)
5,実験の概要
(1)オープンカフェおよびイベント
○ 開催日時
11月19日(金)〜11月25日(木) 9:30〜17:00
イベントは休日となる20日(土)、21日(日)、23日(祝)のみ
○ 開催内容
<オープンカフェ>
オープンカフェパラソルセット(パラソル、テーブル、椅子4脚)を7セット用意し、初日は、高架下に4セット、広場青空部分に3セット設置したが、高架下では、隣接する中央環状線の重交通による排ガス、騒音がひどいため、2日目以降は、すべてイベント広場として許可を得た青空部分に設置した。警察との協議で、道路上での金銭取引は、厳に認められないということであったので、アンケートに答えてくれた人に、駅舎内の自販機で作った飲み物を無償で提供した。
<イベント>
開催期間中、穂積小学校児童作成による「お面」展示
穂積小学校児童によるミラクルバンド演奏
バルーンパフォーマンス(電通ワンダーマン)
自転車安全バランス教室/自転車の乗り方指導・体験/自転車発電実験(自転車生活NPO「のろ〜なくらぶ」
お子様名刺コーナー(大阪高速鉄道株)
<NTT西日本によるインターネットカフェ>
9月13日にNTT西日本から、インターネットカフェの併行開催について申し入れがあり、共催することとなった。
(2)レンタサイクル、レンタルショッピングカート
JR茨木駅とモノレール宇野辺駅との接続、及び大規模商店との連携について、一つの試みとしてレンタサイクルとレンタルショッピングカートの実験を行った。
<ポート>
ポートは、宇野辺駅、マイカル茨木、及びJR茨木駅に設置、借りたポート以外のポートに返却することを原則とした。
<料金>
1回50円とした。
<用意した台数>
自転車=73台(大阪高速鉄道(株)より提供)
ショッピングカート:40台(マイカル茨木より提供)
<実施時間帯>
11月19日〜25日の9:30〜17:00
6,実験結果
(1)オープンカフェ
○利用者数及びアンケート回答数
積極的に勧誘を行った結果、オープンカフェ利用者数は528人、アンケート回答数は891人となった。
○アンケートから見たオープンカフェ
利用者特性からは、女性や中高年層による利用が多い。
宇野辺駅でのオープンカフェは環境改善を必要とするものの概ね評であった。
オープンカフェには最低限の飲み物・軽食サービスが不可欠である。
地域に親しまれる道路として設置されるカフェには、地域案内や情報サービス施設を同時に設置することが望ましい。
(2) レンタサイクル・レンタルショッピングカート
○利用者数及びアンケート回答数
レンタサイクルの利用者総数は394人、回収アンケートは373部、回収率94.7%。 レンタルショッピングカートの利用者は、合計6名。アンケート数も6部。(これは、ポートの位置が茨木・宇野辺両駅への通り道になかったためと思われる。)
○レンタサイクル利用の特徴
茨木←→宇野辺の利用が、50%と最も多い。駅間の需要が多いことを示している。
同一ポート利用と乗り捨て(別のポートに返却)では顕著な違いがある。
(→乗り捨て利用は、1時間以内が74%)
(→同一ポートの場合は、1時間以上が80%強)移動目的、利用目的が多様化している。 ・ 現状の自転車走行道路は歩道が狭く、一方通行、電柱など問題が多い。
7、今後の展開
今回の社会実験の結果を踏まえ、今後の本格的実施のための提案と評価を行っている。
○社会実験の成果の周知徹底 多くの人たちの協力を得た「社会実験」の成果を広くPRすること
○オープンカフェ
オープンカフェの設置は「民」主体で行うべきであり、取り扱いは道路占用。
道路法32条1項6号にオープンカフェを追加若しくは運用し、オープンカフェを認知。
運営・管理主体:公的性格を持つ団体、NPO等、地元協議会とする(申請主体)
行政機関に道路活用検討会を設置:道路管理者による道路使用・占用の基本計画を明らかにする
収益金の使途:道路美化や維持管理のために収益金を有効還元する
駅前広場の特例:駅前広場の有効利用を図るため行政による見直しを行い、道路区域、供用区域等の変更を含め新たな検討を加える
○レンタサイクルシステム
JR茨木駅と宇野辺駅間の乗り捨て型レンタサイクルシステムは極めて有効である
従ってその実現に向けた取り組みのため、当地区の自転車と公共交通のあり方を検討する「協議会」を設置する
商業施設におけるポート設置およびシステムの円滑な導入のための「地元協議会」の設置を提案
大阪高速鉄道を中心とし具体的な検討を行う。
ネットワーク型レンタサイクルを成功させるには行政と民間が合い協力して取り組むことが必要
8、おわりに
NPO地域デザイン研究会が、社会実験実行委員会の中で、実行部隊となって、各実験を行い、企画から実験実施、報告書作成まで無事やり通すことができた。また、オープンカフェ、レンタサイクルに関して、多くの知見を得ることができ、今後の本格実施システム作りに足がかりができた。これらの成功は、NPOメンバーも大いにがんばったところであるが、実行委員会メンバー(大阪府、大阪高速鉄道(株))の努力があってのことと感謝している。
(※)社会実験担当グループ:平峯、松田、小山、道下、鎌田 (文責:鎌田)