私と新生・NPO地デ研の未来

NPO地域デザイン研究会 副理事長 藤田健二
(中央復建コンサルタンツ)

 本年3月大阪府を離れ、5月に民間コンサルタントに入社、新しい人生のスタートを切った。これまで府の強大な“地方政府”の看板を背に多くの人に支えられた33年間、また、府の財団での3年間は、公務員として府民と大阪のためとの“錦の御旗”を掲げ、都市づくりに思う存分自らの夢を追い、その達成に汗をかけたことを幸せに思っている。また、日本や大阪が社会経済情勢の激変で大きな変貌を見せる発展期や、衰退を抱えながらの停滞期を迎えて今に至る時代の中で、大阪のまちづくりに携わり、多くの素晴らしい人と出会い、その協力を得ての業務達成は、今想い返しても血が騒ぐ。

 わが国を覆う行財政改革の「うねり」は、民間企業はもとより、国、地方自治体や関係機関の組織・制度等の抜本的な変革をも求めている。大きな政府から小さな政府へ、民で出来ることは民へ、集権から分権へ、集中から分散への流れは、もはや奔流となってきている。

 一方、昨年から今年にかけての地球規模での連続的風水害や桁外れの地震と大津波は、想像を絶する被害を世界各地にもたらした。大自然の怒りと人間の営み、命のはかなさは、阪神淡路大震災の自らの実体験と重なる鮮明な記憶として残っている。また、日本を取り巻く政治・社会環境面では、拉致問題、尖閣や竹島問題、歴史教科書・靖国問題での日中韓のごたごた、中国での反日官制デモ、さらには、国連常任理事国入り問題等々、今も先行きが見えず、日本の外交力の幼稚さと戦略無き日本の政治・行政力に愕然とさせられる。

 また、悲惨なJR福知山線列車事故は、被害者はもとより直接・間接的に多くの人々や社会・経済生活に大きな影響を与えている(かくいう私も通勤大混雑の被害者)と共に、鉄道をはじめ都市交通のあり方にも大きな警鐘を鳴らしている。さらに、腹立たしい不法監禁事件の連続や相も変らぬ建設談合。いったい誰の、何のためかが不可解な若貴やジェンキンス氏報道に至っては、報道公器の濫用とも言えよう。

 一方、不思議なのは、あれだけ国内外を震撼させた自然災害と人的被害の連日の報道が、最近全く見られない。その顛末が国民に知らされないのはなぜなのか。 頻発する事件・事故の中で、何が真に本質的な報道事案かの見識や、その解決や措置が忘れられているのではないかと恐れる。これらは多くの課題を我々に提起している。

 さて、社会時評はこの辺にして、都市づくりに話を戻すが、都市づくりや社会資本のあり方も、これまでになく大きな変化が生じている。従来の経済に立脚した社会資本哲学を揺るがすパラダイムの変化(自立、持続、共生)。阪神淡路大震災の教訓から安全、安心のまちづくり。地域文化・風土を重視したまちづくり。新しい郊外居住のライフ・スタイルや都市交通のあり方と街なか再生の模索等々。また、現行制度の疲労と機能停止や行政の“ちぢみ志向”から生じた制度間の隙間を埋める新しいまちづくりの台頭である。

 これらへの対応や先取りには、色褪せつつある現行の「東京型都市再生」をみても、国の中央集権主導では到底不可能なのは明らかである。地域が見える多様な主体が協働参画して、強力なリーダーの下、本気で自らの使命を果たすことが必要である。その意味では、府や市町村をはじめとする地域共同組織体の働きに加え、地域に根ざし柔軟で幅広い見識と堅固な意思を持つNPO等による政策提言や地縁型組織の活躍の場が広がっているといえる。

 関西の都市づくりに志ある産官学のメンバーで、平成元年に設立された任意団体地域デザイン研究会は、一部NPO法人として機能しながら15年間の歳月を経て、この5月の総会で全体がNPO法人に組織統合された。これまでともすれば仲間内の研究会、相互研鑚の場であった当会は、新たな活動の表舞台に立ったのである。各メンバーの本格的活躍が期待される。我々が目指す「社会へ向けた発信」が、“自立した個人”からなる組織体として、一定、社会認知される可能性が拡がったことは誠に喜ばしい。  私も積極的に参加し、皆さんと共に新しい関西のまちづくりを切り拓く役割を発揮できるよう、また、当会が充実した「人生の生き甲斐の場」となるよう尽力したい。新たなる人生のスタートラインに立った1人として・・・。


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